「薬屋のひとりごと」の日向夏と「兄友」の赤瓦もどむの共演!「神さま学校の落ちこぼれ」|ヒットメーカー同士がともに作り上げた懐かしくも新しい少女マンガ、その企画の裏側に迫る

花とゆめ(白泉社)で、新連載「神さま学校の落ちこぼれ」がスタートした。シリーズ累計発行部数が1300万部を突破しているライトノベル「薬屋のひとりごと」の日向夏と、横浜流星主演で実写映画化とドラマ化を果たした「兄友」の赤瓦もどむのタッグによる少女マンガだ。日向夏の小説のコミカライズではなく、日向夏のプロットをベースに作家同士がアイデアを出しつつ練り上げる方式で制作しているという。

コミックナタリーでは、このヒットメーカー同士が手を組んだ新連載の魅力をいち早く読者にお届けすべく、日向夏と赤瓦へインタビューを行った。そこで見えてきたのはお互いへのリスペクトと花ゆめ愛。そして、インタビューの最後にはとある編集者も飛び入りで参加。企画の経緯から2人の制作手法、「神さま学校の落ちこぼれ」への思いまで、日向夏と赤瓦にじっくりと語り合ってもらった。

取材・文 / 七夜なぎ

「少女マンガを描いてみないかい」から始まった

──「薬屋のひとりごと」の日向夏先生と、「兄友」「ラブ・ミー・ぽんぽこ!」の赤瓦先生のタッグに驚いたファンも多かったのではないでしょうか。どういった経緯でこの連載の企画は生まれたのでしょうか。

日向夏「薬屋のひとりごと」1巻

日向夏 「せっかくだし、少女マンガを描いてみないかい? 花とゆめで」……と、ある編集さんから話をもらったのがきっかけでした。花とゆめは昔から読んでいる雑誌で、個人的に「薬屋のひとりごと」は花とゆめ系なんじゃないかなと思っていたくらいです(笑)。原作担当として関われることには「いいな」と思いましたし、自分に合っているのかもしれないとチャレンジをさせていただくことを決めました。

赤瓦もどむ 私がお話を聞いたのは、「ぽんぽこ!」が終わることが決まったタイミング。初めて聞いたときの感想は「私でいいのかな……!」でした(笑)。もともと「薬屋のひとりごと」が大好きだったのもあり、「もっとすごいマンガ家さんのほうがいいのでは!?」と……。

日向夏 いえいえ、こちらがむしろ「いいのかな……!?」でしたよ。前々から「ぽんぽこ!」を読んでいたので。

赤瓦 ありがとうございます!

赤瓦もどむ「兄友」1巻
赤瓦もどむ「ラブ・ミー・ぽんぽこ!」1巻

日向夏 心配だったのは、赤瓦先生はコミカライズをご担当された経験もありますが(「龍ヶ嬢七々々の埋蔵金」)、オリジナル作品をバリバリ描いていらっしゃるので、やっぱり次の作品もオリジナルを描きたいのではないかなということでした。ただ、今回はもともとある小説のコミカライズではなく、赤瓦先生のアイデアをどんどん取り入れていきながら、チームみんなで「原作」というように作っていける作品なので、赤瓦先生の作風のよさを殺すことなくご一緒できるのかなと思いました。

赤瓦 かなりのびのび描かせてもらっていて、「殺す」なんてとんでもないです……(笑)。一緒に作品を作り上げることができて光栄です。

──本作は、原作を日向夏先生、マンガを赤瓦先生が担当しています。このような原作ものは作家さんたちによって作り方がさまざまだと思いますが、本作はどのようにして作られているんでしょうか?

日向夏 流れとしては、まずプロットを提出して、赤瓦先生チームからフィードバックをもらいます。さらにそこからセリフと最低限の地の文で構成されたシナリオをお渡しして、あとはお任せしています。餅は餅屋ですからね……! フィードバックの段階で赤瓦先生たちがキャラクターや展開に関するさまざまな意見やアイデアをくださいますし、マンガにする段階でさらに赤瓦先生が補ってくださっているので、先ほどお話したように「みんなで原作」という作り方をしていると思います。

「神さま学校」は2000年代の花ゆめのイメージです

──「原作」「作画」ではなく、皆さんで作り上げているんですね。「神さま学校」のお話ができるまでの経緯を教えてください。

日向夏 私はジャンルのど真ん中のものから少しズラして書くクセがあるので、初めてお仕事する編集さんや媒体では、まずいろいろなプロットを出してみて、気に入ってもらったもので進めていくという形式をとることが多いです。割と「数撃ちゃ当たる」と言いますか(笑)。今回も最初に3つほどプロットを出して、選んでもらったのが「神さま学校」だったんですよね。

赤瓦 私はほかの2つの作品もすごく好きでした! ただ、当時の花とゆめ編集長のイチオシだったこともあり、「神さま学校」を描かせていただくことになりまして。この作品を初めて読んだとき、少年マンガらしさも感じたんです。

「神さま学校の落ちこぼれ」第1話より。

日向夏 最初に出したプロット案はそれぞれさまざまな年代の花とゆめから作ってみたのですが、「神さま学校」は2000年代のイメージですね。

──2000年代の花とゆめというと、「学園アリス」「神様はじめました」「俺様ティーチャー」といった名作タイトルが思い浮かびます。なぜ年代のイメージから作ってみたのでしょうか。

日向夏 今挙がった作品はどれも大好きです(笑)。「今の花とゆめらしさ」を目指すと、現役でずっと描いていらっしゃる先生方にはとてもかなわない。2000年代の「自分が読んでいて面白かった花とゆめ」のモチーフを抽出しつつ、自分なりに今の時代らしさや、現代の生活様式をプラスするとちょうどいいかな……と思ってできたのが「神さま学校」です。

赤瓦 1話のラストで、ナギは“神さま学校”に入学することになります。学校に集まったさまざまな能力者たちによって、事件や出会いが生まれるお話になっていきます。そのお話の主軸になっている学園ものの感じがどことなく少年マンガらしさもあって、「これが少女マンガ誌に載るんだ!」と面白く感じました。私に描けるだろうか……という緊張感はありましたが(笑)、ワクワクとした気持ちにもなりました。

日向夏 花とゆめには、「少女マンガでコレをやってもいいんだ!」という名作がたくさんありますよね。ファンタジー要素もあって、ある種の「冒険」らしさがあるのが花とゆめらしさだと感じています。それが少年マンガらしさとも近いというか、少年マンガの読者とも親和性が高いのかなというイメージがあります。