「ピッコマノベルズ大賞」SMARTOONの作画&スタジオ担当者が、応募者に伝えたいこと (2/2)

ヒーローの成長過程に合わせたカッコよさを表現

──逆に、作画で苦労するポイントはありますか?

maronpie アレクシスやグレイソンのようなキャラクターを魅力的に描くことには細心の注意が必要だな、といつも感じています。特にアレクシスはこの作品のヒーローなので、常にすごくカッコよく描かないといけないですから。ちゃんと読者をドキドキさせられる存在として、違和感なく成立させる描き方をしなければいけません。イザベラは女性読者が感情移入する対象ですが、アレクシスはそのイザベラのロマンスの対象なので、そこに説得力を持たせることがとても重要になります。グレイソンに関しては個人的なお気に入りキャラクターということもあって、自分の思う彼の魅力を最大限伝えられるかどうか。そのハードルを越えるのが難しいなといつも感じています。

──具体的には、どういう部分でそれを実現しているのでしょうか。

maronpie 表情ですね。特にアレクシスの表情には時間をかけて、気をつけて描いています。先ほども話に出ましたがアレクシスは幼少期から登場しますので、いろんな年代のアレクシスを描く必要があったのです。その中でちゃんと大人の顔になっていく過程も描きつつ、イザベラとの心の距離によって精神状態が変わっていく様子も表情に反映させなければいけません。そのいろいろな表情の表現がとても難しかったです。

近藤 まさに今おっしゃった、アレクシスが成長していく過程を絵にするのは非常に難しいポイントだったと思うのですが、すべての年代においてすごくカッコよく表現していただきました。本当にmaronpie先生に作画を担当いただけてよかったと思えた大きなポイントのひとつです。

maronpie そう言っていただけてうれしいです! 描いていてなかなか納得いくものにならないときもありますが、そういうときはシェルパスタジオやデジタル職人の皆さん、原作者さんからのフィードバックもいただきながら進めている感じです。

──チーム制作ならではのメリットを生かせている部分ですね。

maronpie そうですね。やはり1人だけで描いていると自分の見方や考え方だけで判断するほかないので、どうしても偏った方向に限定されやすいのですが、ほかの方から違った角度の意見をいただけることで、さらにいい結果を出せているのではないかと思っています。

いろんな人にファンになってもらえる作品

──ノベルをSMARTOON化することで、原作とはまた違った新たな魅力をどんなふうに打ち出せていると感じていますか?

近藤 ノベルを読んでいる段階では頭の中でしか動いていなかったキャラクターがビジュアル化される、というのが最大のポイントだと思います。読みやすくもなりますし、幅広くいろんな方に薦めやすくなるというのがSMARTOON化する一番のメリットじゃないですかね。

──原作の朧月あき先生からはどんな声が届いていますか?

近藤 ありがたいことに、もう毎回毎回「素晴らしいです」と。キャラデザも先生が思い描いているとおりだということで、すごく喜んでらっしゃいます。

maronpie そう言っていただけて、私もすごくうれしいです。やはり原作の先生がどのような感想を抱いてらっしゃるかは私としても気になるところですので……。実は朧月あき先生のSNSをフォローしておりまして、インタビュー記事などもチェックしているんですけども、どうやらSMARTOON化にとても満足いただけている様子だったのでホッとしています。頭の中で想像していたものが目に見える形になるというのはノベルを書かれる方にとってはある種うれしいことだと思いますから、その喜びが素直に伝わってきて私も感激しました。

──原作者さんに納得してもらえるというのは、作画担当として一番うれしいことなのでは?

maronpie そうですね。自分としてはベストを尽くしたものの、皆さんがどう思うかは心配していたところもあったんです。「気に入ってもらえなかったらどうしよう?」という思いもあったのですが、フタを開けてみたら朧月先生にも皆さんにも喜んでいただけて、読者の皆さんからの反応もよくて、すごくうれしかったです。

「年下夫の未来のために、離婚状を置いて出ていった結果」ビジュアル

「年下夫の未来のために、離婚状を置いて出ていった結果」ビジュアル

──読者からの反応というのは、どんなふうに届いているんですか?

maronpie 私は日本語が読めないので、ネット上のコメントをそんなに細かく確認できてはいないのですが、とりあえずピッコマで毎週上位にランクインしていること自体がとても良好な反応であると認識しています。SNSでの反応なども翻訳機を用いて少しずつチェックしてはいるのですが、どうやら「原作をうまく表現している」という声をいただけているようなので、とてもうれしく思っております。

近藤 読者さんからの反応でいうと、「私はアレクシスよりセルジュのほうが好きだ」みたいな声をSNSで見かけたことがありまして、私はそれがすごくうれしかったです。いろんなキャラクターを好きになってもらえるということは、それだけ個性的なキャラクターたちの魅力がしっかり表現できているということですし、幅広くいろんな人にファンになってもらえるポテンシャルを備えた作品であることの証明になっていると思います。

SMARTOON化に適したノベルとは?

──現在、「第3回ピッコマノベルズ大賞」が開催中です。最も特徴的なのは“年間最優秀賞作品のSMARTOON化確約”という副賞だと思いますが、制作スタジオであるシェルパスタジオから見てSMARTOON化しやすい原作ノベルはどういったものだと思いますか?

近藤 やはり最初にも言ったとおり、今のSMARTOONのトレンドをしっかり押さえつつ、ほかにない独自の要素もうまく含んでいることが一番大事なように思います。例えば、話の大筋としては契約結婚や政略結婚が軸で「読者が好きな内容だよね」となるのですが、どこかの設定が普通とちょっと違っていたりとか……「年下夫」でいえば“年下のヒーロー”という設定ですね。

maronpie 作画担当としても、原作者の方がSMARTOON化を念頭に置いて書いていただけたら非常にやりやすいと思います。例えばキャラクターの髪型や髪色、瞳の色などが文章で書かれていたとして、それを実際に絵にしたときにマッチしない色の組み合わせだったりする場合もあるんです。ほかにもキャラクターの職業設定であったり、成長のしかたであったりが奇抜な設定であるとか、絵で表現しづらい設定であったりするとSMARTOON化の難易度は上がります。そういったところの感覚は、既存のSMARTOON作品やイラストなどをたくさん見ることで勘所が掴めてくると思います。

「第3回ピッコマノベルズ大賞」バナー

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──maronpie先生が作画される際に、「こういう原作だと作画がしやすい」という条件のようなものは何かありますか?

maronpie 私の場合は、その原作を読んだときに「自分がちゃんと描けそうだ」という自信を持てるかどうかというところですね。自分の絵柄に合うキャラクターが出てくるかどうかがとても大事になってきます。それに加えて、アクションシーンが多いのか、ロマンスのシーンが多いのか、その割合も重要です。あとはネーム作家さんとの相性もあったりするので、原作自体は「自信を持って描けそう」と思ったものであっても、構成の方向性が自分と合わなければ面白さが半減してしまう可能性もあります。

──逆に、SMARTOON化するうえで原作者の方々にお伝えしたいことはありますか?

maronpie ノベルに書かれたすべてをそのままSMARTOONに描くというのは難しいので、ある程度削ぎ落とされることもある、という前提でいていただきたいなと思います。やはりSMARTOONとノベルではテンポが違いますし、SMARTOONのスピード感に合わせて表現するためには、急がなければいけないところも出てくるのです。

──そのために一部の描写が割愛されることを許容できる柔軟性が必要ということですね。

maronpie そう思います。あとは近藤さんのお話にもありましたが、トレンドを押さえつつも何かスパイスを加える、ということはとても大事なポイントだと私も思います。どちらかに偏るのではなく、両方の要素がしっかり備わっていることが重要です。

──トレンドを押さえるだけではダメだし、独自性だけに寄りすぎてもよくないと。

近藤 SMARTOON化を見据えるのであれば、そこがとても大事になってくると思います。

「ピッコマノベルズ大賞」では、現在第3回シーズン1が開催中で、作品は2025年2月28日まで募集されている。SMARTOON化も目指せる「ピッコマノベルズ大賞」への応募・攻略に興味のある方は、特設サイトの応募要項、運営事務局による公式noteの情報もチェックしてみてもらいたい。

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