「ぷりんせすARMY」をこっそり読んでいた小学生時代

──今年、Sho-Comiは創刊50周年を迎えました。夜神さんは昔からSho-Comiは読まれていましたか?

昔は少女マンガよりも少年マンガを読んでいたんです。少年誌を定期購読していたくらいで。

──へええ、それは意外でした。

そうだったんですけど、小学校のときに小説ブームが起こって。(講談社の)ティーンズハートから出ている小林深雪先生や小泉まりえ先生の作品を好きでよく読んでいて、小泉先生の作品に北川みゆき先生がイラストを描いていたのを見て、一目惚れしたんです。それをきっかけに初めて少女コミック(現:Sho-Comi)を買うようになって。その当時は「ぷりんせすARMY」が連載されていて、毎回「キャーッ」って言いながら読んでました(笑)。

──それまで少年マンガ一色だったけど、Sho-Comiで少女マンガの世界への扉が開いた。

そうですね。それが小学4、5年生のときの話で。当時は中学受験の勉強をしていたので、合間にこっそり読んでました。カタッて物音がしたらシュッと机の下に隠して、こっそりこっそり読む感じで(笑)。

──そのほかに思い出深いSho-Comi作品はありますか?

思い出深いとなると、デビューして、Sho-Comiの作家さんにアシスタントとして入らせてもらうようになってからの作品が多いですね。それこそ水波先生の作品もそうですし、宮坂香帆先生の「『彼』first love」も面白いなあと思いながら読んでました。でも、「なんだか遠いなあ」とも感じてましたね。やっぱり純粋な読者だったときとは視点も変わってくるので、読んでいるときは楽しい気持ちしかないんですけど、「自分もここを目指さないといけないのか」と思ったときに、その道のりは長いなあと実感して。その頃の気持ちを思い出すという意味でも、当時読んでいた作品は思い出深いですね。

──マンガ家としてデビューすると、マンガを読むときの心境も変わってしまう。

やっぱりちょっと変わりますよね。遠くから見ていたときは低そうな山だと思っていても、いざ真下に来てみたら「ああ、こんなに高かったんだ」と身を持って感じる、そんな感覚を思い出します。

──ちなみにSho-Comiの作家さん同士でも交流はあったりするんでしょうか。

最近だと、まちだ紫織さんはよくうちにもアシスタントとして来てもらっていたんですけど、最近近くに引っ越して来られたんです。

担当編集 まちだ先生は「(夜神)先生のお家の近くで自分が仕事をしてるって思うだけでモチベーションが上がる」っておっしゃってました。

──へええ! すごく信頼されてらっしゃるんですね。

担当編集 以前、「サマーフェスティバル」っていうちゃおとSho-Comiのイベントでまちだ先生が初めてサイン会を行ったときに、夜神先生自らがお花を届けにいらっしゃいましたよね。

シュッと行ってシュッと帰りました(笑)。郵送を受け入れ始めるとキリがないからお花は辞退しますという話だったんですけど、「自分で持ってきたから大丈夫だよね?」って(笑)。あまり時間がないときだったので、シュッと渡して「じゃあね!」って去っていくという。

星森ゆきもから誕生日プレゼントにもらったという招き猫。

──記念となる日に花をプレゼントして去るって、イケメンの渡し方ですね(笑)。

ふふふ(笑)。あとこの招き猫は星森ゆきも先生からのいただきものなんです。誕生日プレゼントにいただいて。実は後ろを見ると貯金箱になってるんですよ。

「あったらいいな」がSho-Comiにはある

──夜神さんはご自身の作品を通して、どんなことを読者に伝えていきたいですか?

そうですね……自分の作品を通してというか、Sho-Comiの作品すべてに言えることだと思うんですけど、すごく華やかな男子っていうのがSho-Comiの持ち味だと思っていて。体の内から輝くかの如く、キラキラと神々しいメンズに愛される本が読みたいってなったら開くのはSho-Comiだなって。それこそ北川先生や篠原千絵先生の作品もそうだと思うんですけど、50年続いてきた歴史の中で、それがずっと受け継がれてきている。

──そうですね。

そういったキラキラな世界を演出するにあたって、たぶん作家の皆さんもいろいろな技術を駆使しながらやっていると思うんです。月2回の連載というスピード感の中でものすごくキラキラに仕上げてっていう、その華やかさを演出する技術はSho-Comiの作家さんたちはトップレベルだと思っていて。そこから生まれたカッコいい男子たちをぜひ見ていただきたいと思いますし、今後も受け継がれていくべきだと。自分自身もそういうカッコいい男子を描きながら、皆さんに楽しんでもらえる作品を作り続けていかないといけないと思っています。Sho-Comiはキラキラしてなんぼだと思うんですよ。「えー! こんなこと起きるの?」みたいな展開が起きちゃったりとかね。

夜神里奈と愛犬キナコ。

──それがSho-Comiのよさですよね。現実的すぎず、かといってファンタジーでもない、その中間にあるというか。

そうそう。「こんなこと起こるの!?」みたいな展開が楽しくて。ファンタジーまでいかないけど、日常の延長線上にもしかしたらあるかもしれない。「あったらいいな」って思える物語がSho-Comiにはあると思います。

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夜神里奈
11月28日生まれの射手座で血液型はA型。千葉県出身。デビュー作はSho-Comi増刊2004年12月15日号(小学館)に掲載された「スパイシーBOY☆」。2015年から2018年までSho-Comiにて連載された「兄に愛されすぎて困ってます」は、2017年に実写映画とドラマが公開され話題を呼んだ。

2018年12月20日更新