アニメ「ワンパンマン」第3期特集|サイタマ役・古川慎に“今だからこそ聞きたい10のこと” (2/2)

10 Questions
06. 第3期の見どころ

アニメ「ワンパンマン」#27(第3期・第27話)より、ガロウ。

アニメ「ワンパンマン」#27(第3期・第27話)より、ガロウ。

第2期の放送からけっこう期間は空きましたが、ストーリーとしては第2期のラスト直後から始まるので、隔たりなく観られますよ、というところがまず1つ。それと、今回も新しい怪人たちがたくさん出てきます。みんなすごくクセも強いですし、ぜひ期待していただきたいです。あとはやっぱり、ガロウですね。彼の生き様や行く末というところを注目して追っていただけるとありがたいです。

──第2期でガロウが活躍し始めたあたりから、個人的には「この作品の主人公って誰だっけ?」ぐらいの感じになってきていまして……。

いや、ガロウです。

──(笑)。

とくに第3期では、ガロウがこの物語のもう1人の主人公として確立されますから。緑川光さんのお芝居も本当に素敵ですし、ちゃんと“少年マンガの主人公”ポジションを担っているのって、実はガロウなんですよ。

──本当にそうですよね。サイタマはちょっと違いますし。

サイタマは違いますね。彼が出てきたら話が終わっちゃうんで(笑)。

──切り札的な存在というか。

そうですね。どっちかというと象徴的な存在としての主人公なんだと思います。

10 Questions
07. 第3期のアフレコ裏話

古川慎

今回、すごくびっくりしたことがあるんですよ。今年7月に「AX」(アメリカ・ロサンゼルスで行われた北米世界最大級のアニメイベント「Anime Expo」)で「ワンパンマン」のパネルステージをやらせてもらうことが決まっていたので、アフレコ現場で「今度『AX』に行ってきます」という話をしてたんですね。そしたらジェノス役の石川界人くんが「僕も『AX』行くんですよ! 『ワンパンマン』のステージやるんですか? 僕その時間空いてるんですけど、出させてもらえませんかね?」とか言い出して。「まあ、できたらいいよね」なんて軽いテンションで話してたら、当日本当にスペシャルゲストとして界人くんが出てきたんです。「こんな口約束が実現することあるんだ?」と思って(笑)。

──めちゃくちゃいい話じゃないですか。

もちろんちゃんと界人くんの事務所に話は通ってたみたいですけど、あまりにカジュアルなノリで出てくれたもんだから、びっくりしちゃって。でもまあ、海外のお客さんの前にサイタマとジェノスのキャストとして一緒に出られたのは初めてだったし、楽しくお話をさせていただきました。

アニメ「ワンパンマン」#12(第1期・第12話)より、サイタマとジェノス。

アニメ「ワンパンマン」#12(第1期・第12話)より、サイタマとジェノス。

──それはお客さんも相当うれしかったでしょうね。

“アフレコ裏話”というテーマからはちょっと外れちゃいましたけど(笑)。アフレコの話で言うと、ネタバレになるのでお名前は伏せさせていただきますが、とある大先輩の方のテクニックがハンパなかったんで、期待していてください。

──それはとても楽しみです……!

やっぱり先輩方のお芝居をしっかり聴いてほしいんですよね。今回もけっこう芝居のテンポが速い作品になってますけど、その中でどういうふうに緩急をつけて相手にセリフを渡すか、みたいなプロの技が光ってるんで。一緒に掛け合いをしていて、すぐ隣でその超絶技巧をまざまざと見せつけられるのがもう、たまらなかったです。新人のように「すげえ!」と圧倒されていました(笑)。

──「ワンパンマン」は全般的にキャストが豪華ですよね。いち視聴者としては、「この人にそんなズッコケ役をやらせるんだ?」とワクワクするキャスティングが多い印象もあります。

確かに、「怒られないのかな?」と思うようなキャスティングもたまにありますね(笑)。そういう部分も楽しんでいただけたらうれしいです。

10 Questions
08. エンディング主題歌「そこに有る灯り」

古川慎

森口博子さんが歌う第1期のエンディングが「星より先に見つけてあげる」という、とても可憐で安らぎのある曲で。その後第2期で僕が歌った「地図が無くても戻るから」も割としっとり感が強い曲だったんですけど、今回僕が歌う「そこに有る灯り」はあまりしっとりした曲にはしたくなくて。「“しっとり”というよりは“ゆったり”の方向に振れたらいいよね」という話をして、戦うヒーローたちがちょっと羽を休める瞬間みたいな曲をイメージしていました。それで上がってきた楽曲がギターサウンド中心の穏やかなロック調で、歌詞も自分が欲しかった感じをしっかり表現してくださっていたので、気持ちよく歌わせていただきました。

「そこに有る灯り」初回限定盤ジャケット

「そこに有る灯り」初回限定盤ジャケット

──第1期からずっとそうなんですけど、オープニングがとことん振り切った勇ましい系の曲で、エンディングはほっこり系で統一されていますよね。このフォーマットは昭和アニメへのリスペクトなのかな?と個人的には感じていたんですが……。

ああ、そうなのかもしれないですね。平成以降はそういった“お約束”的なものってどんどんなくなっていきましたけど。もし制作側にその思いがあるんだとしたら、演者の立場としてもそれをちゃんと守っていきたいです。

──昭和のアニメって「機動戦士ガンダム」など、突き抜けた曲が多かったじゃないですか。その美学に通ずるものを感じるんですよね。「ワンパンマン」のオープニングがここまで勇ましい曲である必要はないし、エンディングがこんなに美しい曲である必要もないというか。

なるほど……。自分としてはそういう見方はあまりしてこなかったですけど、フォーカスの当て方にはただならぬこだわりを感じていました。オープニングでは“バトルものとしての「ワンパンマン」”に徹底的にフォーカスして、エンディングは“人間と人間が織りなす物語”という部分へのフォーカスなのかなと。まあ、いろんな捉え方があっていいと思いますし、それができる主題歌というものは改めて面白い存在だなと感じますね。

10 Questions
09. 長期シリーズならではの喜びや困難

古川慎

さっきも言った通り、10年も続けていると年齢を重ねた分だけ声も変わっていくんで、その中で同じキャラクターを違和感なく演じ続ける難しさはやっぱりありますよね。特にサイタマの場合は声帯に負荷をかけずにラクにしゃべるキャラクターなんで、より難しい。

──技術で声をコントロールするタイプのキャラクターであれば技術でなんとかなるけど、サイタマの声は自然に出さなければいけない難しさがあるわけですね。

ラクにしゃべるラインが年齢とともに変わってくるんです。まあでも、本当に……驚くべきことに10年(笑)。TVシリーズの放送間隔はまあまあ空いているんですけど、その間にも何かしらのコラボコンテンツなどで断続的に「ワンパンマン」の動きはあり続けてきたんですよね。ゲームであるとか、遊技機であるとか。自分自身がサイタマとして稼働していないところでも、作品はなんらかの形で稼働していて。

「ワンパンマン」×ゲーム「オーバーウォッチ 2」コラボビジュアル ©2025 Blizzard Entertainment, Inc. ※コラボは2025年10月30日終了予定。

「ワンパンマン」×ゲーム「オーバーウォッチ 2」コラボビジュアル ©2025 Blizzard Entertainment, Inc. ※コラボは2025年10月30日終了予定。

──なるほど、確かにそうですね。

しかも、その力が海外にまで及んでいる。それこそさっき「AX」の話もしましたけど、「第2期からこれだけ期間が空いているのに、待っててくれている人が海外にもこんなにいるんだ」とすごく感動しましたし。そんなふうに、いろんなところで作品の存在を感じることができるというのは、10年続いているからこそなんじゃないかなと思いますね。

──どんなにいい作品であっても、時間が経つとどうしても言及される機会は減っていきますからね。

そう。コンテンツって、がんばって薪をくべ続けないと風化するんですよ。そこに関しては、松井千夏プロデューサーの「決して火を絶やしてはならぬ」という熱い気持ちを感じますね(笑)。

──バカみたいな聞き方になりますが、長く続くことはうれしいですか?

うれしいけど、怖さもありますね。やっぱり年々「違う! サイタマの声はそうじゃない!」と言われる恐怖が増しているので(笑)。でもやっぱり、サイタマという役は僕の中では本当に大きな看板ですし、「サイタマ役の古川です」と名乗り続けられることは単純にうれしいです。

10 Questions
10. 古川慎にとって「ワンパンマン」とは?

古川慎

未来を切り拓いてくれるもの、ですね。

──その心は?

10年前の自分にとって、いろんな世界を見せてくれたのが「ワンパンマン」という作品だったと思うんですよ。レギュラーのキャストとして先輩との掛け合いを経験させてもらい、その先輩の熱量やテクニック、雰囲気……お芝居から発せられるいろんなものを、すぐ隣で浴びることができて。それは僕にとって「ワンパンマン」に関わらなければ知り得なかったものなんです。それに加えて、「サイタマの人」として古川慎の名前を広く知ってもらえたということももちろん大きい。

──声優としてのいろんなステップを、すべて「ワンパンマン」で踏んできたような感覚?

そういうことですね。海外における日本のアニメーションの影響力や存在感の大きさを肌で体感できたのも「ワンパンマン」を通じてですし、本当にあらゆる未来を切り拓いてきてくれた。もし「ワンパンマン」という作品に出会っていなかったら、僕の声優人生はまったく違ったものになっていたような気がしますね。

プロフィール

古川慎(フルカワマコト)

9月29日生まれ、熊本県出身。トイズファクトリー所属。主な出演作に「かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~」(白銀御行役)、「LAZARUS ラザロ」(ダグ役)、「転生したらスライムだった件」(ベニマル役)、「機動戦士ガンダム 水星の魔女」(シャディク・ゼネリ役)、「小市民シリーズ」(堂島健吾役)、「るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-」(志々雄真実役)などがある。