アニメ「幽☆遊☆白書」特集 浦飯幽助役・佐々木望×阿部記之監督対談|攻め続けて生まれた相乗効果

当時から人気の「TWO SHOTS」と4人が勢揃いする「のるか そるか」

佐々木 Blu-ray BOXに収録される新作アニメは、いつ頃から制作に取りかかられていたんですか?

新作エピソード「TWO SHOTS」のキービジュアル。

阿部 僕が最初に話を聞いたのは2017年の夏くらいですね。プロデューサーから「新作を作るから絵コンテを描いてね」と言われて。ただその時点ではどういうアニメにするのか決まっていなかったんですよ。「TWO SHOTS」は当時から人気があったエピソードで、結局やらずじまいになってしまっていて積み残しのような状態だったので、早い段階でやることが決まったんですけど。それだけだと幽助や桑原が出られないですからね。

佐々木 そうですよね(笑)。

「のるか そるか」より。人質救出のため策を練る蔵馬。

阿部 最初は「TWO SHOTS」に加えてオリジナルエピソードをということも考えたんです。でも当時を懐かしむファンのためにも、アニメ化されていない原作のエピソードを持ってくるほうがいいという話になって。先ほど話題にも挙がった原作序盤のやっていない話になりかけたんですけど、やっぱりみんなが懐かしんでもらうなら4人全員が出てくるエピソードだろうと。そうすると「のるか そるか」だったので、僕からプロデューサーに「これにしたいです」と言って変更したんです。

──映像を拝見したのですが、「のるか そるか」では4人がそれぞれ必殺技を繰り出すシーンが原作から追加されていたり、ファンにとってはぐっとくる内容になっていました。

阿部 せっかくお祭り的にやるので、4人に必殺技を叫んでほしいというのはありましたしね。

「のるか そるか」より幽助。

佐々木 大サービスですよね。僕は新作アニメをやるというのを突然言われたというよりは、スタッフさんから「『幽☆遊☆白書』に動きがある」「新しいアニメを作るらしい」と徐々に聞いていたんです。楽しみだとは思っていたんですけど、新作を作るからと言って必ずしも同じ声優がやるとは限らないじゃないですか。だからぬか喜びしないように慎重に経緯を見守っていたら、昨年末にアフレコのスケジュールの問い合わせがあったので「よかった」と思いました(笑)。

阿部 キャストを変更するようなことはしないですよ(笑)。

20数年ぶりだけど久しぶりという感覚はない

佐々木 「のるか そるか」では、20数年ぶりなのに久しぶりという感覚が全然なかったんですよね。先月「幽☆遊☆白書」のTVシリーズを撮り終わって、また今月アフレコに来た感じというか。

「幽☆遊☆白書 冥界死闘篇 炎の絆」のビジュアル。

──今年の夏に行われた劇場版「幽☆遊☆白書 冥界死闘篇 炎の絆」の上映イベントでもメインキャストの皆さんが同様のお話をされていましたね(参照:「幽☆遊☆白書」上映会で佐々木望が「今の流れを作ったのは皆さん」と感謝)。

佐々木 感慨深いものはあったんですが、「久しぶりに幽助を演じられた」という懐かしさみたいな感慨ではなくて、「幽助という人間と、幽助を演じる自分という人間とがしっくりくる感覚をまた味わえた」というような、幸せな感慨でした。アニメが終わった後にもゲームなどで幽助を演じることはあったんですが、基本は1人での収録なのでみんなで一緒にアフレコをする機会が持てたことは本当にうれしかったです。

「幽☆遊☆白書」のアフレコで久々に集ったキャスト陣。

阿部 スタッフで言えば20数年ぶりとなると、当時と同じメンバーで制作するっていうのはなかなか難しいので、当時「幽☆遊☆白書」を観ていた世代も制作に参加していたんです。だからTVシリーズをあえてなぞってやりたいっていうのが、彼らの中には気持ちとしてあるみたいで。

佐々木 自分たちが観ていたものをリスペクトするというか。

「TWO SHOTS」では蔵馬と飛影の出会いの物語が描かれる。

阿部 僕からしたら散々やったことなので「ちょっと違うものを」と思ったりもしたんですが、新作を観る人も当時を懐かしむ方々だと思うので、今回はTVシリーズをなぞる形でちょっと懐かしい雰囲気で制作したんです。全体の作りとしては展開やセリフもほぼ原作のままですし。当時と比べれば制作もデジタル化されていて撮影のクオリティも違うので、「こんなふうに変わるんだ」という部分も観てもらいたいなとは思います。

「幽☆遊☆白書」の連載がそろそろ終わるかもと言われて……

佐々木 今回アフレコをしていて思ったんですが、「幽☆遊☆白書」って「このキャラを立たせるために別のキャラを存在させる」という作りじゃないんですよね。1人ひとりが個として存在していて、それぞれに目的が違う。もちろんそれぞれが手を組むことはあるんですけど、仲間になったからといって個は失わずに、1人ひとりが立っているんです。それって冨樫先生のマンガの魅力だなと思いましたし、だからこそ声優は「幽☆遊☆白書」のキャラを演じられることをすごく楽しんでいたと思います。

「TWO SHOTS」より。蔵馬と飛影はそれぞれの目的のため行動をともにすることになる。

阿部 僕も「TWO SHOTS」の絵コンテを描いているときに思いましたが、冨樫先生はキャラクターのちょっとした仕草とか、ふとしたひと言で登場人物の関係性を浮き立たせていますよね。「TWO SHOTS」では蔵馬と飛影がなぜその後ずっと仲間になるかということは描かれていないんですけど、自分の力を落として仮の状態にいる似た境遇の2人が出会ったがゆえに、その後も一緒にいることになるっていうのを原作の少ないページの中で気付かされたりしました。

佐々木 2人がそれぞれ置かれていた立場で感じ合うものがあったんでしょうね。

──「TWO SHOTS」「のるか そるか」が収録される「魔界編」では、そのサブタイトル通り幽助が魔界へと赴いたあとのエピソードが展開されます。「幽☆遊☆白書」のアニメは原作に忠実に作られている部分が多かったですが、終盤では原作にない幽助と黄泉の戦いが最後まで描かれたりと少し原作とは異なっていますよね。

阿部 当時「幽☆遊☆白書」の連載がそろそろ終わるかもという話を我々も聞いていたんです。でもアニメをどうするかはまだ決まっていなくて。変な話をすれば、「アニメを続けます」と言われたら仕事なので監督としては何かを出さなきゃいけないんです。だから「このままずっと戦っていくということもあり得るかもしれない」と思って、原作にはない蔵馬と時雨や幽助と黄泉の戦いを盛り込みました。結果的にはプロデューサーの判断で、マンガと同じように終わろうという話になったんですが。

「のるか そるか」より。次元刀で敵地に乗り込む幽助一行。

佐々木 そういう意味でも「魔界編」は当然「幽☆遊☆白書」の超佳境で、癖のあるキャラクターばかり出てきますし、今回の新作アニメと一緒に観ていただいてスリルを味わいつつ、観終わったらまた最初の「霊界探偵編」に戻って楽しんでいただくのもいいかもしれませんね。

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BOX、インナージャケットは描き下ろし仕様。

収録話数

TVシリーズ第95話~第112話

映像特典

完全新作アニメーション(「TWO SHOTS」「のるか そるか」)
ノンテロップOP「微笑みの爆弾」
ノンテロップED「太陽がまた輝くとき」

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佐々木望(ササキノゾム)
1月25日生まれ、広島県出身の声優。主な出演作に「幽☆遊☆白書」(浦飯幽助役)、「AKIRA」(鉄雄役)、「MONSTER」(ヨハン・リーベルト役)、「銀河英雄伝説」(ユリアン・ミンツ役)など。現在「からくりサーカス」にギイ・クリストフ・レッシュ役で出演している。
阿部記之(アベノリユキ)
7月19日生まれのアニメ監督。代表作に「幽☆遊☆白書」「NINKŪ -忍空-」「BLEACH」「黒執事 Book of Circus」「アルスラーン戦記」「BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS」など。