自身のSNSからスタートし、TVアニメ化まで果たした「うらみちお兄さん」の5年の歩みを振り返る、マンガ家・久世岳インタビュー (2/2)

なんとか虫嫌いを克服できないかなと思って

──コミックナタリーでは1巻発売のタイミングでも取材させていただきましたが(参照:「うらみちお兄さん」特集、久世岳インタビュー)、そのときのインタビューで夜にジョギングをしてるといいアイデアが浮かぶとおっしゃっていました。今も走っていますか?

実は、腰を痛めてからは走るのをやめていまして、ウォーキングと筋トレに切り替えました。だから今は、ウォーキングをしながらネタを考えることが多いです。やっぱり体を動かしたほうがアイデアが浮かぶ傾向にありますね。昔バスケットボール部だったこともあり、体を動かすのは好きなんですよ。

──裏道も腰を痛める回がありましたが、それも久世先生の体験談から生まれたのでしょうか?

どっちが先だったかな……(笑)。腰を痛める裏道の話を描いたから、自分にも返ってきて腰を痛めてしまったような気もします(笑)。私の父もヘルニアで腰をやっていたので、腰をやらかす一族なのかもしれません。

──久世先生の作品には、「トリマニア」で初出した小鳥さんを「うらみちお兄さん」に登場させたり、うたのお姉さんの恋人のお笑い芸人・門真アミーゴの須胡井宙太や木角が「ニラメッコ」に出たりと、知っていると楽しい作品同士のリンクがありますね。実はあまり気付かれていない裏ネタなどありますか?

わかりやすいところで言うと、「トリマニア」の中に出てきた変な犬のTシャツを池照と熊谷が着ていたり。あと、あまり気付かれていない部分だと、門真アミーゴの詩乃の彼氏じゃないほうの眼鏡をかけている相方。彼の彼女も「うらみちお兄さん」のどこかに出ています。ぜひ、探してみてください。

──小ネタといえば、個人的に聞いてみたい質問がありまして。いけてるお兄さんが人の話を聞いていないとき頭の中に“おにぎり”が浮かんでいることがありますが、なぜ“おにぎり”なのでしょうか?

それは私もわかりません、なんででしょうね(笑)。おにぎりってアイコンとしてかわいいんですよね。それで描いたのかな……。でも、おにぎりの中身はその時々によって変わっているはずです。ちなみに池照の姉(蛇賀眩衣)のおにぎりは、海苔の巻き方をグレードアップさせています。池照よりも味覚のレベルが高いんだと思います。

──ありがとうございます、聞けてうれしかったです(笑)。あともう1つ、話の中で虫、特にG(ゴキブリ)に関するネタが多い気がするのですが……?

実は私、虫がまったくダメなんですよ……。すごく小さな虫でも本当にダメで、蚊も苦手です。その中でもGは最上級でダメなんです。それなのにあんなに虫ネタを描いているのは、描いているうちになんとか虫嫌いを克服できないかなと思って。

──苦手克服のためにGを描かれていたんですか(笑)。

はい。ネタとしていじっていくうちに好きにならないかなと試みているのですが、いまだに全然ダメですね(笑)。ある意味、裏テーマです。でも裏道がGの格好をしている回があるんですけど(単行本第7巻収録・第58話)、そのネームができて編集部宛に送ったあと、トイレに入ったらGと遭遇したうえにこっちに向かって走ってきたことがありまして……。むやみにGをいじるものじゃないな、と思いました(笑)。

──(笑)。「ママンとトゥギャザー」で流れるオリジナルソングの中にも、「セミバクダン」や「たまに家の中にいる小さいクモ」といった虫に関する曲がありますね。

そうですね。小さいクモだけはなぜかちょっと好きで、歌詞の通り砂糖水を与えたりしています。噛まないのでそんなに怖くないです。

感想や応援のおかげで、がんばってくることができた

──貴重なお話をありがとうございました。では今後の目標もしくは夢などがあれば聞かせてください。

せっかくのTVアニメ化をしっかり楽しむことができなかったので、アニメの続きができたらうれしいです。まだアニメには出ていないキャラも多いので、新キャラたちが動いてしゃべる様子を見てみたいですね。あとは単行本の描き下ろしで、キャラクターたちの過去のお話を描いているのですが、読者の皆さんのためにもできるだけ単行本をたくさん出して、過去編を描き続けたいと思っています。少なくとも物語の切りのいいところまでは描き切りたいです。とりあえずの目標としては10巻。そこから15巻、20巻と目標を大きくしていけるようにがんばりたいです。

「うらみちお兄さん」7巻

「うらみちお兄さん」7巻

──最後に、これまで「うらみちお兄さん」を応援してきた読者へ向けて、メッセージをお願いします。

SNSに「うらみちお兄さん」のマンガを上げてから5年間強。ずっと追いかけてくださっている方ももちろんですし、TVアニメで知ってくださった方や、今この瞬間から読み始めていただく方も、皆さんの存在がありがたいと思いますし、感謝の気持ちを伝えたいです。送っていただいた感想や応援のおかげで、がんばってくることができたと思います。皆さんの期待を裏切らないよう、もっとがんばっていきたいです。これからも応援をお願いいたします!

プロフィール

久世岳(クゼガク)

2014年第25回スクウェア・エニックス マンガ大賞で入選を受賞しデビュー。現在comic POOL(一迅社)で「うらみちお兄さん」、マンガParkで「トリマニア」、ヤングアニマルZERO(ともに白泉社)で「ニラメッコ」を連載中。