涙は流してないです!(高杉)
──では、公開日の2018年9月1日について。完成した映像をご覧になっていかがでしたか?
Lynn きれいでした。本当に尊い、輝いている時間をぎゅっと閉じ込めているような感じ。自分が出てるからとかじゃなく、いい作品だなって思いました。
高杉 僕は、不思議な感じでした。今までとはまったく異なるアニメという分野で、キャストやスタッフの皆さんと1つの作品を作り上げられたことに感動して。アニメに声優として出演するという自分のやりたかったことが、「キミスイ」で叶ってよかったなと改めて感じました。
──高杉さんは公開初日の舞台挨拶で、涙がこみ上げてきて言葉をつまらせる場面もありましたよね(参照:「キミスイ」高杉真宙が「大好きな作品」と涙、内田雄馬のお姫様抱っこにも挑戦)。
高杉 そんな場面はないです!(笑)
Lynn あはは!(笑) 映像に残ってますよ。
高杉 そうだ……。Blu-ray / DVDの特典映像で収録されるって、さっき控え室で知ったんですよ。映像を観るのが恐ろしくって。
──あの涙は、どういう思いからあふれてきたんですか?
高杉 たぶん、単純にうれしかったんですよ。あの日は、舞台挨拶の前から「なんか変な感じするなあ」って言ってたんです。なんだろうなんだろうって思ってたら、舞台に立ってあんな感じに(笑)。僕自身、あまりテンションが上がるほうではないですし、感情が表に出やすいタイプではないんです。でも公の場であんなふうになってしまって、本当に納得がいかないです(笑)。
Lynn (笑)。私も初日の舞台挨拶のときは、すごくうれしかったのを覚えてます。この場に辿り着きたくて声優として何年も活動してきたし、高校のときからのがんばりが今ここに結びついてるんだなってしみじみしちゃって。しかも、この作品に関わったキャストやスタッフさんが全員いい人たちなんですよ。それこそ高杉さんの涙を見たときに、「『僕』が高杉さんでよかった!」って心の底から思いました。そんな素敵な出会いがあって、これから「キミスイ」が皆さんのところに届くんだって思った瞬間で、人生で味わったことのないうれしさと緊張を同時に感じましたね。
──高杉さんも舞台挨拶で「(この作品が)大好きでーす!」とマイクを通さず叫んでましたけど、Lynnさんも同じような気持ちだったんですね。
高杉 そんなことも言ってました!? ……言ってたんでしょうね。恥ずかしいから、忘れたんだと思います(笑)。
“現実的”というところが魅力
──そんな「君の膵臓をたべたい」のBlu-ray / DVDが4月に発売されました。作品と長い間関わって、改めて気付いた魅力はありますか?
高杉 いい意味でも悪い意味でも、“現実的”というところが「君の膵臓をたべたい」のよさかなって思うんですよね。原作の小説で「僕」も言ってますけど、物語っていろんなフラグを立てて、それを回収していくから成り立っていくじゃないですか。でも桜良はフラグを立てるけど、それを回収せずに終わってしまう。それが、僕の中ですごく衝撃的だったんです。フラグが立ってても、それを回収するための未来が確実にあるわけではないんだというのが見えて。自分の物語をぼんやりと思い描いてたとしても、今目の前にある一瞬一瞬を大事にしなきゃいけないというのを実感しました。
Lynn ちょっと似てるかもしれないんですけど、生々しさというか、登場人物がリアルということですかね。本当にどこかにいるんじゃないかという感じがするので、自分に置き換えながら観ることができるんじゃないかなと思ってて。人生ってはかなくて尊いなあと気付かされて、この作品に出会ってから、今までのようになんとなく毎日を過ごすのはやめようと思いました。
──では最後に、本作をBlu-ray / DVDで観る人に向けてメッセージをいただけますか。
Lynn なんとなく心が寂しくなったときとかに観てもらえたら、またがんばろうって気持ちになれる作品だと思います。これから初めて観る方は、可能な限り前情報を入れずに観てほしいなと。そして最初に感じた気持ちを日常生活で大事に抱えていっていただけたら、桜良も喜ぶと思います。
高杉 切なくて、温かい映画です。キャラクターたちのいろんな感情があるので、すべてとは言わないまでも読み解いてほしいなと思います。僕が全力を注いだ、この作品を何度でも観ていただけたらうれしいです。