花とゆめ創刊45周年特集 第7回 千歳四季インタビュー|私と同じものを好きな人がいてくれる!ファンタジーの世界を描く醍醐味

竜を好きでいてくれる人が、私のほかにもいてくれたのかな

ユリウスの人間時の姿。

──本作の軸になっているルクルとユリウスの関係は、近年人気のある“少女と人外”に近いかと思います。人外ものもお好きだったのでしょうか。

人外というよりは「美女と野獣」「オペラ座の怪人」「ノートルダムの鐘」「ハウルの動く城」など、「見た目ではなく心を好きになる・惹かれる」というものが好きなんです。「蒼竜」でも本当は100%竜と少女の話を描こうと思ったのですが、当時の担当さんに「人間にしてくれ」と強く言われてユリウスは元人間になったんです。だから正確には「蒼竜」は“人外もの”とは言わないかもしれませんね。

──3巻くらいまではルクルとユリウスの交流を中心に描かれていましたが、レギオンやアデルの登場から、どんどん物語のスケールが大きくなっていきます。どの辺りまで最初から描こうと決めていたのでしょうか。

「蒼竜」は読み切りから始まって、短期集中連載をやって打ち切りになり、連載再開という流れだったので、読み切りに当たる1巻の1話目、1巻2話目が集中連載の1話、2巻1話目が連載再開の1話目と、実は1話が3回存在します。連載再開時にも「2巻まで」とざっくり聞いていたので、そこまではユリウスとルクル中心の話で考えていました。でも世界観の設定やほかの竜のエピソードは読み切りのときからいろいろ考えていたので、描く機会が増えていくたびに少しずつ出していった感じです。

──確かに1巻発売時は「続刊の予定がない中で、ファンの方からの支持を受けて続きを描くことができた」と単行本のおまけページにも書かれていましたね。ご自身は、本作のどんな部分が読者に支持されたと感じますか?

「蒼竜の側用人」カラーイラスト

竜を好きでいてくれる人が私のほかにもいてくれたのかな……。エスニックで竜がいる世界のお話を読みたいと先ほども言いましたが、私以外にもそう思ってくれている人がいてくれたのかな……?と思います。

──2018年4月より、ザ花とゆめから花とゆめ本誌へ連載移籍しました。季刊誌から隔週誌に変わったことにより苦労はありましたか?

ザ花のときは1話50ページや70ページという、連載にしては長いページで描いていたので、本誌の1話30ページに慣れるまでは少し時間がかかりました。あと私がザ花で連載していたときは雑誌がA5サイズだったので、B5サイズの本誌に移ったときは「紙が大きい!」と思いました(笑)。なので、本誌に移ってきてすぐは本当にいろんなことを試行錯誤しましたね。

──隔週での連載は大変だったと思うのですが、何かリフレッシュ方法などありましたか?

最近は作業に詰まったりするとランニングしたりしてます。体を動かすと頭がすっきりして気持ちいいです。

声優さんって本当にすごい……!

──「蒼竜」を振り返ってみて、特に印象に残っているシーンやエピソードを教えてください。

「蒼竜の側用人」7話より。

まずはルクルが実家に帰る7話。このお話を好きといってくれる方が多くてうれしかったです。「ルクルのお父さんが厳しいだけの人じゃなくてよかった」と感想をもらえて、描きたいことがちゃんと伝わっていると思えたお話でした。ハイネとエルドランテの回想の19話も、竜と人間の絆を描きたいと思っていたものが初めてここで描けたので気に入っています。あとはユリウスが自分の気持ちと向き合う25話もずっと描きたかったエピソードでした。ユリウスの過去は、読み切りの頃から設定としてはイメージしていたので。

──お気に入りのキャラクターはいますか?

見た目ではステラが、竜も人型も両方お気に入りです。描いていて楽しかったのはステラと一緒に出てくるアデルですね。担当さんから「千歳さんは冗談を言うようなキャラクターをあんまり描かないから、新キャラを描くときは冗談を言えそうなキャラを描いてみるのはどうか」と言われて「なるほど」と思いました(笑)。

──あはは(笑)。ちなみにユリウスの竜の姿と人間の姿、どちらが人気があるんでしょうか?

お手紙やTwitterのリプをいただいたのを見ると、ユリウスの姿の人気は本当に半々ぐらいな気がしますね。

──昨年は、水樹奈々さん、中村悠一さん、逢坂良太さん出演によるドラマCDも制作されました。

まさかこんな豪華な方々に演じていただけるとは思わず、決まったときは本当にドキドキしました。アフレコ現場に行かせていただいたのですが、声優さんたちの声のエネルギーがすごくて、本当に幸運な経験をさせていただいたと思っています。水樹さんのあててくださったルクルの声の高さやしゃべり方が、私の中のルクルのイメージそのままだったので本当にビックリしました。声優さんって本当にすごい……! 本当にありがとうございます。

──「蒼竜の側用人」は8月20日発売の花とゆめ18号にて最終回を迎えたばかりですが、もし次回作の構想があれば教えて下さい。

ヨーロッパ系のファンタジーも描いてみたいし、現代物の年の差とかも描いてみたいです。

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小型の竜ステラが人型に! 竜の研究者アデルの正体とは!? そして、アズファレオ王国が謎の男に乗っ取られてしまい……。

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「蒼竜の側用人」新シリーズ、10月25日発売のザ花とゆめファンタジーより連載スタート

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千歳四季の新作読み切り「神の子らの懺悔(リグレット)」が登場。

千歳四季(チトセシキ)
千歳四季
2013年、ザ花とゆめ(白泉社)にて「だからキスして」でデビュー。同年より花とゆめonlineにて「首の姫と首なし騎士」のコミカライズ連載がスタート。2015年に花とゆめ(白泉社)にて「蒼竜の側用人」の読み切りを発表し、好評を博す。同作は2016年より連載化し、2019年に全9巻で完結。ドラマCD化も果たし、水樹奈々、中村悠一らが出演した。

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2019年11月20日更新