劇場版 アーヤと魔女|滝沢カレンが「劇場版 アーヤと魔女」にわくわく、スタジオジブリが開く新たな扉

魅力を表現するために、もっと言葉を知っておきたかった

──滝沢さんにとって、スタジオジブリ作品のよさはどんなところにあると思いますか?

「となりのトトロ」© 1988 Studio Ghibli

魅力はたくさんありますね! どこを切り取っても惹き付けられるしずっと観ていられます。私は「千と千尋」「魔女の宅急便」「となりのトトロ」の、緑の揺れる音と色がすっごく好きなんです。風景が出てくるシーンが一番の見どころだと感じるくらい。葉っぱが風で揺れるカサカサという音はどうやって出しているんだろう? 本当に森へ行って録音しているのかな?と思うほどのカサカサ具合なので、繰り返し観てしまいます。トトロさんがいる森や、温泉宿、湯婆婆さんの部屋、雨の日の湿気っている感じなどを細かく観ていくのが好きです。

──キャラクターの魅力についてはどう感じていますか。

ジブリさんの作品は「こういう人に会いたかった!」というキャラクターを絶対に出してくれます。トトロさんなんて、怪物的に子供が一番うれしい形だし、もふもふ具合や巨大さも、子供が大好きなものを詰め込んだ感じがしますよね。ネコバスさんはどんなに記憶を消されても自分の頭の片隅にいて絶対に忘れられない、最高の乗り物。どの作品もキャラクター1人ひとりに性格と特徴がちゃんとあるところが好きです。二重あごのたるみ方や目の笑いじわ、怪しさを放つ瞳の輝き、髪の毛のサラサラさ、下の部分までちゃんと考えられている重ね着した洋服……どれもすごすぎて、私が今まで出会った言葉では表せません! ジブリさん作品の魅力を表現するためにもっと言葉を知っておきたかったと惜しくなるくらい。だから世界中で愛されているんでしょうし、あの世界観には好き嫌いじゃなくて誰でも吸い込まれちゃうと思います。

物語や葉っぱの音が“ジブリ”だと教えてくれた

──最新作となる「劇場版 アーヤと魔女」について聞かせてください。本作は、2020年末にNHK総合で放送されたものに新たなカットが追加されて、このたび劇場公開されます。本編をご覧になっていかがでしたか?

スタジオジブリさんがまた違う扉を開いてくれた!と驚きました。何も聞かされずにこれを観たら、最初はジブリさん作品だとは気付かなかったかもしれませんが、物語や葉っぱの音が“ジブリ”だと教えてくれましたし、ジブリさんの作品だと胸を張って言えます。「劇場版 アーヤと魔女」のアーヤちゃんは皮膚に熱を持っているような温かさがあって、本物の人間よりも表情がやわらかい。アニメ業界はここまで来たか!とびっくりします。

──3DCGでいろいろな表情を作るのはなかなか難しいそうですが、アーヤは表情豊かな人物として表現されていましたね。ジブリ作品として観ると新鮮な印象があったとのことですが、“ジブリらしさ”を感じた点はありましたか?

やっぱり、私がジブリさんの作品で一番尊敬させてもらっている音ですね。草を潰すときの音や雨の音が好きです。料理をする場面のジュージューという音も励みになるし、液体がブクブクする音を聴いたときは「これだこれだ!」と感じました。映画を観ているうちに耳が目を覚まして、音で楽しませてもらえるところにジブリさんらしさを感じました。「やっぱりこれっておいしい!」とうれしくなる食べものに久しぶりに出会ったような感覚があります。

──スタジオジブリ作品の新たなヒロイン・アーヤに関してはどんな印象を抱きましたか。

「劇場版 アーヤと魔女」より、アーヤ(左)とトーマス(右)。

アーヤちゃんの姿を見て、人はこうやって強くなるんだと改めて気付かされました。この物語は主人公がほかの人だったら、きっとすごくかわいそうなお話になっちゃったと思うんです。でもあれだけ強いからかわいそうに見えないし、彼女は踏み出していったからこそ強くなれて周りもわかってくれた。猫のトーマスと息がぴったりなところも、アーヤちゃんは1人じゃないんだなと感じられて好きです。

──アーヤは行動力があってタフで、知恵を絞って自分で道を切り開いていくタイプですね。

怖がったりじめじめしたりしないところが気持ちよかったです。いい意味で気が強くて芯があって、自分で自分を助けていくところにジブリさん作品のヒロインらしさがありました。小さいのに大人みたいな考えを持っていて、大男のマンドレークさんにもビビらない。嘘をつかないまっすぐな姿がかっこよかったです。

──いじわるな魔女ベラ・ヤーガ、人の言葉を話す猫のトーマスなど、アーヤを取り巻く人々もさまざまな個性を放っています。お気に入りのキャラクターはいましたか。

アーヤちゃんがずっと暮らしていた“子どもの家”の園長先生はやわらかさと強さがあって、こういう人いそう!という感じがよかったです。マンドレークの、普段はあまり言葉を発しないけれど、怒ると感情が暴れ出しちゃう感じにも惹かれます。だんだんアーヤちゃんに心を開いていったのかかわいらしいところも出てきて、会えば会うほど好きになれるタイプです。ベラ・ヤーガさんはキャラが濃くて湯婆婆的な存在。魔法をかけられて慌てちゃうシーンの表現では、これまでのジブリさん作品とはまた違う世界を見せてもらえた気がします。止まるところを知らないというのはこのこと!と思いました。