日本中が地獄のクラブハウスに……
謎のウイルスでラッパーが大量発生!
20XX年のある日、感染した者はラッパーになってしまうという原因不明のウイルスが突如発生した。ラップバトルを仕掛け、敗者に噛み付くことで感染者を増やしていくラッパーたち。そんな中、ある1組の親子が人探しのため、ラッパーだらけになった町にやってきたことから物語は動き出す。
突如発生した謎のウイルスにより、街中がラッパーだらけになってしまった世界を描く「ラッパーに噛まれたらラッパーになる漫画」。“ラップバトルサバイバルホラー”と銘打たれ、電子コミックサービス・LINEマンガにて連載されている。
コミックナタリーでは単行本1巻の発売を記念し、作者のインカ帝国と、音楽家として幅広く活動するヒャダインの対談を実施。先輩クリエイターのヒャダインから、本作が初連載というインカ帝国へエールとアドバイスを贈ってもらった。また特集の最後には、インカ帝国による計6ページの描き下ろしマンガも。緊張の面持ちでヒャダインとの対談に向かうインカ帝国の様子が描かれている。こちらも併せてチェックしてほしい。
取材・文 / 西村萌 撮影 / 佐藤類
20XX年のある日、感染した者はラッパーになってしまうという原因不明のウイルスが突如発生した。ラップバトルを仕掛け、敗者に噛み付くことで感染者を増やしていくラッパーたち。そんな中、ある1組の親子が人探しのため、ラッパーだらけになった町にやってきたことから物語は動き出す。
行方不明になった兄を探すべく、ラッパーが蔓延る街に父親とやってきたごく普通の中学3年生。
見た目の幼さについては禁句で、「小学生」と言ってきたラッパーには思わず殴りかかったことも。
レンコン農家を営むみのりの父親。
よく聴く音楽は“カラオケで歌える曲”。愛車のトラックには、ヒップホップと無縁の歌手のカセットテープばかり積んでいる。
土壇場で根性を見せる頼もしい男。
みのりの兄。TwitterでMCバトルに出場すると告知したきり、行方不明になってしまう。
ラッパーに襲われていたみのりを助けた優しい少年。
兄と一緒にラッパーの研究をしているが、2人の間には何か確執めいたものを感じる。
ピカキンの兄。“猟”と称し、ラッパーの捕獲活動を行っている。冷酷非道な行動も、平和な街を取り戻すためなのか。
みのりの兄である育の幼馴染。“RAPウイルス”感染者で、猟場でマッドキラーに捕らえられる。育捜索の鍵を握る人物……?
“RAPウイルス”感染者。1度絶命するも、マイメンこと仲間からのリスペクトで黄泉の国から蘇った強者ラッパー。
RAPウイルスから進化した“RウイルスB(ビーボーイ)型”の感染者。ほかにも3種の新型ウイルスが存在する。
路上や公園にて数人で輪になり、フリースタイルラップをし合うこと。言葉に詰まり、流れを止めるのはご法度。ノリよく韻を踏んでラッパーになりきろう。
レコードやCDを目の前にすると、我を忘れて漁り始める習性を持つラッパー。対面した場合には、大量の音源を与えよう。夢中になっている間に逃げるのが吉。
ウイルスに感染することで、感受性は通常の倍以上に。メロウなサウンドを流し、感染者に音楽を聴き入らせればチルアウト(落ち着く)状態にさせることができる。ぼくのりりっくのぼうよみの楽曲は、護身用としてダウンロードしておきたい。
ヒャダイン 今日は「先輩クリエイターとしてアドバイスをお願いします」と言われてきたんですけど……。
インカ帝国 よろしくお願いします!
ヒャダイン いやー僕はマンガ家なわけじゃないし、アドバイスなんて無理無理、無理ですよ!(笑)
──期待しております(笑)。さっそくですが、ヒャダインさんは本作を読んでどう思われましたか?
ヒャダイン ヒップホップ文化をイジってる感じが面白いですよね。読んでる途中で、「この作者、ヒップホップはあまり聴かないんだろうなあ」って気付きました。
インカ帝国 え、バレちゃいました……?(笑)
ヒャダイン だって、韻の踏み方が甘いんですよ!(笑) 僕もラップまがいの歌詞を書くのでわかるんですけどね。例えば第1話の「うるせえオフクロ 聴いてろコブクロ 外出る時はしてけよ手袋」というライム、「オフクロ、コブクロ」まではいいんですけど、次に「手袋」がきてハマらなくなってる。「お」で揃えていた母音が、「手袋」で「え」になるのでもうアウトです。
インカ帝国 そういうルールがあるっていうのを全然知らなくて……。最近フリースタイルラップが流行っているっていうのも、マンガを描き始めてから知ったぐらいなんですよ。今、ラップについて必死に勉強しているところですね。
ヒャダイン もともとラップに馴染みがあったわけではなかったんですね。そもそも、ラッパーを題材にしようと思ったきっかけはなんだったんですか?
インカ帝国 最初は三池崇史監督の「極道大戦争」という、ヤクザに噛まれたらヤクザになるという映画を観たのが始まりで。「これ、ヤクザ以外のものでも面白くなりそうだな」と思ってマンガで描き始めて、個人の趣味としてWebで発表してたんです。
ヒャダイン へえ、そこでラッパーが浮かんだのがいいですよね。ラップって“感染力”が特に強いと思うんですよ。学生時代とか、何かに影響されて突然ラッパーかぶれになる人がいたなあって。このマンガを読んでからは、サークルになってサイファーしている光景とかも「ああ、噛まれちゃったんだなあ」という目で見ちゃいます(笑)。
インカ帝国 ははは(笑)。でもマンガを発表した当初、面白がってくれる読者もいましたけど、ヒップホップを舐めてるという声も結構届いて。
ヒャダイン いやあ、舐めてる……って言われてもしょうがないと思いますよ(笑)。でもイジってるからと言って、ディスってるわけでも、くさしているわけでもないんですよね。“茶化してる”という表現が一番いいのかもしれない。ヒップホップをやってる人が、ついつい入ってしまう型ってあるじゃないですか。大きめのTシャツを着たり、ブリンブリンのネックレスを下げたり、みたいな。そういう現象を見て少しクスッとしたり、違和感を持っていたりする人が読むと面白いんじゃないかなって感じました。もちろん、ヒップホップが好きな方も楽しめるでしょうしね。
インカ帝国 ああ、うれしいお言葉です……!
ヒャダイン さっきラップに関して指摘しちゃいましたけど、ガチガチに韻を踏む必要もないと思うんですよ。それだったら本格的にラップを題材にした作品でいいわけで。しかもラップって本来、自由を訴えるものじゃないですか。今は韻を全然踏まないラッパーの方もいらっしゃいますし、ルールに縛られなくていいと思います。
インカ帝国 ありがとうございます。ラップの歌詞を書くのが本当に苦痛だったんですけど(笑)、少し勇気が出てきました。
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ラッパー=LP盤に執着?
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ヤバい! ラッパーに喰われる!!! 謎のウイルスでラッパー大量出現!! 日本中が地獄のクラブハウスと化した! ラッブバトルサバイバルホラー開幕ッ!!
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