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コミックナタリーでは、今年で創刊50周年を迎えたSho-Comi(小学館)の連載企画を全10回にわたり展開中。第6回には少女コミック時代に「闇のパープル・アイ」「海の闇、月の影」「天は赤い河のほとり」などの作品を発表し、現在誌面で活躍する作家陣にも大きな影響を与えた篠原千絵が登場する。

インタビューでは連載作の創作秘話のほか、創刊50周年を記念して執筆した「天は赤い河のほとり」の新作読み切り、宝塚歌劇宙組による「天河」舞台化、現在姉系プチコミック(小学館)で連載中の「夢の雫、黄金の鳥籠」についてなど、1万字を超える大ボリュームで語ってもらった。

取材・文 / 三木美波

一度就職してから、マンガ家の道へ

──Sho-Comi(小学館)が今年で創刊50周年を迎えました。そのうち篠原先生は1983年から「天は赤い河のほとり」完結の2002年までの約20年にわたり、少女コミック(現:Sho-Comi)で活躍なさっています。

自分でも本当にびっくり! あっという間でした。

──1980年代の少コミ編集部は、どんな雰囲気でしたか?

当時はおじさまの編集者ばかりで。私は「闇のパープル・アイ」なんて変なものを描いていたからよかったんですが、キュンとするラブストーリーを描いていたマンガ家の友人たちは、「おじさまに“胸キュン”を説明するのが難しい」って言ってましたね(笑)。でもみんないい人たちで、そのときの編集さんとはまだ付き合いが続いています。

篠原千絵の初連載作「闇のパープル・アイ」より、倫子。

──篠原先生は短大卒業後に一度就職をされてから、やはりマンガ家の夢が諦めきれず小学館に持ち込みをされたとか。少コミはお好きな雑誌だったんでしょうか?

学生時代に投稿していた出版社とは違うところに見てもらおうと思って、たまたま最初に持ち込みのアポが取れたのが小学館で(笑)。でも少コミの大先輩である萩尾望都先生の作品は好きでしたね。よく「萩尾作品に影響を受けましたか?」と聞かれるんですが、まったく影響はされてなくて。そもそもマンガ家としてのタイプが違うんですね。例えばロンドンを舞台にマンガを描きたい!となったときに、萩尾先生がすごく素敵な背景を描いてらっしゃったと思って作品を読み返すと、背景的にはふわっとしているのにちゃんとロンドンを再現できている。私は割ときっちり描かないと絵の説明ができないんです。あの感性は真似できない。本当にリスペクトしている先輩です。

──萩尾先生は少コミで多くの作品を発表されていますが、特に印象に残っているものは?

「トーマの心臓」は少コミで初めて読んだとき「あ!」と衝撃を受けて。でも雑誌だとすごく短いページ数なの。あの頃の少コミだから、連載だと1話が16ページあるかないかくらいなんじゃないかな。そのページ数でも深く心に刺さりました。

──萩尾先生の作品は短くても読者の感情を揺さぶってきますよね。「半神」も16ページの短編ですし。

「半神」は神です! あと「みつくにの娘」(「10月の少女たち」に収録)も16ページなのに大河ドラマですよ。

読者をハラハラドキドキさせたかった「闇のパープル・アイ」

──萩尾先生の作品をお好きなのが伝わってきました。ここからは少コミで連載された篠原先生の作品を軸にお話をお伺いしていければと思いますが、始めはやはり「闇のパープル・アイ」(以下「闇パ」)から。1984年にスタートした、先生の連載デビュー作です。ラブコメが多かった当時の少コミの中で「闇パ」は異色のサスペンスでしたが、どのようなきっかけで生まれたのでしょうか?

「闇のパープル・アイ」より、2部のヒロイン・麻衣。

ラブコメがかなり流行っていたから、デビュー前に3本くらいラブコメを描いて担当さんに見てもらったんですけど、3本目を読んだ担当さんが「ラブコメじゃなくても、何描いてもいいや」って(笑)。ラブコメ、ダメだったんでしょうね。

──1981年にコロネット(小学館)でデビューを果たしてから「闇パ」が始まるまでの3年間は、「訪問者は真夜中に…」「なにかが闇で見ている」などサスペンスやホラーの短編を精力的に描かれていますね。

「どうやらラブコメは苦手だ」となったときに、何を描いたらいいんだろう……つまり何を描いたら「お仕事として雑誌に載せてもらえるんだろう」と考えたんです。担当さんが「サスペンスかホラーは?」と言ってくれたのでやってみたら、当時の私には描きやすかった。その流れでサスペンスジャンルの連載を立ち上げることになりました。それが「闇のパープル・アイ」です。

──女子高生の倫子が、実は豹に変身できる変身人間だったことから悲劇に巻き込まれるというストーリーですね。

ハラハラドキドキする話を描こうと始めました。まだ新人で描き方もよくわかってなかったんですが、主人公自身が追い詰められていく話だったら読者に読んでもらいやすいんじゃないかと。で、主人公が変身できる人間だったらそういう展開になりやすいかなって。

──確かに普通の人間ではない、変身人間である倫子は次々とピンチに陥ります。不思議な左腕のあざが濃くなったり、瞳が紫に光ったりといった自身の異変に気付いたと思ったら、自分が豹に変身できることが発覚し、自分の意思とは関係なく不良を惨殺してしまう、倫子をモルモットにしたくてしょうがない狂気の教師に執着される、とかなりハードモードな人生に。

ねえ、大変ですよね(笑)。少しキャリアを積んだ今考えると、別の描き方もあったって思うんですけど。例えば変身することを、ポジティブに捉えるパターンとネガティブに捉えるパターンがあって、どっちでもストーリーは展開できる。でも当時は変身人間の主人公に降りかかった災いや、陥った窮地からどうやって逃れるかといったネガティブなアプローチが、読者に興味を持ってもらいやすいんじゃないかと考えたんでしょうね。

自分の瞳が紫に光ることに気づいた倫子。

──「闇パ」は連載終了後にOVA化されたり、1996年に雛形あきこさん主演で実写ドラマ化されたりと、人気作になりました。連載当時は、どんな反響がありましたか?

本当にドがつく新人だったので、周りの反応を客観的に見られなかったんですけど、ファンレターをもらい始めましたね。それにもともと6回連載のつもりでスタートしたので、編集さんにちょっとずつ「もう少し描いていい」と言われ続けて最終的に全12巻になったのはうれしかったですし、ありがたかったです。

──6回というと、ちょうど倫子の妹・舞子が殺されたあたりですね。

そうそう、ちょうどその辺り。連載6回が単行本1冊分なんです。舞子が死んで、倫子が豹の変身人間だということが判明する……というのが山場で、ここで終わる予定でした。

妹を曽根原に殺された倫子は、復讐を決意する。

──「闇パ」全体を俯瞰してみるとまだ序盤も序盤なので、1巻でどうやって終わるのか、今だと想像もつかないですね。

ねえ(笑)。どういう終わり方にするつもりだったんだろう、私。曽根原先生と相打ちになるのかな……。

──黒豹の変身人間である小田切貢も、連載が続いたから生まれたキャラクターなんでしょうか?

そうです。読者がハラハラする話にしたかったと先ほど言いましたが、連載の行く先は私が一番見えていなくて、最もハラハラドキドキしていたのはたぶん作者の私(笑)。

ニヒルで謎多き小田切貢。自分の目的のため、倫子に近づくが……。

──あはは(笑)。でも倫子が、ずっと支えてくれた恋人の慎ちゃんではなく小田切の子供を産んで、慎ちゃんは2部の主人公でもあるその倫子の娘・麻衣を自分の子として育てて……という複雑な人間関係に、当時のコミッ娘はハラハラドキドキしたのではないでしょうか。

そうかもしれません。でも今だとあんな破天荒なストーリーは描けないですね。「闇パ」を描いているときは自分でもいろいろ考えていたと思うんですけど、今振り返ってみると「読者にページをめくってもらいたい」という一念しか思い出せないんです。連載のヒキやページ構成を工夫して、ただただ本当にページをめくってもらうことしか考えてなかった気がしていて。でも、その気持ちは今もずっと持っています。

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篠原千絵
1981年、コロネットにて「紅い伝説」でデビューした後、同誌や少女コミック(ともに小学館)でサスペンスやホラー作品の短編を精力的に執筆。1984年に「闇のパープル・アイ」で長編デビューを飾る。同作は1996年に雛形あきこ主演でTVドラマ化されるなど人気を博した。その後も「陵子の心霊事件簿」「海の闇、月の影」「蒼の封印」とヒット作を生み出す。1995年に少女コミックにてスタートした「天は赤い河のほとり」は全28巻で刊行され、単行本累計発行部数1800万部を誇る。2018年には宝塚歌劇宙組により舞台化。現在は姉系プチコミック(小学館)で「夢の雫、黄金の鳥籠」を連載中。