男性キャラへのこだわり、それは乳首のトーンにも
──Sho-Comi作品にはたくさんのイケメンが出てくるところも魅力の1つだと思うんですが、夜神さんは女子をときめかせるような男性キャラをどうやって生み出していくんですか?
本を読んだりテレビを観たりして、「こんな人がいたらいいのにな」「こんなことをしてもらえたらうれしいな」って思いついた妄想を、なるだけ強調してギュッと描いている感じですかね。実際ここまでやってくれる男の人はなかなかいないよなと思うこともあります。でも、いるかもしれないじゃないですか。
──今は出会ってないだけで、実際にいるかもしれない。
そう。私が想像できるくらいだから、いるかもしれないっていう(笑)。
──夜神さんの作品を読んで思ったのは、「オオカミにくちづけ」の黒月、「兄こま」の千秋、そして新連載「ワケうば」の桜にもホクロがあって、男性キャラのホクロにこだわりがあるのかなと。実際に単行本の中でも「ホクロ萌え」があると言及されていました。
そうなんですよ! 私、ホクロのある男の人が好きで。ただいっつも描き忘れちゃうんですよね(笑)。キャラクターを作るときは「超いいっしょ!」と思って入れるんですけど、「兄こま」の千秋とか、ほぼ全ページ描き忘れていたことがあって。アシスタントさんが「ここホクロないです」っていう目印の付箋を原稿いっぱいに貼ってくれるという(笑)。口元とか喉にあるのとか、結構どこでも好きなんです。
──ほかにも男性キャラを描くうえでこだわっている部分はありますか?
体を描くのは結構気をつけてます。
──夜神さんの描く男の人の体ってセクシーですよね。線やトーンでしっかりと筋肉を表現されている印象があります。
やっぱり体はちゃんと見て描かないと、骨がバキバキって折れてるような絵になってしまうので、なるべくおかしくないようにしっかり描き込んでいます。
担当編集 編集部からも夜神先生には裸のイラストを依頼しがちです。
あとは乳首のトーンも、これは貼ってくれるアシスタントの子のこだわりで、キャラによって色が違うんですよ。
──えっ、乳首の?
そうなんですよ。「兄こま」でもお兄(はるか)と千夏で違うんです。お兄のほうがちょっと薄くて、千夏のほうがちょっと濃い色。千夏のほうが遊び人っていう設定があるんです(笑)。
──あはは!(笑) そんなこだわりが。
「兄こま」の4巻はお兄と千夏、2人の裸のシーンが出てくるので、見比べると「本当だ! 違う!」って楽しめると思います(笑)。
──要チェックですね(笑)。では男性キャラに限らず、気をつけている部分はありますか?
こだわりっていうわけではないんですが、水波風南先生のところでアシスタントとして背景を描かせていただいていたことがあって、「物には必ず厚みがある」っていう教えのもと描いてきたので、物の厚みや、背景の建物の構造とかは気になってしまうところがありますね。
──3次元に置き換えたときに、不自然じゃないものになるように。
アシスタントさんに描いてもらったものも、平面っぽくなってしまっていたり、構造がどうなっているかわからないものは結構細かくチェックしてますね。たぶんそれが気になるのは、水波先生のところで学んだものがあるからなのかなと思います。絵以外の部分で言えば、例えばセリフの中にちょっとした知識を入れてみるとか、そういうところも気をつけている部分かもしれないです。
──物語にリアリティを持たせる、みたいなことでしょうか。
そうですね、ただのセリフにならないようにするというか。例えば「ワケうば」でも、メンダコのちょっとした知識をコマの中に入れてみたり。桜が青生の性格について「メンダコだから超深海にでもいたんだな」とメンダコが深海生物であることを踏まえながら言葉にするシーンがあるんですが、そういう知識をちょびっと入れるだけで深みが増すのかなと考えています。
ヒロインに嫉妬するくらい鬼太郎と入江くんが好きでした
──夜神さん的に理想の男性キャラクター像っていうのはあるんですか?
私、昔は鬼太郎が好きだったんです。
──ああ、「兄に愛されすぎて困ってます」のファンブックにも書かれていましたよね。夜神さんの作風とは結びつかなかったので、ちょっと気になっていました。
私が観ていたのはユメコがヒロインとして出ていた時代(アニメ「ゲゲゲの鬼太郎」第3作)で、幼稚園児の頃に放送されていたんですけど、もうホントにユメコに嫉妬するくらい鬼太郎のことが好きだったんですよ(笑)。ただ、鬼太郎の頭がつるっぱげになるシーンを見て、「鬼太郎ってハゲだったんだ」って思った瞬間にちょっと恋が冷めちゃったんですけど(笑)。
──なんでそんなに鬼太郎のことが好きだったんですかね?
たぶん優しいところが好きだったんだと思います。鬼太郎が初恋だったと言ってもいいかもしれない。
──でも鬼太郎って、いわゆるイケメンキャラではないじゃないですか。
えっ!? イケメンですよ!
──あ、ごめんなさい(笑)。
ユメコが夢中になるくらいだから、きっとイケメンなんだと思います(笑)。優しくて、何かあったらいざというときは必ず助けてくれる。
──そういう意味で言うと少女マンガのヒーローに通ずるものがあるかもしれませんね。
そうなんですよ。あと、私が鬼太郎と同じくらい好きになったのが、「イタキス」(「イタズラなKiss」)の入江くん。入江くんと琴子ちゃんが結ばれた瞬間は少しだけ悲しい気持ちになったんですよね。普通だったらヒロインと恋の相手が結ばれたら、読んでいて幸せな気持ちになると思うんですけど、そのときばかりは「ついに……」と思って。もちろんSho-Comiのマンガだったり、いろんな作品の男子をそれまでにも好きになってきたんですが、本気で惚れたのは鬼太郎と入江くんの2人です。
──なんだか並んでいるのがちょっと不思議な2人でもありますが(笑)、ご自身にそういう経験があったように、自分の作品でも読者の方に同じような気持ちになってもらいたいという思いはあるのでしょうか。
「イタキス」の多田かおる先生は自分がハッピーになるマンガを描いていると聞いたことがあって、それってすごくいいなと思ったんです。自分もそういうふうに描けたらいいなとは思うんですけど、私は生みの苦しみのほうが大きくて。自分が読んでも楽しい作品を皆さんに届けられたらいいなとは思っているんですが……皆さんに楽しんでもらっているかどうかは、イマイチ自分ではわからないというか。
──でも読者さんからお手紙をいただくこともありますよね?
そうですね。「○○がめっちゃカッコいい」とか「○○に恋してます」とか、「こんな男子は身近にいない」とか(笑)。楽しいお手紙をたくさんいただきます。「心の支えになっている」なんて言葉も。自分では自分の作品がどういうふうに受け取ってもらえているのかよくわからないところがあるので、そういうお手紙をいただくことで「よかった、伝わった」と実感できます。
──どういった世代の方々からお手紙をいただくことが多いですか?
小中学生の方が多いですね。あとはお母さん世代の方々も。
──娘さんと一緒に読んでるみたいな感じなんですかね?
っていうわけでもなさそうなんですよね。子供には知られないように、こっそり読んでるのかもしれないです(笑)。
担当編集 基本的にSho-Comiの読者層は小中学生が多いんですけど、大人の方もたくさんいて。卒業せずに読んでくださる方が多いのかもしれません。
あとは「久しぶりに読んでハマっちゃいました」っていう言葉もあったり。お母さん方からの手紙って面白いんですよ。「この歳でもついつい萌えながらハマっています」みたいな。そういうお手紙をいただけるのもとてもうれしいです。
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「ぷりんせすARMY」をこっそり読んでいた小学生時代
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- 11月28日生まれの射手座で血液型はA型。千葉県出身。デビュー作はSho-Comi増刊2004年12月15日号(小学館)に掲載された「スパイシーBOY☆」。2015年から2018年までSho-Comiにて連載された「兄に愛されすぎて困ってます」は、2017年に実写映画とドラマが公開され話題を呼んだ。
2018年12月20日更新