コミックナタリー PowerPush - 「ボクを包む月の光」日渡早紀インタビュー

「ぼく地球」の名エピソードがドラマCD化

前世の記憶に翻弄される男女7人を描き、1987年に連載を開始するやいなや一大センセーションを巻き起こした「ぼくの地球を守って」。その次世代編「ボクを包む月の光」の最新14巻には、ドラマCDが付属する限定版も用意され、紫苑(シオン)とラズロ、キャーを中心とする「ぼく地球(タマ)」の名エピソードが音声化された。

コミックナタリーではこの機に作者・日渡早紀を直撃。7年にわたり連載された「ぼく地球」から今年で連載11年目を数える「ボク月」まで、長期にわたって同シリーズを描き続ける心境を尋ねた。

取材・文/門倉紫麻

 
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ドラマCDは「大変おいしゅうございました」

──(「ボクを包む月の光」14巻限定版に付属する)ドラマCDのアフレコ現場に行かれたそうですね。

はい。とにかく声優さんはすごい!と思いました。監督さんが、私が来ているからと、全員が出ているシーンをテストとして聞かせてくださったんですよ。「どうですか?」と意見を聞いてくださったので「若干カッコよすぎるかもしれません」とか注文をしましたら、声優さんたちとちょちょっと話をして。やり直したら「まさにそう」というものに変わっていて。一瞬ですよね。なんというか……声の成分を「こんな感じかな」というふうに、調合していく感じなのでしょうか。お客さんに、スパイスを調合しておいしい料理をお出しするのと似ていますよね。その結果、私としては「大変おいしゅうございました」といただきました(笑)。

「ぼくの地球を守って」より、紫苑とラズロ、そして猫のキャー。

──「ぼくの地球を守って」の人気キャラクター、ラズロとキャーが登場するお話を収録することになったのはなぜなのでしょう。

ちょうどいま、「ボク月」でそこを描いているというのもありますが……正直申しますと、経緯はよくわかりません(笑)。でも必然だったのかなあという気もしますね。

──ラズロとキャーは思い入れの深いファンも多いキャラクターだと思うので、CD化はすごく喜ばれていると思います。「ボクを包む月の光」に彼らが登場したときも、反響が大きかったのでは?

私としては……開けちゃいけない箱を開けた気持ちでしたね。

「ボクを包む月の光」13巻より、輪がラズロと出会うシーン。

──単行本13巻の柱で「正直彼らを描くのは勇気要りました(笑)。出来ればいじりたくも無いというのが本音」とおっしゃっていました。

ラズロとキャーは、私にとって“ボスキャラ”なんです。本当に、読者さんの元に送りだしてからひとり歩きして、定着したキャラで。読者さんの心の中に生きているなら、そのままでいたほうがいいんじゃないかなあと思ってしまって。でも、読者さんが見たいと思ってくれているのも伝わってきていたので、描かせていただきました。

作品は、読者さんの鏡なんです

──読者それぞれのラズロやキャーが存在しているのですね。

はい。作品って、鏡みたいなものだと思うんですよ。読んで母のような気持ちになって泣いた、ということは、作家側が母性みたいなものを作品に入れたわけではなくて、読者さんが自分で持っている母性が出てきている、ということです。

──同じ人でも、昔読んだときといまでは感じ方が違ったりしますよね。それも鏡だから、ということでしょうか。

そうですね。そのときそのときの自分が反映されますから。

──作品は、「作家の」鏡だと思っていましたが「読者の」鏡なんですね。

「ぼくの地球を守って」より、亜梨子。

読者ですね。ヒット作が出るというのも、作家が何かすごいことをやっているわけではなくて、読者さんがすごいから。それぞれが作品を読んで、あちこちで「何か」をワーッと出してくれて、それがひとつになって、どんどん膨らんでいくのだと思う。

──「ぼく地球」を描く前からそう思っていらっしゃいましたか?

いえいえ、描きはじめの頃はそんなこと全然わかっていなかったです。描いて描いて……描きながらだんだん、「あ、これってこういうことかな」みたいにわかってくる。「化学反応」が起こるんだなあと。

──それがわかってから、作家として変化はありましたか?

ありましたね。それまでは自分のために描いているところが大きかったんですが……やっぱりマンガはエンターテイメントでなくては、と思うようになりました。読者さんに喜んでもらえる、面白いもの描いてナンボ、と。まずは、自分が描いて面白い、というのが基本なんですけどね。自分が面白くなかったら、ほかの人が楽しめるわけがないので。

──「チョコレートみたいに楽しんでほしい」とも単行本の柱でおっしゃっていましたね。

はい。仕事から帰ってきてひと息つくときに「このチョコ食べよう」と思うみたいに、「これ読もう」と思ってもらえたら嬉しいですね。

日渡早紀「ボクを包む月の光(14)」 / 2014年9月19日発売 / 白泉社
ドラマCD付き初回限定版 / 2106円
通常版 / 463円
作品紹介

輪と亜梨子の息子・蓮は、両親の不思議な能力に囲まれて育つ少年。

ある日彼の前に現れた「守護天使」や、幼なじみのカチコたちとのさまざまな冒険を描く「ぼく地球(タマ)」次世代ストーリー。

初回限定版ドラマCD収録内容

「ぼくの地球を守って」から紫苑(シオン)の子供時代のエピソードをドラマCD化。戦災孤児の紫苑(シオン)が、ラズロとキャーと過ごした日々が紡がれる。収録時間はメインキャスト座談会を含め約60分。

キャスト

紫苑(シオン):沢城みゆき
ラズロ:平田広明
キャー:小桜エツコ

日渡早紀(ヒワタリサキ)
日渡早紀

神奈川県出身。1982年、花とゆめ(白泉社)で「魔法使いは知っている」でデビュー。代表作は「ぼくの地球を守って」。そのほかにも「早紀ちゃんシリーズ」「アクマくんシリーズ」などさまざまな作品で人気を博す。2003年より、別冊花とゆめ(白泉社)で「ぼくの地球を守って」の続編「ボクを包む月の光」を連載中。