それぞれのキャラに、武内先生が少しずつ息づいている
──ではいよいよ、最終章となる第5部です。
レイ・美奈子「──そうよ だからあたし達 男なんかお呼びじゃないのよ 悪い?」
第52話(完全版9巻収録)より
実は僕、5部の頃の記憶がまったくないんですよ。昨日の夜餃子を食べた、とかそんなことしか覚えてなくて。忙しすぎたんですかね(笑)。このレイちゃんと美奈子ちゃんのセリフもまた、女性の生き方にまつわる考え方が変わるような名セリフですよね。恋愛よりも人を守ることに命を懸けるようなことを平気で言っている。ファンの方も、思い入れが深い方が多い印象です。「何度も読み返してるけど、このページに行き着くことをいつも楽しみに読み進めている」という方もいるほどで。
──第4部で挙げたように、恋人を作ることに憧れている反面、実は胸の中ではうさぎを必ず守るという決意が滾っている、熱さを感じます。
このギャップがたまらないですよね。うさぎちゃんは先生がモデルですけど、ほかのキャラクターにも少しずつ、先生が息づいている部分はあるんだろうなと思います。先生も暗いところとキャピキャピしたところ、両方持っている方なので。
──全5部で終わるというのは当初から決まっていたんですか?
はっきり決まってはいませんでした。3部くらいで先生も描き尽くした感があるとおっしゃっていて、ちびうさの人気もすごくあったので、もしかしたらそのあと、うさぎちゃんは引退気味になってちびうさに世代交代して話が続いていく可能性もあったのかもしれない。でもたぶん最後にうさぎと衛の結婚式で終わるというゴールは最初から先生の中にあったんだと思うんです。そこに連なる、5部のクライマックス的な話はやったほうがいいんじゃないかと僕は思っていて。4部ではまずちびうさメインの話をやって、5部で結婚式をゴールに描くことになった。終盤のコルドロンの話のコンセプトとかは、このシリーズの最初の頃に先生とよく話し合った記憶がありますね。……いや、忘れてて、今思い出しました(笑)。
セーラームーン「……もしもそれでこの戦いが終わるのなら あたしを殺して あたしも 戦いを終わらせるために ここへ来たの」
第56話(完全版10巻収録)より
──「殺して」という言葉にうさぎの強い覚悟が窺えますが、セーラームーンがそう伝えるムネモシュネとレテは、マンガにしか出てこないキャラクターですね。
そうですね。すごくいいキャラクターで、僕も好きなんです。今後のアニメ作品でも登場するかもしれないので、楽しみにしていてください。
約20年ぶり2回目の「大人になったらまた読んでください」
──そうなんですか! それは楽しみです。原作は各キャラクターを細かく掘り下げた番外編にも名エピソードが多いですが、電子書籍版でもそちらはしっかり網羅されているということで。
本編ではうさぎ以外のキャラクターをなかなか掘り下げられないからと、武内先生は当時、すごく意欲的に番外編の読み切りにも取り組んでくださっていましたね。それを描くことで、それぞれのキャラクターを改めて先生自身の中に落とし込むという作業にもなっていたのだと思います。
──2020年にミュージカル化される、ルナが人間の男性に恋をするお話「かぐや姫の恋人」も、もちろん収録されます。
ルナ「世界はなんて 美しいのかしら…… ……キスしちゃった ……あたし ……あのヒトが ……好き」
「かぐや姫の恋人」(完全版6巻収録)より
猫が主役の舞台、どうやるんだって課題はあるんですけどね(笑)。実は「かぐや姫の恋人」はバンダイ版ミュージカルでもやっていなくて、初の舞台化なんです。この作品は僕の中で、先生の短編でも1、2を争う名作だと思っています。短いページ数の中でしっかりまとまっていて。劇場版「美少女戦士セーラームーンS」の原作として描き下ろし単行本で出したんですが、普通に本編の連載をやりながら、別途で140ページ近くも描いていただいたので……すごい量産力でしたね。
──ほかに小佐野さんが好きな番外編はありますか?
亜美ちゃんが好きなので、「亜美ちゃんの初恋」は劇場アニメにもしてもらえてうれしかったですね。あとは「ヒミツのハンマープライス堂」という短編に登場する権利を、「とんねるずのハンマープライス」ってテレビ番組で、ファンの方が200万円で落札してくださったこともよく記憶に残っています。もちろん落札金は義援金として海外へ寄付させていただきました。
──では最後に、電子書籍版と、今後の「美少女戦士セーラームーン」についてお伺いできればと思います。つい先日、うさぎちゃんの誕生日である6月30日に、2020年の劇場版の情報や小坂明子さんのコンサートなど、今後の情報が一挙に発表されたばかりですね(参照:第4期「セーラームーンEternal」2020年に劇場公開!ビジュアル・映像も解禁 / 「セーラームーン」初のアイスショーにメドベージェワ出演!コラボなど新情報続々)。
この日のために溜めに溜めていたので、盛りだくさんでお届けしました(笑)。これからどんどん展開が控えていますので、楽しみにしていてください。電子版は社内的にも念願という感じですが、アニメの記憶のほうが濃い方にもまた違った魅力を感じていただけると思うので、これを機にぜひ原作を読んでみていただきたいです。そして先ほども申し上げましたが、当時からファンでいてくださっている方にも、きっと新たな発見があると思います。実は当時のなかよしKCの最終巻に、「大人になったらまた読んでください」というようなことをあとがきにページをもらって書いたんですよね。20年以上経ってからも同じように伝えられることを、本当にありがたく思います。
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- 「美少女戦士セーラームーン」原作編集担当。ファンからは「おさBU」の愛称で親しまれている。
- 武内直子(タケウチナオコ)
- 1986年になかよし(講談社)でデビュー。1991年より同誌にて「美少女戦士セーラームーン」が連載開始され人気を博す。同作品で第17回講談社漫画賞少女部門を受賞。「美少女戦士セーラームーン」はアニメ、ゲーム、ドラマ、ミュージカルなどさまざまなメディアミックスを展開中。