LaLa45周年特集第1回「赤髪の白雪姫」あきづき空太|「物語を届けるべき人たちがここにいる、自分のキャラクターが世の中に旅立っている」

1976年に創刊されたLaLa(白泉社)の45周年を記念し、コミックナタリーでは作家のインタビューや連載作の紹介などの特集を展開。第1回となる今回は、2006年にLaLa DX(白泉社)で読み切りが発表され、2007年に同誌で連載がスタートした「赤髪の白雪姫」のあきづき空太に登場してもらった。

「赤髪の白雪姫」は主人公・白雪のまっすぐな生き様と、恋人であるクラリネス王国の第2王子・ゼンをはじめとした魅力的なキャラクターたちが読者の強い支持を獲得し、2011年にはLaLaに移籍。2度のTVアニメ化も果たした。白泉社のお家芸とも言える、良質なファンタジーの系譜を受け継ぐ「赤髪の白雪姫」はどのような思いで作られているのか。これが初めてのインタビューだというあきづきに、読む者を惹きつけて止まないキャラクターたちやその関係性の描写に関する話など、創作の秘密を聞いた。

取材・文 / 小田真琴

イザナを登場させたところが分岐点

──読み切りとして描き始めて、連載化が決まり、あれよあれよという間に24巻。ご自身で思っていた以上に長い連載となったのでは?

LaLa2018年10月号で、連載100回に到達。

そうですね、率直に言うと長いなあ〜〜と(笑)。連載9年目でアニメ化されて、そのときに初めて「ああ、そうか、もうすぐ10年経つのか」と意識してから今に至るまで、もうずっと「長いなあ」と思いながら描いてます。「100話」という数字をこの作品で見るとは思いませんでした。

──当初はどの程度の心づもりでお描きになっていたのですか?

当時の担当さんが5巻くらいとおっしゃっていたのですが、私は「5巻か、長いなあ〜〜」と(笑)。ゼンの兄である第1王子のイザナを登場させたところが分岐点になったと思います。一話完結で進めていくのか、ストーリーを物語っていくのか、といった選択肢の中で、後者に行ったわけですね。そのときには「5巻は越えたいな」と思いました。

──序盤は白雪とゼン、そしてゼン直属の騎士であるミツヒデや木々たちとの話が中心でしたものね。最近の展開を拝見すると、縦軸では主人公2人の物語というのがありながら、宮廷薬剤師となった白雪が謎の病の原因を探ったり、ゼンが陰謀に巻き込まれたりと、ミステリー的な要素なども入ってきて、読み物として幅が広がっています。

1つのエピソードがちょっと長くなり過ぎる傾向にはあるので、あまり複雑にならないよう気を付けたいのですが、ところがどっこいという感じです。ネームに関していうと、これ前にも描いた気がするな……ということがちょくちょくあります(笑)。不変なものがありながらも新鮮味を出していくことの難しさを痛感していますね。

──新鮮味を出すためにどのような工夫をしていますか?

私の場合、会話でストーリーが進んでいくお話が多いので、組ませたことないキャラクター同士のやり取りを描いていこうと心がけています。

──関係性を掘り下げるということですね。

そこに尽きますね。

「赤髪の白雪姫」のカラーカット。

──関係性の中で登場人物のさまざまな面が自然に描かれていて、キャラクターや世界観に奥行きを与えているように感じます。

現実社会でも誰かといると自分の性格が変わることもありますよね。新鮮味を出すために人物を不自然に変えようとは思ったことがなくて、例えば主要人物の過去の事情を掘り下げることより、今誰かといることで見えてくる新たな面みたいなものを描きたいと思っています。

──キャラクターを描きたいのと同時に、キャラクター同士の関係性だったりグループ感だったりというのを描きたいんですね。

それを取り上げられたら何も描けないくらいです(笑)。

できる限り前を向く人たちを描きたい

──15年も連載を続けていると、キャラクターたちが勝手に動いてしまうようなことはありますか?

あんまりないですね。こんなとき、この人はどうするのだろうか、どう感じるだろうかと、ずっと考えています。キャラクターにはまだ見たことのない面が常にあって、エピソードごとに深堀りしていきながら、キャラクターたちがまだ見せていない姿をどこまでも描きたいなと思っています。

──そうした意識のおかげでしょうか、作品全体からも先生の「キャラクターを丁寧に描こう」という強い意志と深い愛情が溢れ出していますよね。

そもそもこの世の中にあるさまざまな作品の「キャラクター」という存在がとても好きなんです。キャラクターだけが持つ力のようなものがありますよね。自分が描いているものもそうであるといいなと思いながら向き合っています。

──アニメ化されたときはさぞかしうれしかったのでは? ご自身が生み出したキャラクターたちが、ボンズさんたちの手によって、また新たな命が吹き込まれましたよね。

うれしかったというよりも、もはやパニックに近かったですね(笑)。もともと安藤真裕監督の作品がとても好きだったので、当時の担当さんから「安藤監督に今『赤髪の白雪姫』を読んでいただいています」と聞いたときに、本当に腰が抜けるくらい驚きました。

──自分が作ったキャラクターたちが動いているのを見たときはどう思いましたか?

感動しました。風が吹いていたり、机に物を置く音がしたり、そういう存在感がアニメは圧倒的なんですよね。すごいなあと、とてもうれしかったです。

──そしてアニメといえばやはり声優さんたちの声! 「赤髪の白雪姫」は白雪役の早見沙織さん、ゼン役の逢坂良太さんをはじめ、皆さん素晴らしい演技でしたよね。

すごかったですね。声を聞いたおかげで、あ、このキャラクターはこういう人だったのか!と気付かされたのが、ちょっと面白かったです。ますますキャラクターたちが愛おしくなりました。

──「赤髪の白雪姫」の登場人物は、みんな人柄の良さがにじみ出ているように感じるのですが、キャラを悪人にはしないよう意識はしているのでしょうか?

そうですね。悪人を描くのが私はちょっと苦手っていうのもあるんですけど、「赤髪の白雪姫」ではできる限り前を向く人たちを描きたいと思っています。描き重ねながらそうなっていることに気付いたというのが本当なのですが。

──その中にあって、守られるだけでなく、自ら考え、行動する主人公の白雪は、非常に現代的なプリンセス像であるように感じます。描くうえでどのような点を心がけていますか?

白雪とゼン。

15年前にどう思って描き始めたかはあまり覚えていないんですけど、いわゆる恋愛ターンでなくても、主人公単体でちゃんと物語を動かしていけたらいいなとは考えています。実際に白雪はいろんな人と過ごしていく中で育っていった主人公であるので。その点ではゼンにも同じことが言えると思います。本当はもうちょっと2人を一緒にいさせてあげたいんですけど(笑)。

──確かに恋愛抜きでもお話が転がっていくのはこの作品の特徴ですね。少女マンガなので恋愛的な要素を求められることはあると思うんですけど、それでもこれだけの人気を獲得しているのは、やはり恋愛以外の部分も強く支持されているからだと思います。

読者さんからのお手紙などで「読むと元気が出ます」と言ってもらえることが多いので、こういうふうに描けている間は大丈夫と安心感をいただいています。でもときめきのあるシーンも期待はされているでしょうし、白雪とゼンもそろそろ人恋しかろうとも思いますので(笑)、もうちょっとそういうシーンがあってもいいかな。

──白雪とゼンはしばらく前から遠距離展開が続いていますものね。この設定にするのはけっこう勇気が必要だったのでは?

2人が一緒に過ごしている様子をもうちょっと描きたいなという気持ちもあったんですけど、やっぱり白雪はまだ外へ飛び出さないといけないなと感じて、意外にもすんなりとそっちを選べたんですよ。

──ゼンのもとから離れても、リリアスで宮廷薬剤師として立派に働く白雪の姿は、なんとも頼もしく感じます。白雪のこの仕事はどのようにして決めたのですか?

国や場所が変わっても、自分の持っているもので生きていける子じゃなくては!と考えたのがまず1つですが、私の中に職人への憧れがすごくあって、自分の手元で何かを作っている人が好きなんですよね。それが投影されているんだと思います。仲間たちとともに働く感じや、彼女たちが共有している知識や技術への憧れもありますね。