コミックナタリー Power Push - マーガレットコミックス特集 あの頃も、これからも!一生少女マンガ宣言 第4回 中原アヤ「ダメな私に恋してください」「ラブ★コン」
テンポのよさが命!キャラが生きる会話劇
自然と大人主人公のお話ができた
──中原先生はデビューされてからずっと別冊マーガレットで活躍されてましたが、読者年齢層が少し上のYOU(集英社)で連載されることになった経緯を伺えますか。
別冊マーガレットで20年近く描かせてもらったんですが、当然私も同じだけ歳を取りました。で、別マで「されど愛しい日々」という読み切りシリーズを描かせてもらった時、自然と大人主人公のお話ができたんです。大人というか、おじさんですが(笑)。
──47歳の真面目なおじさんを主人公にした読み切りは、「されど愛しい日々」の第1話目でした。
意識して大人を描きたいと思ったわけじゃなく、その時描きたいと思ったテーマが今まで描いてきた高校生主人公じゃ表現できなかったんです。それで当時YOUの編集長さんだった方に声を掛けていただいて。私のデビュー当時の担当編集さんだったので懐かしくてうれしくて迷うことなく今すぐYOUで描かせてくださいとお願いしました。YOUは別マと違って掲載されている作品が大人向け、読者さんも私と近い年齢の方々が中心で、今の自分にすごく合っていると思いました。楽しく描かせていただいています。
──YOUの連載では、別マ連載と意識して変えていることはありますか?
YOUでは特に何も意識せず、すごく自然体で描かせてもらっています。逆に今別マで描くほうがたくさん意識することが増えるんじゃないかなと思います。絵柄古すぎとか流行に乗り遅れてないかとか意識しすぎて、とんでもない若作りでおかしなことになりそう(笑)。
──「ダメ恋」をYOUで連載してきて、別マと違うと感じる点はありましたか?
もう連載も2年になりますが、描くことに必死で雑誌の違いを堪能している余裕はまだないですね……。読者さんからいただくお手紙も、割とコミックス経由だったりするので、学生の方もたくさんいらっしゃって。あまり変わらないです。
大人は「とりあえず飲みに行こう」なので、夜のシーンが多い
──主人公の年齢も別マ作品と比べるとグッと上がりましたが、アラサー女子を描く上で難しいところ、描きやすいところを教えてください。
アラサー女子は高校生と比べて生きてきた時間も長いですから、失敗や成功の数もずっと多いんですよね。それによって考え方や行動も変わってくると思うので、まずどういう人生を歩んで今の性格になったのかを考えなきゃいけないのが大変です。常にフィーリング重視の即興劇で描いてきた私には一苦労でした。マンガ家になって初めてキャラクター年表とか作りました。
──へえ! どんなことを年表に書かれていたんでしょうか。
いつ誰に会ってどんな恋愛をしてその時何歳かとか、結構細かく書きましたね。もう失くしましたけど(笑)。でも気持ちの面では高校生よりアラサー女子の方が歳も自分と近いので、年齢による焦りとか不安とか手に取るようにわかって描きやすいですね。
──1巻のあとがきに「居酒屋でお酒を飲む人たちを書いた時の解放感はハンパなかったです」と書かれていました。ほかにも描いていて新鮮だったシーンはありましたか?
「ダメ恋」って、夜が多いんです。ほとんど夜のシーン。なのでグラデーショントーンの減りがハンパないです。高校生には放課後があって、夏休み冬休みとかの長期休暇があって、まだ明るい時間にたくさん自由時間があるんだけど、働く大人の自由時間はほとんど夜なんだって、大人を中心に描いて初めて気付きました。友達に相談、とか、ちょっと話が、とかも高校生だと学校で話せば済むのに、大人は「とりあえず飲みに行こう」ってなっちゃうからやっぱり夜。大事な話はだいたい夜。新鮮です。
無駄な会話ほどキャラを掘り下げる上で重要
──「ダメ恋」ももちろんなんですが、中原先生の作品は会話のテンポが早く軽快で、読んでいてとても楽しい気持ちになります。キャラ同士の会話はどう作っていくのでしょうか。
関西に生まれて漫才や新喜劇に寄り添って育ったので、あの早さとテンポのよさを常に追い求めているところはあります。なので、会話をさせると無意識にボケとツッコミの応酬になりますね。ツッコミの間は悪くないか、ここでもうひとつボケられるんじゃないか、とミニコントを織り交ぜる方向で会話をさせているんだと思います。
──会話を描く上で気を付けていることがあれば教えてください。
お話のために作られた会話ではなく、キャラが生きる会話を描くよう心がけています。マンガを描く時、あらかじめあらすじを立ててラストまで決めてしまうと、そこへ向かうための事務的なセリフしか出てこなくなるんです。だからお話の展開はさておき、まずは自由にキャラをしゃべらせてみます。気が乗れば無駄にボケるし、言わなくていいダジャレを言ってしまったりする。大筋に関係なくても面白ければそのまま生かしますね。無駄な会話ほどキャラを掘り下げる上で重要だと思うんです。
──ええ。
普段誰かと会話をする時も、無駄な話の方が多かったりするじゃないですか。そこを端折らず生かすことで、紙の上の2次元キャラも生身の人間に近付けられるんじゃないかと思っています。会話重視でいつも予想外の展開に辿り着いてしまい大変ですが、そんなライブ感もまたリアルでいいかな、と。
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- 中原アヤ「ダメな私に恋してください」 / 集英社 / 各453円
- 「ダメな私に恋してください」1巻
- 「ダメな私に恋してください」1巻
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- 「ダメな私に恋してください」1巻
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- 「ダメな私に恋してください」1巻
- 「ダメな私に恋してください」5巻
- 「ダメな私に恋してください」1巻
- 「ダメな私に恋してください」6巻
- 「ダメな私に恋してください」7巻 / 8月25日発売
- 「ダメな私に恋してください」1~5巻 / ブックパスで読む
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中原アヤ(ナカハラアヤ)
大阪府出身。しし座、A型。別冊マーガレット1995年6月号(集英社)に掲載された「春と空気と日曜日」でデビュー。2001年に同誌で連載を開始した「ラブ★コン」は、実写映画化、アニメ化され大ヒット作となった。ほか著作に「ナナコロビン」「ベリー ダイナマイト」「純情ドロップ」「されど愛しい日々」などがある。2013年からは月刊YOU(集英社)に発表の場を移し、「ダメな私に恋してください」を連載中。
2016年1月22日更新