「神さま学校の落ちこぼれ」の最新11巻が発売された。同作は「薬屋のひとりごと」の日向夏と「兄友」の赤瓦もどむが、共同制作という形でタッグを組んだ“スピリチュアルスクールドラマ”。2021年より花とゆめ(白泉社)で連載されており、5月27日には小説版最新5巻が星海社より刊行される。
コミックナタリーでは最新刊の発売を記念して、日向夏と赤瓦の対談をセッティング。連載開始から約4年、お互いの印象で変わったことがあったか、あの物語の展開はどのように決まったのかといった制作裏話のほか、小説5巻から取り入れられるマンガと小説のルート分岐についても話を聞いた。またコミックナタリーで展開している神通力診断も、2人に実際に体験してもらった。果たしてその結果は……?
取材・文 / 岸野恵加
「神さま学校の落ちこぼれ」作品紹介
舞台は神通力を持つ人間を“ヒミコ”、その中でも国家資格を持つヒミコを“神さま”と呼ぶ現代日本。主人公の少女・ナギは、ひょんなことからヒミコたちが集う“神さま学校”に進学することに。神さま・月読命にナギはヒミコだと推薦されたものの、神通力のない彼女は入学早々落ちこぼれの道をまっしぐら。しかし、実家の神社の活気を取り戻すためにも、ナギは超難関の国家資格である神さまを目指すことを決意する。
キャラクター紹介
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陽美谷ナギ
実家が神社の少女。ツクヨミ(月読命)の推薦で“神さま学校”こと惟神學園に入学することに。神通力は不明ながら、実家の寂れた神社に活気を取り戻すために神さまを目指している。双子の兄・たけるがいる。
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ツクヨミ(月読命)
三貴人のうちの1人である月読命の名を授けられた高位の神さま。その待遇は政治家以上にVIP待遇を受けるほど。ナギに眠る力に気づき、神さま学校への入学を推薦した。惟神學園を卒業したばかりの18歳だが、その大人びた顔立ちから年上にみられることもしばしば。神通力は瞬間移動、観念動力などを持つ。
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陽美谷たける
ナギの双子の兄。かつて祖母とともに事故に巻き込まれ、以来引きこもりになったとされていたが、実は昔ながらの神様のあり方を信仰する“超自然学派”に誘拐されていたことが判明した。神通力を駆使してぬいぐるみを媒介にナギとコミュニケーションを取っている。
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田中モナカ
ナギの同級生。學園に編入してきたナギのお世話係を務めている。成績は優秀で、さっぱりとした性格。神通力は瞬間移動。
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美馬みるる
ナギの同級生。神通力を持つため、幼い頃に親から隔離されて育った過去を持つ。そのため漢字が読めず、いつもナギに代読を頼んでいる。メンタルは強靭。神通力は精神感応と残留思念読取。
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逢坂サガミ
ナギの同級生。モナカのことが好きな“単細胞男子”。実家はお寺。神通力は強い念動力と弱い発火能力の2つを持つ複合能力者だ。
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江道トータ
ナギの同級生。名門神社の息子であり、成績は学年1位の優秀者だが、無気力かつ嫌味な言動で人からは嫌われがち。ナギのことは認めている様子を見せる。神通力は透視能力。
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夜刀神
ノリが軽い神さま。アバンギャルドな見た目だが、実はかなりの努力家。紆余曲折あり、ナギのクラスの副担任になる。神通力は、瞬間移動を応用させた引寄能力と転送能力。
「付き人を出しましょう」と言われなければ、ホシノは生まれていなかった
──コミックナタリーでは「神さま学校の落ちこぼれ」の連載開始時にもインタビューをさせていただきましたが(参照:「薬屋のひとりごと」の日向夏×「兄友」の赤瓦もどむ、ヒットメーカー同士がタッグを組んだ少女マンガが始動! その企画の裏側に迫る)、当時は制作スタイルについて、小説のコミカライズではなく日向夏先生のプロットをベースとして、おふたりでアイデアを出して完成させているとお話ししていました。現在もそこは変わりないでしょうか?
赤瓦もどむ 大まかなストーリーの流れを打ち合わせで決めているところは同じですね。ただ今後、小説の5巻からマンガと小説でストーリー展開が分岐していくこともあって、少しずつ変わってきた部分はあります。
日向夏 今は小説のほうがだいぶストーリーが先に進んでいるんです。以前は小説は年1回の刊行ペースだったんですが、どこかの編集さんが「年2回出しましょう」と言い始めて……。
──前回の対談にも登場した、星海社の太田(克史)さんですね(笑)。4年間共同作業を続けてきて、お互いの印象で変化した部分はありますか?
赤瓦 私は最初の印象とほぼ変わらないですね。
日向夏 私もそうかな。あ、赤瓦さんはやっぱりしゃぶしゃぶが好きなんだな、と思うようにはなりました。
──しゃぶしゃぶ……?
赤瓦 白泉社のパーティで「なかなかお会いできないな。やっぱり人が多いから探せないかな」と思っていたら、私と日向夏先生がしゃぶしゃぶの列でちょうど前後に並んでいたんです(笑)。
日向夏 あんなにたくさんの人がいる中で、まさか同じメニューに同じタイミングで引き寄せられているとは……と(笑)。
──息ぴったりですね(笑)。クリエイターとして、お互いの尊敬する部分を挙げるとすると?
赤瓦 日向夏先生は、打ち合わせで「ここはどう変えましょうか」と相談した際に、代案をポンポン出してくれるんですよ。本当に頭の回転が速いんだなと惚れ惚れしますし、尊敬しています。
日向夏 ありがとうございます。赤瓦さんは、本当にいいマンガ家さんなんですよ! 「こんな方に描いてもらえるなんて私は幸せ者だな」と思っています。私が覚えていないような細かい部分まで突っ込んで聞いてくれるので、いつも「さすがだな……」と思いながら、資料を調べ直しています(笑)。
赤瓦 本当ですか? どういう部分だろう……(笑)。
日向夏 祭壇や櫓の構造、神社の境内図など、細かく聞いてくださいますよね。そんなときはiPadのお絵描き機能がすごく役に立っていて。普段の私は設定を細かく決めずに書くタイプなので、いつも最低限のイメージを描いて、「あとは赤瓦さんになんとかごまかしてもらおう」と思いながら渡しています(笑)。
赤瓦 お忙しい中、いつも詳細に図解してくださって、感謝が尽きないです……!
──赤瓦先生は、緻密に設定を決め込んで描くタイプですか?
赤瓦 うーん、どうでしょう。少なくとも、「神さま学校」に関しては日向夏先生が全部決めてくださっているし、私が設定を作り込むことはないですね。
日向夏 いやいや、赤瓦さんの意見でいろいろな要素が決まってきたじゃないですか。赤瓦さんが「付き人を出しましょう」と言わなければホシノは生まれていなかったですし、たけるがぬいぐるみで登場したのも赤瓦さんのアイデアです。そして、ざくろのキャラクターイメージは、「陽キャで宝塚っぽい女の子」というキーワードだけ伝えて、あとは赤瓦さんにお任せしました。私は陽キャを書けないので(笑)。
赤瓦 確かにざくろさんは、私のエッセンスが一番効いているキャラクターかもしれないですね。