TVアニメ「憂国のモリアーティ」|ウィリアム・ジェームズ・モリアーティ役 斉藤壮馬×シャーロック・ホームズ役 古川慎 “天才VS天才”を演じた2人が満を持して対談 お互いを「うらやましい」と語るその理由は?

現在、佳境を迎えているTVアニメ「憂国のモリアーティ」2クール目。コミックナタリーで5回にわたって展開してきた本特集の最後を飾るのは、ウィリアム・ジェームズ・モリアーティ役の斉藤壮馬とシャーロック・ホームズ役の古川慎の対談だ。

作中で、最大のライバルである2人を演じた斉藤と古川は、「憂国のモリアーティ」という作品の魅力、そしてウィリアムとシャーロックの関係性をどう捉えているのか。最終回を目前に、ウィリアムとシャーロックについて語り合った思いを感じ取ってほしい。さらに役者としてリスペクトし合う斉藤と古川の関係性や、2クール目のキービジュアルをイメージした2人の写真もお見逃しなく。

取材・文 / 増田桃子 撮影 / 曽我美芽

終生腹の探り合いでもしていてくれたら平和なんだけど(古川)

──前回の謎解き企画での取材の際、斉藤さんは「ウィリアムの狙いにあえて乗っているシャーロック、というわかりやすくない関係性が魅力」、古川さんは「初めて話がわかる奴と出会った、立場が違ったらいい友達になっていたのでは」とおっしゃっていました。改めてウィリアムとシャーロックの関係について、おふたりの考えを聞かせてください。

古川慎 「ウィリアムの狙いにあえて乗っているシャーロック」という図は、シャーロックにとってはストレスでもあり快感でもあるだろうなと思います。これまで余裕綽々で謎や未解決事件を解いてきたシャーロックにとって、ウィリアムは一種の解けない謎という快楽でもあり、見えない何かに縛られ続けるストレスでもある。それしか手段がないからあえて乗っている部分もあるし、乗っている以上はどこかしらでカウンター食らわせてやる、ぐらいの気持ちはあるはずでしょうし。ただ現状、そのカウンターを狙う“待ち”の時間が続いているので……。演じている身としてもずっとどこか窮屈な感覚があります。

斉藤壮馬 シャーロックもウィリアムに導かれている自覚はあるでしょうけど、その状況が続くのはきついですよね。

左から古川慎、斉藤壮馬。

古川 でも時折、ウィリアムが意図してなかった方向にシャーロックが足を踏み込んでくるので、お互いに「コイツやるな、おもしれーな」となるわけですけど、僕は何回掛け合いをしてもウィリアムには勝てないなと思いますし、いつか出し抜いてやらなくちゃいけないんだろうなという気持ちで演じています。

斉藤 ウィリアムがシャーロックに対して特別な感情を抱いているのは間違いないと思います。性格的にその感情を表に出すことは少ないですけど、例えば10話に出てきた列車でのシーンのように、ウィリアムとシャーロックが対話をする場面では特に、(ウィリアムは)平静を装いながらも掛け合いを楽しんでいるなと感じますし。なんというか、理屈では説明しきれない2人にだけわかる感覚とでも言うのか、そういったものが2人のやり取りには表れていると思いますね。

古川 見えているものも同じで、心情や思想も近いものは流れている気がするんですけど、目的に辿り着くための手段や道筋が違うんでしょうね。だからこそお互いに感化されてしまう部分もあるでしょうし。ただウィリアムと決着をつけた後、シャーロックはどうなってしまうんだろうとは思います。「憂国のモリアーティ」という作品においては、シャーロックにとってウィリアムとの出来事は一番重たい事件であり、重たい存在として刻まれていくわけじゃないですか。終生腹の探り合いでもしていてくれたら平和なんだけど。上杉謙信と武田信玄みたいに。

斉藤 そうあってくれたらうれしいですけどね。でも永遠に続かない関係だからこそ惹かれるという部分もあるのかなと。本当に複雑な関係性だと思います。

──演じられていて、お互いのキャラクターに対してはどのような印象をお持ちですか?

古川 シャーロックを演じている身からすると、ウィリアムに対する印象って「うらやましい」なんですよね。僕はモリアーティたちのやっていることって「必殺仕事人」のそれだと思っていて、だから観ていても本当にカッコいいしうらやましいです。彼らが掲げている目的や思想は、手放しに喜ぶべきものではないと思いますが、イチ個人としては、確かにそれはその通りだ、そうしてくれたらスカッとする、と思うところはありますし。

斉藤 うらやましいという意味では、僕からするとシャーロックたちのエピソードって楽しそうでいいなという気持ちがあります。ウィリアムたちは感情の起伏をあまり見せない3兄弟ですが、シャーロックたちは素直に気持ちを言葉にしますし、キャラクターの個性も強くそれぞれの役割がハッキリしているじゃないですか。イチ視聴者としてアニメを観ていても、話の展開もメリハリが効いているから率直に楽しいんですよね。

──ないものねだり、みたいなところもあるかもしれませんね。

古川 あー……確かに。そういうことかもしれないですね。

「一人の学生」では常に完璧なウィリアムとは違ったウィリアムの姿が(斉藤)

──「憂国のモリアーティ」Blu-ray / DVD 第6巻には「一人の学生」のドラマCDが付属しますね。ウィリアムとシャーロックの、いわゆる日常回のようなエピソードですが、アフレコの感想を聞かせてください。

「憂国のモリアーティ」Blu-ray / DVD 第6巻ジャケット

古川 この2人の関係性を強く補足する大事なエピソードだと思うので、演じていても非常に楽しかったのを覚えています。

斉藤 アニメ本編では日常回があまりないからこそ、重要なエピソードですよね。他人に隙を見せない、常に完璧なウィリアムとは違ったウィリアムの姿が「一人の学生」には描かれていて、そこに僕はグッと来ました。もし世が世なら気の合う友人としての2人が見られたんじゃないかな、と想像させますよね。

古川 本当にいいコンビでしたよ。演じていても非常に心強かったですし、作中最強コンビなんじゃないかってぐらい。

斉藤 ドラゴンボール状態でしたよね。

古川 悟空とベジータみたいなね(笑)。本当にワクワクする「if」が感じられるエピソードだなと思います。なんならドラマCDじゃなくてOVAにしてほしかったですよ。

斉藤 映像で観てみたかったですよね。

正直、僕は古川さんがうらやましいです(斉藤)

──おふたりは共演の経験も多いかと思うのですが、お互いの印象をお伺いしてもよいでしょうか。

斉藤 古川さんとはいろんな作品でご一緒させてもらっていますが、本作のような形でガッツリ掛け合いをしたことはほとんどなかったと思います。だから毎回楽しいな、ありがたいなと思いながら収録していました。先程シャーロックたちがうらやましい、という話をしましたけど、正直、僕は古川さんがうらやましいです(笑)。

古川 えっ(笑)。

斉藤 最近の古川さんは、ケレン味のあるキャラクターが続いている印象があるんですが、まさにシャーロックもそうじゃないですか。僕自身シャーロックのようなちょっと尖っていて、万人受けするタイプじゃないかもしれないけど刺さる人には刺さる、みたいなキャラクターが大好きなので、そういうキャラクターにマッチするお芝居や声質を持っていて、実際に需要がありオーディションに受かっている古川さんがうらやましい(笑)。きっとこの先、年齢とキャリアを重ねていく中で、よりエキセントリックな役柄をものにしつつ、渋さも出てくるんだろうなと。これからのお芝居がどうなっていくのか、同業者としても気になるっていうのが率直な気持ちです。

古川 あ、ありがとうございます(笑)。

斉藤 これ同じ空間にいるときに言うの、なかなか難しいですね(笑)。

古川 本当に……(笑)。斉藤くんは、端的に言うと僕が持ってないものを持ちつつ、それを最大級に輝かせている人という印象です。身も蓋もないことを言うと、僕は色物なので(笑)、変化球が主な球で、ストレートを投げようものならだいたいボールになっちゃう。斉藤くんが僕のマウンドに来てもちゃんと球を投げられると思うけど、僕が斉藤くんのマウンドに上がったらストライク入らないですよ。

斉藤 いやいや……(笑)。

古川 何より、斉藤壮馬という声優は透明感があり輝きがあり、かつ根底の部分には薄暗いものがある役者だと僕は思っているんです。あ、斉藤くんの人間性が薄暗いってことじゃないよ?

斉藤 はい、大丈夫です(笑)。

古川 キャラクターのバックボーンにある薄暗さであったり、ダークな部分をちゃんと理解したうえで役に入ってきてくれる印象がものすごく強いんですよ。それって役者としてすごく大事なことだと僕は思っていて。苦労なしに成長してきた人間は大した年輪にならなくて、思想信条みたいなものがないと希薄な人間ができあがってしまうと思う。何かしらの苦労であるとか努力であるとか、そういったものが人間を大きくしていくし、それはアニメのキャラクターであっても同じだと思うんです。それを斉藤くんは1つひとつの役に絶対に入れてくるんです、表現として。

斉藤 ああ、すごくうれしいです。

古川 どんなキャラクターを演じていても、どこかに「この人ちゃんと努力しているんだろうな」っていう、人間性が垣間見えるような表現をしてくれる。僕は斉藤くんのそういう部分をとても信頼しているし、だから一緒に芝居をしていても気持ちがいいんです。

斉藤 ありがとうございます。僕は古川さんのお芝居はずっと聴いていたくなる印象がありますね。ドラマCDでご一緒させてもらうことも多いんですが、モノローグとか、自分の思考に沈んでいるときの語りみたいなのは聴いてて心地いい。古川さんの歌声もめっちゃ好きですし。

古川 僕からしたら、斉藤くんは曲が書けるのもすごいなと思いますよ。しかも自分でプロデュースしてるんだよね?

斉藤 はい。

古川 そういったところも含めて、うらやましい役者さんだなと思います。

斉藤 こんな話「憂国のモリアーティ」の取材でしていいのかわからないですけど、めちゃくちゃアホなギャグやりたいですね、古川さんと。

古川 あーいいね!

斉藤 過去にギャグ作品でもご一緒したことはあるんですけど、だいたい古川さんがたくさんしゃべる大変なキャラで、僕は無口キャラみたいなことが多くて。だから完全に小学生レベルの喧嘩をするみたいなやつ、めちゃくちゃやりたいです。

古川 それやりたいなあ、絶対面白いと思う。

斉藤 この記事を読んでくださった何かしらの権力者の方、よろしくお願いします(笑)。