劇場アニメ「君の膵臓をたべたい」|高杉真宙×Lynnが振り返る「一瞬一瞬を大事にしなきゃ」と気付くまでの10カ月

劇場アニメ「君の膵臓をたべたい」のBlu-ray / DVDが発売された。住野よるのベストセラー小説を原作とした本作は、膵臓の病気を抱えた高校生・山内桜良と同級生「僕」の関係を描いた青春ドラマ。「僕」が桜良の闘病日記を見つけたところから物語は展開される。

これを記念しコミックナタリーでは、「僕」役の高杉真宙と桜良役のLynnにインタビューを実施。「君の膵臓をたべたい」のキーアイテム「共病日記」にちなみ、本作の思い出を時系列で聞いた。出演が決まってから、アニメが公開された2018年9月1日までの約10カ月。声優初挑戦の高杉と、劇場アニメでメインヒロインを務めるのは初めてというLynnが、どのような思いで本作に挑んだのかを明かす。

取材・文 / 西村萌 撮影 / 須田卓馬

初声優の責任はかなり感じてました(高杉)

高杉真宙

──おふたりの出演が決まったのは、2017年11月だそうですね。

高杉真宙 1年5カ月前ですね。そんなに時間が経ってたことにびっくりです。

Lynn うん、あっという間でしたね。

──高杉さんは本作が声優初挑戦でしたよね。ご自宅でも、セリフをかなり練習されたとか。

高杉 そうですね。声の仕事も初めてなのに、主演ということで責任はかなり感じていたので。家で練習するのが絶対に普通だとは思うんですけど、どう練習したらいいかわからないまま時間が進んでいった部分もありました。自分なりに台本のト書きから想像して、体の動きをつけながらセリフを言ってみたりはしましたね。

──高杉さんはアニメ好きを公言されていますが、「僕」を演じるにあたってイメージされた声優さんはいらっしゃるんですか?

高杉 そんな、恐れ多くて……。実を言うと「僕」は静かな役柄なので、ボソボソしゃべるキャラクターが参考になるかなと思っていろいろ探してみたりはしたんですけど。でも具体的な名前とかは恐縮すぎて口に出せないですね。……なんか、変な汗かいちゃいました(笑)。

──これ以上は聞かないでおきます(笑)。一方の桜良役はオーディションで決まったそうですが、Lynnさんはどのような気持ちで臨まれたのでしょうか。

Lynn

Lynn 私が最初に「君の膵臓をたべたい」という作品に触れたのは実写映画だったんですが、その中ですごく生き生きとキラキラしている桜良に憧れてしまって。いつも笑顔でみんなを明るくする女の子。私とは、正反対だと思ってるので(笑)。だからこそ、桜良を演じてみたいという気持ちがありました。何より声優として、このような長編アニメーションにメインキャストとして出演させていただくのは目標の1つでもあったので。それが素敵だなと感じた作品だったら、なおうれしいなと思ってオーディションにはけっこうな気合いを入れて行きました。

──出演が決まって、劇場アニメでメインヒロインを演じるというプレッシャーは?

Lynn いやあ、ね! めちゃめちゃありました(笑)。原作小説のファンの方がたくさんいらっしゃいますし、自分でもどうしても実写と比べてしまうところも正直ありました。しかも主に「僕」と桜良のやりとりでストーリーが展開していくので、たぶん私の芝居ひとつで作品自体の印象が変わってしまうんだろうなと考えていて。だけど役に選んでいただいたからには、私が思う桜良を演じるしかないなという心構えでしたね。

「きっとこれはかわいい!」っていう強い気持ちで(Lynn)

──ではアフレコ初日についてお伺いしていこうと思いますが、現場の雰囲気はいかがでしたか?

高杉 ただただ緊張してました。

Lynn それを私は静かに見守るというスタンスで(笑)。

高杉 (笑)。

「君の膵臓をたべたい」より。左から桜良と「僕」。

Lynn 事前にテストアフレコがあったんですが、そのときは私もすごく緊張していましたね。でもアフレコ初日になるともう桜良のマインドになっていたので、実際にキャストの皆さんと掛け合いできるのが楽しみで仕方なかったです。高杉さんは、ひたすら台本に真摯に向き合ってるという印象でしたね。

高杉真宙

高杉 僕は声優の経験もないですし、アフレコというのも見たことがない状況で。この場で自分がどれぐらいできるか、どんなふうにできるかがわからなかったんです。やっぱりアニメは自分の夢見ていた世界なので、できる限り手を尽くしたくって。なんて言ったらいいのかわかんないんですけど、台本以外のものをあまり自分に入れたくなかったんです。何かを入れると、何かを失う気がするんですよね。だから、なかなか誰ともお話できなかったというのがあります。

──演技については、どのような意気込みで挑まれましたか?

Lynn 自宅でのリハは、たぶん今までのどの作品よりも時間をかけてました。でも、いくら練習しても不安は残っていて。

高杉 うんうん。

Lynn 明け方の3時、4時くらいになって、「10時からアフレコ始まるから、もう寝なきゃ!」みたいな。でもこの作品は「僕」と桜良の掛け合いがメインなので、もう現場に行って高杉さんとのお芝居で自然に生まれてくるものを大事にしよう、と。あとは、いかに桜良をかわいく演じられるかというのが私の中での課題でした。桜良のあったかさとか朗らかなかわいらしさ、みんなに好かれる女の子にするにはどう演じたらいいかなというのを考えましたね。

──具体的に、桜良をかわいく演じるためにどのようなことを意識されましたか?

Lynn

Lynn 常に口角を上げながら話したり、語尾の収め方にこだわったり。ちょっとした技術的な部分は、自分でも今までやってこなかったものを研究して作っていきました。あと、明るく元気な桜良ですけど、時折本当の心の内を垣間見せるような演技を意識しました。そのほうがより魅力的に見えて、彼女にみんなが引き込まれるかなと思って。……とかいろいろ言っちゃいましたけど、私が「きっとこれはかわいい!」っていう強い気持ちで押し切った感じです(笑)。

──あはは(笑)。高杉さんはどうですか?

高杉 プロの皆さんの中に自分がお邪魔するという意識があったので、その1日で、数時間数分で何を得られるかなと思ってました。キャラクターを理解するのは台本をもらってから本番までにしているとして、現場で「僕」を自分のものにしていく時間は短くしていかなきゃなという気持ちでしたね。

──ストイックですね。

高杉 そう思うぐらい、緊張してたんです(笑)。