コミックナタリー PowerPush - 「SHORT PEACE」

プロジェクト最終形態 大友克洋1万字インタビュー

パワードスーツの着想

──では、自分が執筆する場所は、少年誌では違うし、劇画風なところに身を寄せるでもなし、どうしようかと。

だいたいいつも浮いてるんです。本に馴染まないんで(笑)。

──「武器よさらば」の構想、作品成立のきっかけは覚えていらっしゃいますか。

この前カトキくん(カトキハジメ監督)と話をしてて、なんて言ったかなあ……。ロバート・アルドリッチの「攻撃(Attack)」(※註11)、あれも好きだったんですよね。ジャック・パランスとかが出てた。ああいう限定したフィールドの中で、極限状態みたいな感じ……それのSF版かもしれない。極限状態にメカっぽいのを入れて、みたいな話をやろうと考えたのかな、短編なんでね。

アニメ「武器よさらば」より、パワードスーツを着用しているキャラクターたち。

──“メカ”というお話が出ましたが、マンガと映画で描かれたプロテクトスーツ、パワードスーツ(強化防護服)の着想は、どこから得られたのでしょう。宇宙服的なフォルムを持っている点が斬新で、それが戦闘、特に地上戦で展開されるというのは驚きでした。

うーん、いつの頃だったでしょうかね……。高千穂遥さんが「スタジオぬえ」で安彦さんとアニメーションをやってて、「クラッシャージョウ」の後に新作をやろうという話があったんです。そのときに「オープニングの絵コンテみたいなの描いてみない?」だったか、もしくは「そのデザインをしてみない?」という話があって、一度描いたことがあるんですよ。

──大友さんの設定画で見たことがあるのですが、蜘蛛(クモ)のようなフォルムの機械でしょうか。

あれじゃない、あれじゃないです(笑)。蜘蛛のフォルムの宇宙生物はハインラインの「宇宙の戦士」(※註12)にあったし、そこにはパワードスーツの原形も登場してる。「ジョウ」で狂ったパワードスーツみたいな話を入れようとしてたのかな。そのときパワードスーツを描いた気がする……。そのデザインは俺のところに残ってなくて、高千穂さんのところに行くとあるかもしれない。

幻の長編作品

──「クラッシャージョウ」の映画は83年ですから、「武器よさらば」のほうが先になりますね。

あれ、そうでしたか。いずれにせよ当時、パワードスーツ、ガンダムとかね、そういうロボットの出てくるストーリーのアイディアを考えたことがあったんですよ。それは長い話だったんでマンガにしなかったんですけど。

大友克洋

──え、どういう話だったんですか。ぜひお聞かせください。

下町のね、金属加工会社のオヤジが変なものを頼まれるんだ。冶金というか、金属を加工してステンレスを作ったりしてるオヤジのもとに、新しい金属で作る装甲板の注文が来る。そうやっていろんな町工場で、少しずつバラバラに頼まれたものが、寄せ集められてどっかの戦争で使われるという話です。最初は人間の装甲、普通だと防弾チョッキなんだけど、もうちょっと全体を覆う形の装甲ですね、鎧のようなものを着けて戦争を始める。あっちの町工場とこっちの町工場で作られている不思議な金属が組み合わされ、あちこちでテストが行われ、1体、2体と形になったものは各地のゲリラ戦で使われる。そんな話を描こうと思ったことがあって、その流れで「武器よさらば」のパワードスーツのデザインになってるのかもしれない。うん、この話は久しぶりに思い出したなあ(笑)。

──本邦初公開の大友克洋幻の長編、でしょうか。いつか機会があれば描いていただきたいですね。

(※註11)1956年に公開された戦争映画。↑戻る

(※註12)1959年に発表された小説。↑戻る

大友克洋「武器よさらば」 / [コミック] 2014年3月20日発売 / 3150円 / バンダイビジュアル

B4サイズ/160P

収録内容

  • マンガ「武器よさらば」
  • マンガ「武器よさらば」ギャラリー(設定資料などを掲載)
  • 映画「武器よさらば」設定資料
  • 映画「武器よさらば」脚本・絵コンテ
  • 大友克洋×カトキハジメ対談
  • A2ポスター
  • ゴンク撮り下ろしグラビア

コミックス「武器よさらば」は仕様内容の変更により発売日が延期となっております。
変更前)2013年12月25日(水)
変更後)2014年3月20日(木)

大友克洋(おおともかつひろ)

宮城県登米市出身。1973年、漫画アクション(双葉社)にて「銃声」でデビュー。1979年に自選作品集「ショート・ピース」を刊行する。1983年、「童夢」「AKIRA」などを発表。1988年には、劇場版「AKIRA」のアニメーション監督を自ら務め、1995年に「MEMORIES」、2004年に「スチームボーイ」なども制作している。2005年、フランス政府から芸術文化勲章シュバリエを受章。2012年、東日本大震災の復興支援を兼ねた、世界最大規模となる初の原画展「大友克洋GENGA展」を開催し、米国のアイズナー賞においてはコミックの殿堂入りを果たした。監督を務めた短編「火要鎮」は第16回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞、第67回毎日映画コンクール大藤信郎賞を受賞。2013年夏に、その「火要鎮」と原作を提供した「武器よさらば」を含む4編のオムニバス「SHORT PEACE」を発表する。