黒幕は著作権協会に……
ヒャダイン 「ラッパー漫画」は今、まだ起承転結の起にあたるところですよね。これから先の展開って考えてるんですか?
インカ帝国 いやあ、あまり先は考えていなくって。結構行き当たりばったりに近いですね。ただ当初から、ヒップホップの4大要素については描きたいなと思ってました。ラップのほかに、ブレイクダンス、グラフィティ、DJっていうふうに大きく分けられてるらしいんですよ。
ヒャダイン ブレイクダンスのウイルス感染者は、すでに出てきましたよね。
インカ帝国 はい。ゆくゆくは「バイオハザード」シリーズみたいに、いろんなタイプのゾンビを登場させられたらと思っていて。
ヒャダイン すると、(「バイオハザード」シリーズの)アンブレラ社のような黒幕も出てくるんですか?
インカ帝国 ええ、今のところ考えていたのは、著作権協会を……。
ヒャダイン 著作権料をもらうためにウイルスを撒いてるんだ! ラップと一緒にBGMが流れるたび、「はい、徴収しまーす」って(笑)。
インカ帝国 レコードからインターネットにアップされている音源まで、実は世にある音楽はすべて著作権協会に管理されていた……みたいな展開ができたらと。
ヒャダイン そしたら著作権協会への対抗措置はPD(public domain)じゃないですか? 著作権が切れている状態のことなんですけど、お金を徴収しようとした協会は「あ、取れない……これクラシックだ!」 「著作権が放棄されている!!」ってなると思いますよ(笑)。
インカ帝国 ちょっと今、メモっていいですか?(笑)
ヒャダイン ぜひぜひ。PDです、PD。僕も普段作曲するとき、PDの作品をよく使うんですよ。
インカ帝国 そんなのがあるんですねえ。いいアイデアをもらいました。
ヒャダイン いろんな展開が考えられて楽しいですね。もっと大きな黒幕もいるかもしれない。
インカ帝国 そのときはヒャダインさんに出てきてもらって……。
ヒャダイン あ、いいですね! でも僕、ラップだと方向性が違うからなあ……アイドルウイルスだったら助かります。それで昨今の異形なアイドルシーンをイジってください。ラッパー対アイドルの対決も見てみたいです。
成功したってモテないですからね!
インカ帝国 ブログで拝見したんですが、ヒャダインさんは最近DJ活動を始められたとか。
ヒャダイン そうなんですよ。これまでDJという存在に対しては斜に構えてたんですけど、まさか自分がやることになるとは。「ヤバい、俺……イケてきた!」「人生始まった!!」と思いましたね(笑)。行きつけのバーで好き勝手させてもらってるだけですけど、場の雰囲気に合わせてレコードや自分のiPhoneから選曲してます。
インカ帝国 へえ! DJ姿、見てみたいです。
ヒャダイン でもDJをやったからってモテるわけじゃないんだと悟りましたよ。あー、もうちょっとワーキャー言われたい人生だったなあ……。
インカ帝国 えっ、ヒャダインさんはモテるんじゃないですか?
ヒャダイン 全然です。言っときますけど、マンガ家として成功したところでモテないですからね! そんな甘い話はない! モテるやつは成功していても、してなくてもモテる!!
インカ帝国 ……えええ。
ヒャダイン どんなに金がなくても、借金まみれでも、バツ2でも、足臭かろうが髪不潔だろうがモテるやつはモテるんですよ!
インカ帝国 ショックですね……希望がひとつ減りました。
ヒャダイン 来世に期待しましょ、来世に。
フリースタイルラップができたら“卒業”の時期?
──最後にヒャダインさんから、インカ先生へエールをいただけますか?
ヒャダイン インカさんと話していて、肩に力が入りすぎていたらダメなのかもなあ……って感じました。「ラップやってます!」「ヒップホップへの思いを作品で表現したいです!」って気持ちで描かれたマンガだったら、読者も身構えちゃうじゃないですか。でも適度なゆるさがあったからこそ、誰もが気軽に入ってこれる作品になったんじゃないかなと思います。ヒップホップシーンの当事者ではなく客観的な立場にいたからこそ、作品の面白さにつながる変な違和感も表現できたんでしょうね。
インカ帝国 肩に力を入れてないのが、不安になってきちゃうこともありますけどね。
ヒャダイン 大丈夫ですよ! 硬く小さくならないで、これからもどんどんイジっていっていいと思いますよ。「ラッパー漫画」の展開が“承”か“転”くらいになったら、こういう変な文化を面白がるのが好きな久保ミツロウ先生や能町みね子さんにも教えてあげようかな。
インカ帝国 わあ! うれしいです。でも先輩なので、緊張のほうが大きいですね……。
──ではインカ先生から、読者に向けてひと言いただけますでしょうか。
インカ帝国 こういうとこでフリースタイルラップとかできたらいいんですけどねえ……。
ヒャダイン できたらヤダ! そしたら「ラッパー漫画」から卒業の時期ですよ。そつなくこなしちゃったら、ラッパーを客観的にイジるっていうマンガの意味合いが変わってきますもん。
インカ帝国 でも、11月15日に……。
ヒャダイン (焚きつけるように)「Yo」?
インカ帝国 ……Yo! 「ラッパーに噛まれたらラッパーになる漫画」の1巻が出るYo! よろしくな、おめえら!
ヒャダイン だせえ……! ダサすぎる!!
インカ帝国 今のはなかったことにしてください(笑)。
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ヤバい! ラッパーに喰われる!!! 謎のウイルスでラッパー大量出現!! 日本中が地獄のクラブハウスと化した! ラッブバトルサバイバルホラー開幕ッ!!
- インカ帝国(インカテイコク)
- 理髪店勤務、フリーターを経て、2017年6月にLINEマンガで「ラッパーに噛まれたらラッパーになる漫画」を連載開始。ヒップホップより、パンクロックのほうが好き。
- ヒャダイン
- 本名、前山田健一。1980年生まれの音楽クリエイター。3歳でピアノを始め、作詞・作曲・編曲を独学で身に着ける。京都大学卒業後、2007年に本格的な音楽活動を開始。前山田健一としてヒット曲を手がける一方、ニコニコ動画などの動画投稿サイトに匿名の「ヒャダイン」名義で作品を発表し大きな話題を集めた。2010年5月には自身のブログにてヒャダイン=前山田健一であることを告白。2011年4月にメジャーデビューシングル「ヒャダインのカカカタ☆カタオモイ-C」、2012年11月に初のソロアルバム「20112012」をリリースした。作家としては、ももいろクローバーZ、でんぱ組.Inc、SMAP、郷ひろみらに楽曲を提供しながら、アニメソング・CM音楽・映画劇伴の制作も手がける。テレビ番組「musicるTV」のほか、「ヒャダインのガルポプ!」「ヒャダインのわーきゃーいわれたい」といったラジオ番組にも出演中。
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