渡辺祥智先生の「銀の勇者」は何度も読み返しました
──先ほどジブリ作品の自然な雰囲気に憧れるとおっしゃっていましたが、ご自身の作品もそうありたいと思いますか?
そうだといいなと思います。どの時代のどの年齢の人が読んでも、自然に読めると感じてもらえるのが一番うれしいです。
──それはやっぱりリアルタイムの現実とは少し切り離されたファンタジー的な作品の強みですよね。
確かにそうですね。
──そういった点でも、ファンタジー作品が多いLaLaだからこそ描けた作品であるとも思いますか?
そうですね。そもそも初めて異世界を舞台とした物語に触れたのがLaLa作品をはじめとした、白泉社のマンガだったんです。だからファンタジーを描くならLaLa!という気持ちはありました。
──以前から白泉社の作品にはなじみがあったのですか?
母と姉がたくさん持っていたんですよね。自然とその中から選んで読んでいました。
──エリート教育を施されたわけですね(笑)。印象に残ってるLaLa作品はありますか?
渡辺祥智先生の「銀の勇者」ですね。異世界のファンタジーものなのですが、魔法の概念とか衣装とか、とても魅力的でした。一番読んでいたのはそれでしたね。あとは投稿し始めたころに草川為先生の「ガートルードのレシピ」が連載されていて、やはり大好きでした。
温度が伝わってくる絵が好き
──絵に関してはどのようなことを心がけていますか? 1巻と最新の23巻とで比べると、大きく変わりつつあるように感じます。
1巻は素朴な絵柄で描いていて、あれはあれで全然OKだとは思うんです。だけど描いていくうちに、力が足りないばかりに諦めたシーンや、描ききれなかった表情が出てきてしまったんですよね。それがやっぱり悔しくて、自分の頭で描いたものをできる限りそのまま描けるよう練習しています。
──現状の絵には手応えを感じていらっしゃいますか?
画力に関してはまだ全然ですね。絵に終わりはないとよく聞きますが、自分との戦いがずっと続いている感じです。世の中にはすごい表現がたくさんあるので、それを見ては絶望しつつ(笑)、希望ももらっています。
──マンガ家さんだとどなたの絵がお好きですか?
空気感とか生活感がある絵が好きなんですが、それでいうとあずまきよひこ先生ですね。線自体が温かい感じがして、すごく惹かれます。
──あずま先生も食べものの描写が面白いですよね!
「よつばと!」でおみそ汁が登場するシーンがあるんですけど、浮いているねぎが器の内側にくっついているんですよ(笑)。「あ、なるなる!」って。それがすごくうれしくて。そういうことでも楽しめる絵って最高だなと思います。細かいところを見たくなる絵が好きですね。
──写実性を追究するというよりは、雰囲気が伝わってくる絵がお好きなんですね。
リアルな照りとかよりも、温度が伝わってくる絵が好きですね。
──今の絵で気を付けていることは?
強く意識しているわけではないのですが、線の強弱のつけ方とか、線を描かないことによってできる雰囲気とかでしょうか。描く・描かない、太い・細いといった違いを最初の頃はあまり意識していませんでした。心の変化かもしれませんね。
読者からの言葉に何度も救われているんです
──ちなみに新作の構想はありますか?
いや、ないですね。中高校生がだらだら過ごすマンガか、大河ドラマのようなファンタジーを描きたいなあ……というのは少しだけあるんですけど、今は「赤髪の白雪姫」以外のことは一切考えていないです。
──「赤髪の白雪姫」に全力投球というわけですね。そういえば、インタビューをお受けいただくのは珍しいのでは?
全然ないです! 初めてです。
──ではせっかくなので、この機会にファンの方へ伝えたいことはありますか?
「赤髪の白雪姫」を読んで元気を出してくれたり、力を得たりしたことを伝えていただけるのは、皆さんが思っている以上に、めちゃめちゃほんとにこの作品を根本から支えているってことを、ぜひ知っていただきたいです。私は嘘じゃないその言葉に何度も救われているんです。
──読者の皆さんは「赤髪の白雪姫」に救われていると思うんですけど、逆にその読者の存在が先生を救っているところもあるんですね。
はい。「毎日出勤する前に読んでいます」とか「受験の支えでした」なんて書いてくださっているのを読むと、物語を届けるべき人たちがここにいる、自分のキャラクターが世の中に旅立っているんだと実感できて、とてもうれしいんです。
2021年9月24日更新