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雲田はるこ「いとしの猫っ毛」|デビュー10周年、原動力は“新しいことにも挑戦し続けること”

2008年にBL作品「窓辺の君」でデビューし、今年10周年を迎えた雲田はるこ。「昭和元禄落語心中」をきっかけに一般誌にも活躍の場を広げ、人気を集める雲田にとって初めての連載が、ポルノ小説家のみいくんが管理人を務めるまたたび荘を舞台に、彼の幼なじみであり恋人でもある恵ちゃんとの関係を描いたBL「いとしの猫っ毛」だ。

電子書籍サービス・ブックパスでは雲田のデビュー10周年を記念し、「いとしの猫っ毛」の読み放題キャンペーンを展開。これに合わせコミックナタリーでは、雲田へメールインタビューを実施し、「いとしの猫っ毛」に対する思いや今後の展開を聞いたほか、10年間の活動を振り返ってもらった。

構成・文 / 増田桃子

楽しんでいただけるよう新しいことに挑戦し続けることが原動力

──まずはデビュー10周年おめでとうございます。率直なご感想を聞かせてください。

読んでくださる読者さんがいてくださってこその10周年です。ここまで読んでくださった皆さんのおかげでしかありえなさすぎます。読者さんの「面白いマンガが読みたい」というご期待にずっと応えていきたいですし、楽しんでいただけるよう新しいことにも挑戦し続けることが、描くことの原動力です。ほんとうにありがたいことです。

──10年間の活動の中で最もうれしかった出来事はなんでしょうか。

デビュー1年目くらいのときに、三浦しをんさんから「舟を編む」の挿絵のご依頼をいただいたことが今まで最もびっくりしましたし、うれしくて、もしかして今後も超える出来事はないのでは?と思っています。突然のお仕事のご依頼、コラボ企画のご提案は、どんなものでもありがたいですしうれしいですね。

ITAN(講談社)にて雲田によりコミカライズ連載された「舟を編む」上巻。 ©雲田はるこ・三浦しをん/講談社 ITAN(講談社)にて雲田によりコミカライズ連載された「舟を編む」下巻。 ©雲田はるこ・三浦しをん/講談社

──逆に、とてもつらかった出来事はありますか?

つらかったことは、インフルエンザで減ページになったことです。減らした分を埋めるのも後々大変でしたし、とにかく病気はアカンです。マンガ家は健康と体力第一です。

──なるほど。デビューから現在まで、ご自身から見て変わったこと、変わらないことはありますか?

「いとしの猫っ毛」1巻

絵柄はとても変わったように思います。けれど、自分でどこがどう変わったかは指摘できません。変わってないこととしては、ネームを作るときの紆余曲折に時間がかかりすぎることですね。いつまで経ってもネームを仕上げるのに時間が掛かっているので、これはもうどうにも治らないんだなと思っています。

──もし10年前の自分に何か言葉をかけるとしたら、何と声をかけますか?

10年前の自分へ……。「ネーム遅いのは治らないから、遅いことにそこまで悩まなくても大丈夫ですよ!」でしょうか(笑)。

「いとしの猫っ毛」は人生にも寄り添ってくれている、とても特別な作品

──では「いとしの猫っ毛」について聞かせてください。雲田さんにとっては、どのような位置づけの作品でしょうか。

初めての連載であり、初めての長期作品でもあったので、試行錯誤しながら一緒に育ってきましたし、育てていただいた感じがあります。私の人生にも寄り添ってくれている、とても特別な作品です。

──描くに至った経緯を教えてください。

カップル2人が猫をのんびりと愛でながら愛を育んでいくのを見守るような、ほっこりできる作品にしたいと考えていました。当時はそういうBL作品はなかったので、そういう作品を作りたいなとずっと考えていたんです。「下宿もの」のマンガを描くことも夢のひとつでした。いろんな人物を出せて広がりが出ますし、「見守り系」はこれ以上ないシチュエーションではないかなと思いました。

「いとしの猫っ毛 小樽編」

──みいくんと恵ちゃんは小樽出身ですよね。出身地を小樽にしようと思ったのには、理由があるのでしょうか。

主人公カップルのみいくんと恵ちゃんは、遠距離恋愛中という設定が必要だったため、なかなか会えないできるだけ遠い場所、ということで小樽出身にしました。小樽を選んだのは、友人がいて取材しやすかったのが一番の理由でしたが、取材に行ってみたら、街の素敵な雰囲気や寒さ、遠さ、のんびりとしてあたたかい雰囲気などを感じて、恵ちゃんにぴったりの街だったなと、後から思いました。

──またたび荘の住人たちはかなり個性的な人物が揃っていますよね。キャラクターのアイデアはどこから生まれたのでしょう。

「2人の恋愛のお邪魔虫はするけれど、横恋慕はありえないキャラたち」ということを心がけました。ドラマチックな話にはしたくなかったので、横恋慕はナシで、と。みんな、よき相談役にもなれる感じを目指しました。それぞれで役割が違うキャラになっていったので、よかったと思います。

「いとしの猫っ毛」1巻収録の3話「『おばあちゃんとおそうじ』のマキ」より、恵ちゃんとみいくんのおばあちゃんが縁側で語る場面。

──お気に入りのキャラクターと、描くのが大変だったキャラクターはいますか?

「ねこっけ」はどのキャラも同じように描くのが楽しくて、面白いです。ハルくんは華やかなので描くのが特に楽しいです。唯一、みいくんのおばあちゃんは、2人に厳しいことも言うキャラなので難しいんですが、おばあちゃんの心の動きを丁寧に追ってみると、味わい深いエピソードがいくつも生まれたので、難しいけれど描いてよかったキャラになりました。

──印象に残っているエピソードを挙げるとしたらどれでしょう。

1つ目は第18話のみいくんが、恵ちゃんの実家のみそ汁の味が好きで、真似して作っているエピソードです。みいくん可哀想だなと思いました。

「いとしの猫っ毛」4巻収録の27話「『蛭間さんの彼女さん』のマキ」より、サエさんがみいくんに楽しそうに話しかけるシーン。

──恵ちゃんはお母さんの手料理をほとんど知らないですからね……。

はい。恵ちゃんと恵ちゃんちがあってよかったよね、と。2つ目は13話の、ふざけすぎたハルくんがみいくんにちょっかいを出して、恵ちゃんが怒るお話。恵ちゃんが予想外の表情をしていて、びっくりしました。読者さんにも好評のエピソードでした。3つ目は27話の、蛭間さんの彼女で腐女子のサエさんが遊びに来たエピソードです。友だちにいそうなキャラ・ナンバーワンのサエさん。彼女のカップリングの好みと、「ねこっけ」の主人公2人の設定がことごとく逆なので、一度彼女とは話し合ってみたいです(笑)。

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「いとしの猫っ毛」キャンペーン

「いとしの猫っ毛」1~2巻&小樽篇が読み放題! 期間:2018年3月23日(金)~4月5日(木)
読み放題プラン:月額562円(税抜)

ブックパスのセーフサーチ対象作品です。ブックパスでの表示・購入をお考えの方はこちらをご確認ください。

「いとしの猫っ毛」あらすじ

幼なじみで恋人のみいくんのもとへ上京してきた天然どさんこボーイの恵ちゃん。みいくんが管理人をするまたたび荘が愛の巣になると思っていたのに個性的な住人たちに囲まれてなかなかラブな空気になれず。真の恋人になるには乗り越えなくちゃいけないハードルがあるのだが……。ほのぼのカップル、みいくんと恵ちゃんのねこ系癒されボーイズラブ。

雲田はるこ(クモタハルコ)
雲田はるこ
2009年に東京漫画社から発売された「窓辺の君」で商業デビュー。2010年にリブレのアンソロジー「Citron」にて「いとしの猫っ毛」を連載開始。以降、BE・BOY GOLD(リブレ)、on BLUE(祥伝社)などBL誌を中心に活躍する。2010年にITAN(講談社)にて連載を開始した「昭和元禄落語心中」は、2012年に「このマンガがすごい!2012」オンナ編第2位、2013年に文化庁メディア芸術祭マンガ部門を受賞。また2016年よりテレビアニメ化もされた。現在、on BLUEにて「新宿ラッキーホール」の続編を連載中。