back number5大ドームツアーをWOWOWで放送|見どころレビュー&著名人コメント

back numberの5大ドームツアー「in your humor tour 2023」の模様が7月22日20:30よりWOWOWプライムで、8月25日22:00よりWOWOWライブで放送される。

「in your humor tour 2023」はback numberが最新アルバム「ユーモア」を携えて3月と4月に行った、キャリア初となる5大ドームツアー。WOWOWではこのツアーより4月16日の東京・東京ドーム公演の模様が独占でオンエアされる。

音楽ナタリーではこの放送を記念した特集を展開。back numberのインタビュー経験があるライター・森朋之が2018年の3大ドームツアー「back number dome tour 2018 "stay with you"」以降の活動を振り返りながら、番組の注目ポイントを紹介する。さらに今年のドーム公演を鑑賞した永作博美、向井慧(パンサー)、LiLiCoによる感想コメントも掲載。さまざまな視点を通じてback numberの魅力を再発見してほしい。

文 / 森朋之撮影 / 佐藤祐介、半田安政、久保永隆二、伊藤大介(SIGNO)※メインカットはback number「in your humor tour 2023」の写真。

10代の若者だけでなく、がんばるすべての人に寄り添った

2011年4月にメジャーデビューを果たしたあと、ライブハウス、ホール、アリーナと着実にライブの規模を拡大してきたback number。2018年に開催された初の3大ドームツアーは、まっすぐにオーディエンスと向き合いながらロックバンドとしての地力を積み上げてきた彼らの大きな転機だったと言っていいだろう。その後もback numberは“最初のドームツアーは本当に通過点だった”と自ら証明するような素晴らしい飛躍を遂げる。2018年11月に19thシングル「オールドファッション」、2019年2月に20thシングル「HAPPY BIRTHDAY」をリリースし、同年には「シャンデリア」以来3年3カ月ぶりとなるオリジナルアルバム「MAGIC」を発表するとともに、全国アリーナツアー「NO MAGIC TOUR 2019」を実施。セールス、観客動員数をさらに高め、バンドとしてまさに順風満帆な活動を継続してきた。

そして2020年、世界中がコロナ禍に襲われた。結成当初からライブを積み重ねることでバンドとしての実力を高め、オーディエンスとのつながりを強めてきた彼らも、とてつもないダメージを受けたはず。想像もできないような葛藤や苛立ち、不安を抱えながらもback numberは、音楽の力によって自らの存在意義を示してみせた。起点になったのは、2020年8月にミュージックビデオが公開された「水平線」だ。

この曲が制作されたきっかけは、2020年に中止となったインターハイ(全国高等学校総合体育大会)の実行に関わる高校生20人からの手紙だった。この年のインターハイはback numberの地元・群馬県で開催され、開会式で「SISTER」が演奏される予定だったという。「開催に向けてがんばってきたみんなを元気付けたいので、協力してもらえないでしょうか」という内容の手紙を受け取ったメンバーは楽曲を制作することを決意。彼ら、彼女らへの気持ちを込めて作ったのが「水平線」だったというわけだ。MVは2023年7月現在、2億回に迫る再生数を記録している。大切なイベントが中止になってしまった10代の若者はもちろん、厳しい現実にぶつかりながらがんばっているすべての人の心に寄り添うこの曲は、この数年間の音楽シーンを象徴するエールソングとして浸透してきた。

コロナ禍においても真摯に、誠実に音楽と向き合っていた

2022年4月には約3年ぶりとなる全国アリーナツアー「SCENT OF HUMOR TOUR 2022」が開幕。back numberは「怪盗」「黄色」などの新曲も披露し、バンドとして成長を続けていることを証明した。その後も「ベルベットの詩」(映画「アキラとあきら」主題歌)、「アイラブユー」(NHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」主題歌)といった話題曲をリリースし続け、今年1月にニューアルバム「ユーモア」を発表。このアルバムタイトルについて清水依与吏(Vo, G)はこう語っている。

「『そうか、自分に必要なのはユーモアなんだ』と思ったんですよね。コロナの時期って、しんどかったじゃないですか。今も完全に終わったわけではないけど、始まった頃は何がどうなるかもまったくわからなくて。その時期に『こういうときユーモアを持てたらいいだろうな』と思ってたし、その言葉がずっと頭の中にあったんです」

back number「in your humor tour 2023」より清水依与吏(Vo, G)。

back number「in your humor tour 2023」より清水依与吏(Vo, G)。

このコメントから伝わってくるのは、back numberがコロナ禍においても真摯に音楽と、そして自身と向き合っていたという事実だろう。この3年間の中で経験した悔しさや葛藤、喜びを歌詞とメロディ、サウンドに置き換え、まるでドキュメンタリーのような音楽へと結び付ける──アルバム「ユーモア」の核になっているのはメンバー3人のリアルな感情とファンに対する誠実な姿勢なのだと思う。「エメラルド」「怪盗」「水平線」「黄色」「ベルベットの詩」「アイラブユー」など既発のシングル曲に加え、新曲も充実。スタジオセッションをもとにした生々しいバンドサウンドで、変わり映えがしない日々の中でも強い気持ちを持ってがんばっている主人公を描いた「ゴールデンアワー」、ヒップホップやシティポップの要素を感じさせるグルーヴが印象的な「Silent Journey in Tokyo」、抒情的なメロディラインと痛みにも似た悲しみが伝わる女性目線の歌詞が印象的な失恋ソング「赤い花火」。back numberの“らしさ”と“新しさ”が刺激的なバランスで共存するこのアルバムは、このバンドがさらなる高みに達していることをはっきりと証明している。タイトル通り、“ユーモア”にあふれたアイデアがふんだんに盛り込まれていることも、このアルバムの深みにつながっていると思う。

back number「in your humor tour 2023」より小島和也(B, Cho)。

back number「in your humor tour 2023」より小島和也(B, Cho)。

back number「in your humor tour 2023」より小島和也(B, Cho)。

back number「in your humor tour 2023」より小島和也(B, Cho)。

back numberが伝える何気ない日常の素晴らしさ

アルバム「ユーモア」がステージの上でどのように表現されるのか。既存のヒット曲、ライブアンセムとどんな化学反応を起こすのか。5年ぶりのドームツアーで3人はどんなパフォーマンスを繰り広げるのか。さまざまな期待が交差する中で行われた5大ドームツアーは、こちらの想像を大きく超える素晴らしいものになった。

ここからはWOWOWで7月22日、8月25日に独占放送される東京ドーム公演の見どころをいくつか紹介しよう。筆者は4月16日の公演を現地で観たのだが、まず心に残ったのは、1曲1曲に渾身の力を注ぎながら演奏するメンバーの姿だ。そのことを象徴していたのは、1曲目の「アイラブユー」だった。清水の弾き語りから始まり、小島和也(B, Cho)、栗原寿(Dr)が丁寧に音を重ねることで生まれる音像、そして、何気ない日常の素晴らしさがじんわりと伝わってくる歌。「どんな言葉が 願いが 景色が 君を笑顔に幸せにするだろう」というフレーズが会場全体に広がり、すべての観客に伝わっていく場面は今も強く記憶に刻まれている。

back numberの真骨頂とも言える、切ないラブソングも絶品だった。アルバム「ユーモア」の1曲目に収められている「秘密のキス」では、女性を主人公にした映像と男性の愛らしい恋心が見事にシンクロ。ライブの前半で披露された名曲「クリスマスソング」では、イントロが始まった瞬間にどよめきにも似た歓声が起こり、ライブ全体を豊かな感動で包み込んだ。そして「ハッピーエンド」では「あなたを好きなままで消えてゆく」という歌詞に象徴される身を切るような悲しさがリアルに描かれ、オーディエンスを強く惹きつける。何度も聴いている名曲に生々しい感情が注ぎ込まれ、“この場所、この瞬間”だけの音楽へと昇華される──これこそがback numberのライブの醍醐味だ。WOWOWの放送ではメンバー全員の表情がしっかりと捉えられ、ライブ当日のエモーションを追体験できる。

back number「in your humor tour 2023」より栗原寿(Dr)。

back number「in your humor tour 2023」より栗原寿(Dr)。

back number「in your humor tour 2023」より栗原寿(Dr)。

back number「in your humor tour 2023」より栗原寿(Dr)。

会場が大きくなっても変わらないもの

ライブ中盤ではメンバーがサブステージに移動し、アコースティック編成で「ヒロイン」「手紙」を演奏した。3人が顔を見合わせながら音と歌を重ねる姿からは、プライベートスタジオでセッションしているような親密さが伝わってきた。ドーム会場のサイズ感を生かした、レーザーや映像を駆使したダイナミックな演出も大きな見どころだが、ライブを通して強く感じられるのは、3人のロックバンドとしての佇まいだ。数多くのヒット曲を生み出し、幅広い層のリスナーに支持されている彼らだが(実際、この日のライブには10代のキッズや親子連れなど幅広い年齢層のファンが足を運んでいた)、どんなにポピュラリティを獲得しても、その本質がロックバンドであることはまったくブレていない。ギミックに頼らず、生身の音、生身の声でぶつかるような演奏が、その証左だ。

もう1つ記しておきたいのは、“1対1”で観客と対峙する姿勢だ。先述した通り、back numberはライブハウス、ホール、アリーナと着実に段階を重ねてきたが、どんなに会場が大きくなっても、彼らが発する感情や波動は体感上、まったく変わることがなかった。それはおそらく、メンバー全員が“目の前の1人1人に届ける”という強い意識を共有しているからだろう。

back number「in your humor tour 2023」より清水依与吏(Vo, G)。

back number「in your humor tour 2023」より清水依与吏(Vo, G)。

このライブの前半で清水は、「日頃大事にしてもらってる曲たちなんで、当たり前なんだけど、一生懸命、1曲1曲、命懸けでやっていくので」と観客に話しかけた。喜怒哀楽のすべてを描き出す楽曲群、ドームならではの演出、そして、どこまでもリアルで生々しい感情を込めた演奏。このライブを通してあなたはどんなことを感じ、何を得られるだろうか? WOWOWの放送を通して、ぜひ確かめてみてほしい。