TVアニメ「薬屋のひとりごと」が10月21日から放送される。シリーズ累計2400万部を誇る日向夏の小説をアニメ化した本作は、とある大国を舞台に、探究心と好奇心が人一倍旺盛な元薬屋の少女・
コミックナタリーでは放送開始を記念し、コミカライズ版から「薬屋のひとりごと」の魅力に取り憑かれたマンガ好き芸人、パンサー・菅良太郎にインタビューを実施。ミステリー、恋愛、人間ドラマ、コメディとさまざまな要素を含む物語の魅力を、独自の視点で解説してもらった。また、作中屈指のイケメン・壬氏について、菅が共感を覚えるという点も明かされた。
取材・文 / 後藤悠里奈撮影 / 入江達也
TVアニメ「薬屋のひとりごと」本PV
「薬屋のひとりごと」はまるで“バカでかいドラッグストア”
──まずは、菅さんが「薬屋のひとりごと」に出会ったきっかけを教えてください。
実は全然覚えていないんですよ。僕が読んでいるのはスクウェア・エニックス版のコミカライズなんですが、それがまだ1巻しか出ていない頃に読み始めたんですよね。どこかで名前を見て知ったのか、書店で平積みされていて気になったのか……。
──それほど長い付き合いなんですね。読まれた感想はいかがでしたか?
最初は、絵柄もかわいらしくて後宮が舞台の物語だから、恋愛系の話なんだと思っていたんです。けど、実際に読んでみたら、後宮すべてを巻き込んでいくミステリーじゃないですか。しっかりとした謎解き要素があるし、さらに読み進めていくと1つひとつの事件が1本の太いストーリーにつながっていく感じがめちゃくちゃ面白いと思いました。しかも、それに加えてギャグもあるし、後宮の権力争いや人間ドラマもあるし、猫猫の地元の花街の話もあるし。それぞれのジャンルのいいとこ取りをした、要素がてんこ盛りのマンガだなと思いますね。「ジャンルは何?」と聞かれても、ひと言で説明するのが難しいんですよ。ミステリーも、恋愛も、お色気も、化学も、そして毒見というグルメ要素(笑)も、なんでも揃っていて。なんだか、バカでかいドラッグストアみたいだなと思います。
──「バカでかいドラッグストア」、素敵な表現です。ちなみに、菅さんは普段、マンガを探すときは書店で探すことが多いんですか?
それもありますし、人から勧められることもありますし、いろいろな賞をチェックしたりもしています。あとはマンガ好きの芸人同士で情報交換をしたり。やっぱり芸のタイプによって読んでいるものって全然違うんですよ。明るい人はスポーツマンガをよく読んだりとか。僕は割とまんべんなくいろいろなジャンルを読むタイプですね。
──そういう違いがあるのは面白いですね。お笑い芸人という視点からマンガを読むこともあるんですか?
ありますよ。「このマンガ家さん、ちょっと大喜利が強すぎるな」と思ったり。自分は古谷実先生の作品を見てマンガ好きになったんですが、やっぱり古谷実先生はすごすぎますね。あとは、「僕のヒーローアカデミア」の堀越耕平先生とか、和山やま先生。「女の園の星」の卒業アルバムにクワガタが一緒に写っている話は、どうやったらこんな話を思いつくんだろうと思いました。和山先生はお笑いの賞レースに出たら優勝もありえるだろうなと思います。フリップネタとかをやりそうだな、とか。
──(笑)。「薬屋のひとりごと」を芸人視点でご覧になったときに、特に魅力を感じるポイントは?
壬氏と猫猫の掛け合いは特にわかりやすいですけど、やっぱり物語全体のテンポがいいなと思います。例えば、媚薬を作るエピソードでは、猫猫が自分用に取っておいた媚薬作用があるチョコレート入りのパンを侍女たちが食べてしまって、みんながフワッとなっちゃうじゃないですか。あれとかはまさにフリとボケのテンポのよさですよね。
──猫猫の独特なテンションのツッコミも面白いですよね。
みんなとは一歩違う俯瞰の視点からツッコみますよね。壬氏が「色目でも使っておくか」と微笑みかけてきたときに、「余程暇なんだろうな」「気持ち悪い」と考えるあの感じは、完全に引き芸ツッコミですよ。物語の主人公って勢いよくツッコむタイプが多いですけど、猫猫は「基本的にはマイペースで飄々としていつつも、さまざまな薬の素材を目の前にしたときだけテンションが上がる」というのがいい魅力になっているのかなと思います。
──ちなみに、芸人仲間で「薬屋のひとりごと」好きの方や、菅さんがこの作品をオススメしたいと思う方はいらっしゃいますか?
バイク川崎バイクはめちゃくちゃマンガ好きでよく情報交換するんですけど、「薬屋のひとりごと」は読んだことがあるのかな? オススメしたい人だと、ニッチェにはすでに紹介していて、近ちゃん(近藤くみこ)はミステリーが好きだから「気になる、読もう!」と言っていました。江上(敬子)はグルメマンガが好きなので、“毒見”というグルメマンガだと捉えていたらハマるんじゃないかなと思います。
何気ない日常動作に光るアニメスタッフのこだわりに「ありがとう」
──そんな「薬屋のひとりごと」のアニメがいよいよ放送スタートとなりますが、作品ファンとしてアニメ化を聞いたときのお気持ちはいかがでしたか?
ちょっと遅いぐらいだなと思いました。もっと早くアニメ化されると思っていたので。実はこのインタビューを受けるにあたってアニメの冒頭数話をひと足先に観させてもらったんですが、もうめちゃくちゃよかったです!
──どんなところがよかったですか?
やっぱりすごくテンポがいいです。でも作品が持つ雰囲気自体は壊していなくて、印象的なシーンはちゃんと印象的に表現されているんですよ。
──なるほど。
一方で、細かいやり取りや心理描写は原作やマンガだとより丁寧に描かれているので、アニメを観てから原作を読むという入り方でも楽しめると思いました。アニメにも、原作やマンガにも、双方にとっていい形になっていて、きっと原作から好きだった方は天に向かって「ありがとう」って言うんじゃないですかね。
──PVが公開された際、その映像美がファンの間で早くも話題になっていました。作品全体の映像表現について、菅さんはどう感じましたか?
とにかく色がきれいなのが印象的でしたし、光の表現もすごかったです。窓から差し込む光とか、顔に影が当たって振り向く動作に合わせて影がどんどん動いていく感じとか。そういう光や影の使い方によってシリアスなシーンがより引き立っていると思いました。あと、印象に残ったのが、猫猫が同僚の
〇〇されるのが好き。菅と壬氏の意外な共通点
──「薬屋のひとりごと」にはたくさんの個性的なキャラクターが登場しますが、特に菅さんがお気に入りなのは誰ですか?
壬氏が好きですね。めちゃくちゃイケメンで、常にみんなからキャーキャー言われていて、だからこそ自分に蔑みの目を向ける猫猫のことが気になっていくわけですけど、その気持ちはちょっとわかるんですよ。僕も嫌悪感にまみれた目で見られるは嫌いじゃないので。
──菅さんと壬氏にそんな共通点があったとは!
僕は壬氏みたいにモテた経験は全然ないんですけどね(笑)。僕は相手の心理が見える瞬間が好きなんですよ。蔑みの目ってそれがモロに表れるじゃないですか。「こいつはこういうことが嫌なんだな」って。だから好きなんだと思います。
──なるほど……。では、そんな蔑みの視線を送る側である猫猫についての印象はいかがですか?
冷静沈着で、サイコパスな一面もあって、チートキャラだと思うぐらい知識豊富で、本当に要素がてんこ盛りだなと思います。毒耐性があるって強過ぎますよ。自分の左腕で実験しているのもすごい発想だなと思いますし、めちゃくちゃ好きなキャラクターです。
──菅さんは「ときめきトゥナイト」などの少女マンガもお好きですが、猫猫は、少女マンガで描かれるような「清楚で、ひたむきで、ちょっと勇気もある」というヒロイン像とはまったく異なるキャラクターだと思います。菅さんの中で猫猫はどういう立ち位置のキャラクターですか?
猫猫はこの世界の案内人兼説明役兼ヒロインみたいなキャラクターですよね。この作品は具体的な歴史的事実に沿っているわけじゃなく、いろんな要素をくっつけて世界が構築されていると思うのですが、だからこそ猫猫がいろんなことを説明してくれるおかげで作品世界に入っていけると思うんです。でも、そうやって世界を俯瞰で見て説明をする一方で、後に明らかになっていくんですが、実はしっかりと少女マンガのヒロインっぽいところもあって、とめちゃくちゃ忙しいキャラクターなんじゃないかなと思いますね。
──なるほど。突然ではありますが、もし菅さんが「薬屋のひとりごと」に登場する個性的なキャラクターとトリオを組むとしたら、誰と組みたいですか?
トリオですか……猫猫と壬氏が組んでいたら間違いなく売れるでしょう。というか、もう売れていますしね、この作品が。僕はその2人の横で、今まで通り、入りたいタイミングで入るという感じがいいですね。あとは、
──壬氏の側近の
やぶ医者と組むのはちょっと怖いかな。あいつ、作中でも相当ヤバいことをやらかしますから(笑)。
──(笑)。あとは、皇帝とか?
皇帝もダメですね、僕と見た目が被っちゃうんで(笑)。あと、ちょっとネタが飛んだら殺されそうなのも怖いです。皇帝は皇帝という生き物ですからね。やっぱりベタですけど、猫猫と壬氏か、玉葉妃と梨花妃と組みたいと思います。
──どんなコントになるか気になりますね(笑)。それでは最後に、菅さんの考えるアニメの注目ポイントを教えてください。
全体的によかったですが、特に第4話は細かな指の動きにまで非常に気合いが入っていると感じましたので、ぜひ注目していただきたいと思います。それから、マンガの場合は作品の世界観と言葉の意味がわかるように、例えばバターなら「乳酪」と書いた横にバターとフリガナが振られているんですけど、アニメではアニメとしてわかりやすいように表現されていて、でもまったく違和感がなかったのも面白かったです。きっと、原作の知識なくアニメから観てもちゃんとセリフが頭に入ってくるように工夫されているんでしょうね。原作が好きな人はもちろん、原作を読んだことがない人も入れると思いますし、むしろそういう人にこそ観てほしいアニメです。どうぞ放送をお楽しみに!
プロフィール
菅良太郎(カンリョウタロウ)
1982年4月7日生まれ、東京都出身。NSC東京校の9期生で、お笑いトリオ・パンサーのメンバーとして、ボケ・ネタ作りを担当している。特技はパラパラを踊ることで、“パラパラおじさん”というキャラを生み出しSNSを中心に話題となった。現在、TBS「王様のブランチ」、日本テレビ「有吉の壁」、TBSラジオ「こねくと」などに出演中。