雲田はるこ「いとしの猫っ毛」|デビュー10周年、原動力は“新しいことにも挑戦し続けること”

自作の振り幅にはギョっとすることも多い

──「いとしの猫っ毛」は、みいくんと恵ちゃんのほのぼのとしたやり取りや、住人たちの交流に癒やされる作品です。その一方で「新宿ラッキーホール」のようなセクシーで色っぽい作品など、雲田先生の創作の幅はとても広いですよね。媒体や雑誌による描き分けなど、意識されている部分はあるのでしょうか。

「新宿ラッキーホール」 ©雲田はるこ/祥伝社 on BLUE comics

私も自作の振り幅にはギョっとすることも多いですが、自分で意識して描き分けられているものではありません。振り返ってみると、結果そうなっていたというものばかりです。そのキャラクターを最大限に魅力的にできる世界観を描いてみたらそうなった、という感じです。なので今後、どういった世界観を見られるのかは、私自身も楽しみですし予想ができません。

──他誌での連載もありながら、ライフワークのようになりつつある「いとしの猫っ毛」ですが、今後はどのような展開になっていく予定でしょうか。

2010年4月から始まって、1冊で1季節分、というゆっくりした時間の経ちかたをしている「ねこっけ」界隈ですが、今後も同じようなペースでゆっくりゆったり歳をとってくれればと思っています。いっそ「サザエさん」みたいに、急に歳をとらなくなっても面白いかもしれません(笑)。ネタバレ?かもしれませんが、急に2人のどちらかが死ぬオチみたいなことはないので(笑)。読者さんにはやはり、同じように相変わらずの面々をずっとそっと見守っていっていただければと思っています。

ダメなところはどんどん指摘してもらいたいタイプ

──では雲田さんのこれまでの活動についても教えてください。まずはマンガを描くようになったきっかけはなんだったのでしょうか?

ただのイラストよりも、コマに割ってキャラクターを動かしたほうが友だちに受けがよかったので、それでマンガを描くようになりました。「鳥山明のHETAPPIマンガ研究所」は大好きでよく読んでいました。

──影響を受けた作家さんはいますか?

絵柄は雁須磨子先生、冬野さほ先生、くらもちふさこ先生、いくえみ綾先生、松本大洋先生、吉田秋生先生などにインスピレーションをいただいてる気がします。手塚治虫先生の絵もよく模写しました。

「窓辺の君」 ©雲田はるこ/東京漫画社

──デビュー作は、東京漫画社のBLアンソロジー「職業カタログ」に掲載された「窓辺の君」ですが、デビューの経緯を教えてください。

東京漫画社の編集さんに、同人誌を見てお声がけいただきました。マンガ家になるために「投稿をしなければ!」とは思ってましたけども、同人誌活動が楽しすぎてなかなかそちらへコマを進めることができず、もうちょっと同人誌に飽きたら投稿しよう、と考えていました。今思えば、投稿とか出張編集部でマンガを見ていただく機会をもっと持つべきでした。デビューするとなかなか批評してもらえなくなるので。ダメなところはどんどん指摘してもらいたいタイプです。

練り練りに練ったマンガをお届け出来る日が来るといいな

──BL2作目の「野ばら」が「このBLがヤバイ!2011」で3位にランクイン。同年に、ITAN(講談社)にて代表作となる「昭和元禄落語心中」の連載が始まります。BLから一般向けへ進む作家さんは多くいらっしゃいますが、雲田さんは比較的早い段階で一般誌での連載が始まったなという印象があります。

「昭和元禄落語心中」1巻 ©雲田はるこ/講談社

デビュー当初から、一般誌とBLの半々で仕事ができたら丁度いいなと思っておりましたので、ありがたかったです。

──BLと一般向けとの描き分けで意識されている部分はありますか。

BLと一般向けは、恋愛マンガであるかそうでないか、という違いは意識しております。どのマンガを作り上げるのも苦労はありますが、BLマンガだから特に大変、というような苦労はそんなにありません。

──今後描いてみたいと思っている作品や、テーマなどありましたら教えてください。

描きたいものを、ネームのときに一気に練り上げて形にするのが好きなので、その都度、マンガを仕上げる感じの作りをしています。なので、ぼんやりとしか頭にない状態で話してしまうとつまらないものに見えてきてしまいます。ネームにできるくらい明確になってからしか話せません。ですので、マンガのプランみたいなものはお話しできないんだなっていうのが、最近わかってきました。「企業秘密です」という感じに近いです。

──ちなみに最近「HiGH&LOW」がお好きというのを拝見したのですが、もし差し支えなければどんなところにハマったのか教えてください。

私のマンガに足りないな、足したいなと思っていたことが、ぎゅうぎゅうに詰まっていました。江戸時代の“外連味”に近い感触です。「HiGH&LOW THE MOVIE 2 / END OF SKY」のDVDが出たばかりなので、また何度も観返しています。

──ほかに最近ハマっているものや、マイブームなどはありますか?

マイブームといえば、みうらじゅんさんの展示(「MJ's FES みうらじゅんフェス!マイブームの全貌展 SINCE 1958」)が川崎でやっていて、観に行きました。なんかもう大好きです。みうらじゅんさんみたいな人生が憧れです。

──では最後に、読者へのメッセージをお願いします。

2018年は、続編をやったり、過去作をまとめたり、「総まとめ」という感じの年になりそうです。それをしながら、次回作の準備をしてる段階です。また練り練りに練ったマンガをお届け出来る日が来るといいなと思います。私も次回作を描ける日が待ち遠しいです。よろしくしてやってください。

「いとしの猫っ毛」4巻のカバーイラスト。
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「いとしの猫っ毛」あらすじ

幼なじみで恋人のみいくんのもとへ上京してきた天然どさんこボーイの恵ちゃん。みいくんが管理人をするまたたび荘が愛の巣になると思っていたのに個性的な住人たちに囲まれてなかなかラブな空気になれず。真の恋人になるには乗り越えなくちゃいけないハードルがあるのだが……。ほのぼのカップル、みいくんと恵ちゃんのねこ系癒されボーイズラブ。

雲田はるこ(クモタハルコ)
雲田はるこ
2009年に東京漫画社から発売された「窓辺の君」で商業デビュー。2010年にリブレのアンソロジー「Citron」にて「いとしの猫っ毛」を連載開始。以降、BE・BOY GOLD(リブレ)、on BLUE(祥伝社)などBL誌を中心に活躍する。2010年にITAN(講談社)にて連載を開始した「昭和元禄落語心中」は、2012年に「このマンガがすごい!2012」オンナ編第2位、2013年に文化庁メディア芸術祭マンガ部門を受賞。また2016年よりテレビアニメ化もされた。現在、on BLUEにて「新宿ラッキーホール」の続編を連載中。