日高万里デビュー25周年記念インタビュー|叫びたい思い、伝えたい気持ちをすべてマンガに

デビューから5年ごとにちょっと大変

──改めて、日高さんご自身についてもお話を伺えればと思います。25周年を迎え、今はどんなお気持ちですか?

なんでしょう、いろいろあったなあって(笑)。あまり明るい話ではないんですが、デビュー5年目に眠れなくなり、10年目に心がガタガタになって体重がガッと落ちたり反対にガッと増えたり、15年目に胃潰瘍になり、20年目に弾発指になって描けなくなってしまったんです。5年ごとにちょっと大変(笑)。

──その法則でいくと、今も危険な気がするので気を付けてください……。

今年はなんだろう……あ、コロナのせいでサイン会が企画できませんました! そんな25年なので、なんて答えたらいいやら……(笑)。あまり面白いことも言えずすみません。でも、読んでくださっている方々や編集さんたちにもう感謝しかない25年です。

「V・B・ローズ」カラーイラスト

──そもそも、日高さんがマンガ家を志したきっかけはなんだったんでしょうか?

小学生くらいのときにマンガ家って職業があるのを知ってすぐに、マンガ家になりたいなって。お絵かきやお話を作るのが好きだったし、自分の思っていることを伝えるのが苦手だったのでマンガだったら伝えられるな、と。

──デビューは19歳でしたね。花とゆめを投稿先に選んだ理由は?

好きなマンガ、好きな先生が多かったからですね。それに花ゆめって、恋愛ものやファンタジーとさまざまなジャンルの作品があるじゃないですか。いろいろ描けるかなと思って投稿してみたんですが、己が描ける……しかも楽しく描けるジャンルが普通の学園恋愛ものだけだった(笑)。それでも受け入れてくれる白泉社にはお礼を言いたいですね。

「世界でいちばん大嫌い」より。ページ上部の万葉と新の黒髪に注目。

──ご自身の絵で特徴的だと思う部分はどこですか?

おそらく、目? 昔来てくれたアシスタントさんに「日高さんの絵って、目からビーム出そうね」って。

──確かに目力が強いかもしれません、虹彩の模様までちゃんと描かれているイメージです。私は黒髪のベタの描き方が昔から印象的で……。筆ペンで一本一本髪を描いてるんでしょうか?

そうですそうです。よく「ホワイトを使ってるの?」と聞かれるんですけど、私はホワイトが一切使えなくて。

──え、じゃあ黒髪のツヤの部分もホワイトじゃなくて筆ペンで?

はい。今は握力がなくてその描き方はできないんですが。ツヤベタはそれこそ初代の担当さんに「ツヤベタが下手だからどうにかして」って言われて、ダメ出しされると「何くそ!」と思えるのでがんばれました。

山田南平先生、マジですごいですよ!

──今はデジタルに移行しているんでしょうか?

ええ、CLIP STUDIOですね。「天使」を休載している間、1人だったのでデジタルじゃなきゃ無理だなと。クリスタ、最初は全然使えなかったんですけど、山田南平先生に教えてもらったら使えるようになっちゃったんですよ。

──お会いして教わったんですか?

いえ、LINEで。

──LINEで!? すごく教え上手なんですね!

山田先生、マジですごいですよ! クリスタでマンガを仕上げられるようになったのは山田先生が「こういうふうにやればいいよ」「これ使うといいよ」って教えてくださったおかげなので。

「天使1/2方程式」カラーイラスト

──日高さんのブログにも山田さんのブログにもお互いの話題がたまにあって、仲良しなんだなと思っていたのですが、昔からの仲なんでしょうか?

いえ、実は連絡を取り合うようになったのはそんなに前ではなく、ここ2年なんです。もちろん昔から大好きな先生で、かなり昔に白泉社の新年パーティーでご挨拶をさせてもらったりはしてたんですけど。私が2年前に「紅茶王子」にぴったりな満月のペンライトを見つけて、ぜひ山田先生にお渡ししたくて。紅茶にペカっと照らすと、水面に満月が映し出されるってペンライトなんですが。

──紅茶王子を呼び出せそうですね!

そうなんですよ! 紅茶王子ごっこをしていただきたいけど渡す手立てがない……と思っていたら、先生の単行本のおまけページに「担当のHさん」と書いてあって。あ、「V・B・ローズ」のときに担当してくれたHさんだ!と。

──今ちょうどそこに座ってらっしゃいますね。

そうなんです、今日もインタビューを見てくれていますが、まさに2年前にまた担当になってくれて(笑)。ちょうど担当が変わるのでご挨拶に東京に行って、そのときに「ぜひ山田さんに渡してください」ってペンライトをお預けしたら、山田さんがLINEで遊んでくれるようになりました。Hさんのことはキューピッドって呼んでます。

──日高さんと山田さんのキューピッド(笑)。そう言えば「恋するMOON DOG」にも満月のペンライトが出てきますね。「恋犬」も面白いですよね。

本当にいいですよねー! 「久美子&真吾シリーズ」も大好き!

ほんっとに!ありがとうございます!

──さて25周年ということで、今後作家としてやりたいことをおうかがいできますか?

作家としてやりたいこと……。作家として……やりたいこと……健康第一で描き続けられたら幸せです!

──おっしゃるとおりですね。描き続けるにも健康じゃないと。

ええ、年々体力がガタ落ちしているのを実感するので。少しでも長く描き続けるためにも、健康に気を付けたいです。

──ネームに詰まると次の物語を思い付くとお話がありましたが、「天使」の次も構想があるんでしょうか?

実はあります。タイトルも決まっていて。自分が学生時代とかに経験したことをまたぶっ込んでる感じの話になると思います。相変わらず、高校生を描く予定です。なかなか心が大人になりきれない……。今時の高校生がわからないので、古かったらどうしようって心配はすごくあるのですが。

──楽しみにしています。最後に、ファンにメッセージをお願いします。

間が空いたりしてお待たせしてしまっていますが、それでも読んでくださってる方に本当に感謝しています。こんな感じでマンガを描いているんですが、これからも読んでいただけたら本当にうれしいです。皆さんのおかげで今の自分があります。ほんっとに!ありがとうございます!