劇場アニメ「君の膵臓をたべたい」|高杉真宙×Lynnが振り返る「一瞬一瞬を大事にしなきゃ」と気付くまでの10カ月

内田雄馬さんは現場の色を変える(高杉)

──自分自身にひたすら向き合う「僕」と、周囲との関わりを大事にする桜良は、お互いに自分にない要素を相手が持っています。アフレコを重ねていく中で、自分にないものをほかの誰かが持っていて、それがうらやましいと感じた瞬間はありますか?

高杉 内田雄馬さんがブースに来たら、場の雰囲気が黄色とかオレンジになる感じ。その盛り上げ方は、なんていうか……きれいだなあと思ったんですよね。ナチュラルにみんなの空気を底上げしてくれる感じが、すごく素敵だと感じたのを覚えています。

Lynn 私は、藤井ゆきよさんが本当にずっと恭子だなって(笑)。藤井さんが、恭子の気持ちはすごく理解できたとおっしゃっていたんです。憑依型じゃないですけど、役との向き合い方、自分への落とし込み方がすごく深いなと思いました。

「君の膵臓をたべたい」より。左から桜良と恭子。

──では高杉さんとLynnさんが、お互いに相手が自分にないものを持ってるなと感じたことは?

高杉真宙

高杉 それは、あまりにありすぎるというか(笑)。アフレコ序盤にちょっと遡るんですけど、台本の1ページ目からLynnさんの声が桜良にぴったりだと思ったんです。桜良は“死ぬまでにやりたいことリスト”を実現するために「僕」を引っ張り回しますけど、本当に僕自身もLynnさんのセリフ回しに引っ張られて演技をさせていただいたような気がします。その状態は最初からでしたけど、アフレコ中盤あたりから濃くなっていきましたね。

Lynn 高杉さんは、お芝居が自然体ですよね。「僕」の心が徐々に開けてきて、声に温かみや優しさが加わるのを素敵に表現されていらっしゃいました。台本を読んでいるというより、実際に隣でおしゃべりしているような感覚で、心地のいいお芝居ができたなあって思います。

どうにかして幸せな結末を迎えてほしい(Lynn)

──アフレコは3日かけて録り終えたそうですね。全体を通して、印象的だったシーンはどこですか?

高杉 最初の「僕」のモノローグですかね。

──モノローグがあってから、回想するように「僕」と桜良の出会いが描かれていきましたよね。

高杉 アフレコはシナリオの順番通りに進めていったのですが、あのモノローグが一発目だったので難しかったです。実は完成した映像に使われているのは、アフレコ最終日に録り直したものなんですよ。桜良が病気だとわかって、「僕」が2人の物語を見届けてから録ったもの。やっぱり最初にアフレコしたものとは全然違うんです。高杉真宙自身が声の演技経験を積んだからっていうのもあると思うんですけど、何がそう変えさせたのかよくわからなくって。でも、僕のちょっとした感情の変化なんでしょうね。面白いなあって思いましたし、もう1度チャレンジさせてもらえてよかったなあって感じました。

「君の膵臓をたべたい」より。
Lynn

Lynn 私は「僕」が桜良の「共病文庫」を読んで、自分へのメッセージを受け取るシーン。あそこは桜良のすべてがわかるシーンでもあって、今まで抑えていた「僕」の気持ちも表にバッと出るシーンでもあって。一番大事な場面だなと思っていたので、すごく緊張して臨みましたし、何パターンも録ったのを覚えています。「星の王子さま」をモチーフにした世界観の映像もきれいですし、やっぱり桜良はそこでも笑っているんだなあと印象的でした。大切で、好きなシーンの1つですね。

──最初に掴んだキャラクター像とは変わったところはありますか?

高杉 そうですね。原作の小説と台本を読んで役を作っていったんですけど、家で1人で考えてるだけではわからなかった部分があったなあと。「僕」はこういう感情だからこう言ったんだというのは、周りの方と一緒にお芝居していく中で見えてきたりしました。それと順番にセリフを追っていったり、ちょっとした感情の動きがあったりで、キャラクター自体も自分が思ってもみなかったような変化をしていきましたね。

──結果として、高杉さんから見て「僕」はどういう人物でしたか?

高杉 本当に気難しい子だなと(笑)。現場に行って、余計にそう感じたかもしれないです。

Lynn 私は桜良に対して、病気があるないは別にして、明るい部分しか見せないように振る舞ってる人って身近にいるなあって思ってたんです。だから当初から想像しやすいキャラクターではあったんですけど、アフレコが進んでいくにつれてますます近しい存在に思えてきて。物語の登場人物じゃなく、実際にどこかの街に存在するんじゃないかみたいな。というのもあって、桜良にはどうにかして幸せな結末を迎えてほしいなって願ってました。

「君の膵臓をたべたい」より。左から桜良と、桜良の母。

高杉 わかります。

Lynn 桜良の行き着く先は、最初から決まってたんですけどね。でも桜良は大切なことを教えるために、彼女の人生を一生懸命全うしたんだなあと思って。最終的には、感謝を抱く存在になりましたね。

勉強と部活と、夢を追いかけるしかやってなかった(Lynn)

──おふたりは「僕」と桜良と同年代だった高校生の頃、どんな日常生活を送られていたんですか?

高杉真宙

高杉 大したことない日常生活だった気がします。仲のいい友達が2人いるんですけど、その子たちとファミレスとかでずっとしゃべってたり。

Lynn そのときはもう、高杉さんは芸能活動されてましたよね?

高杉 はい。だから僕が参加できないときは、あとの2人から悪口を言われて(笑)。別の子が来られなかったときは、僕ともう1人で「あいつ来ねえ」って悪口言って(笑)。

Lynn 微笑ましい(笑)。私は勉強ばっかりしてる高校に行っちゃったんですけど、その中ではあまり勉強してないほうでした(笑)。でもバスケ部のマネージャーで忙しくて、声優の養成所にも毎週通ってたので、なんかもっと高校生らしくはじけておけばよかったなーって思いますね。学生っぽいことと言えば、友達と学校帰りに買い食いするぐらいでした。

──勉強に部活に夢って、十分充実していらっしゃると思いますよ。

高杉 (大きく頷き)ですよね!(笑)