コミックナタリー Power Push - 弐瓶勉×「ゴースト・イン・ザ・シェル」

R・サンダース監督と同じく、押井守版「攻殻機動隊」直撃世代! 弐瓶勉が語る“マンガを映像化すること”

ルパート・サンダース監督は僕と同じ歳、押井さんのアニメの直撃世代

──1995年に公開された、押井守監督の映画「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」はいかがでしたか?

「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」より草薙素子。監督:押井守 ©1995 士郎正宗/講談社・バンダイビジュアル・MANGA ENTERTAINMENT

すごく理想的なアニメ化だと思いました。いい意味で地味になったというか、しっかりと地に足のついた演出でしたね。キャラクターも、デザインもカッコいいし。自分がマンガ家になりたての頃に公開された作品なので、この映画にもかなり影響を受けています。

──アニメーションだとキャラクターが動くうえに声や音も加わるので、わかりやすくなりますよね。

「シドニア」のマンガも、戦闘シーンとか絶対動いてるほうがいいだろうなと思いながら描いていました。もちろん、できるだけ止まった絵でも面白く見えるようにはしていますが。

──その「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」をハリウッドで実写映画化した「ゴースト・イン・ザ・シェル」では、少佐や公安9課のメンバー、そしてこの作品に欠かせないサイバー空間、義体化や光学迷彩などの技術がどんなふうに描かれるのか非常に楽しみなところです。

今度の映画は、押井さんの映画版を実写化したものなんですか?

──まだ内容に関しては詳しい情報が公開されていないのですが、世界観としては押井監督版を基に神山健治監督の「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」の要素もミックスされているようです。せっかくですので、ここで「ゴースト・イン・ザ・シェル」最新予告編をご覧になっていただいてもよろしいですか?

ええ、ぜひ観たいです。

「ゴースト・イン・ザ・シェル」より。 ©MMXVI Paramount Pictures and Storyteller Distribution Co. All rights Reserved.

おおっ、映像もいい感じですね! 高層ビルからのダイブとか、押井さん版のアニメそのままのシーンもいっぱいある。「マトリックス」は「攻殻機動隊」からかなり影響を受けていますが、そのことを知らない人も「このシーンは本当は『攻殻機動隊』がオリジナルなんだ」とわかるでしょうね。

──原作へのリスペクトを感じるとともに、ハリウッドの本気度が伝わってくる映像です。主演のスカーレット・ヨハンソンはいかがでしたか?

いいと思います。スカーレット・ヨハンソンの役名は草薙素子なんですか?

──クレジット表記では“少佐”なので、もしかすると素子ではないかもしれないです。スカーレット・ヨハンソンは「LUCY/ルーシー」などでもアクションを披露していますし、「her/世界でひとつの彼女」 では人工知能型OS・サマンサというキャラクターでした。

「her/世界でひとつの彼女」 は面白かったですね。好きな作品です。

──「攻殻機動隊」の世界ともリンクするようなラストでした。スカーレット・ヨハンソンが「ゴースト・イン・ザ・シェル」でどのような演技を見せてくれるのか注目ですね。

「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」よりバトー。監督:押井守 ©1995 士郎正宗/講談社・バンダイビジュアル・MANGA ENTERTAINMENT

今回のハリウッド版のルパート・サンダース監督は僕と同じ歳なので、押井さんのアニメの直撃世代だと思うんですよ。アメリカでもかなり話題になったから当時きっと観ているだろうし(※ビルボード・ビデオセールスで邦画史上初の1位を獲得)。

──おっしゃる通り、サンダース監督は「攻殻機動隊」の大ファンで、昨年11月に来日した際は「95年に押井さんの作品を観たんだけど、あまりにも先取りしていて、先見がある作品だった」と語っています。

だったら、作品への愛はあると思うので期待できますね。

アニメには僕のほうからお願いして入れてもらいました

──さて、弐瓶さんの作品についても伺っていければと思います。遅ればせながら「シドニアの騎士」の第47回星雲賞コミック部門受賞おめでとうございます。テレビアニメで第2期まで放映され、第1期を再構成した劇場版も公開されましたが、弐瓶さんは映像化の際、ここは守ってほしいとお願いしていることはありますか?

「シドニアの騎士」イラスト。

「シドニア」のアニメは途中から脚本の打ち合わせなど、かなり参加させてもらったんです。途中までは担当編集者を介してできあがってきた脚本をチェックしていたんですけど、メールのやり取りなどでどうしても時間がかかってしまうし、ニュアンスが伝わりづらいこともあるので、僕のほうからお願いして途中から入れてもらいました。みなさん年齢も近いし、すぐに意気投合しました。

──映像化の場合、原作と設定を変えることが多いですね。

1話30分の尺で毎回見せ場を作って面白くしなきゃいけないから、原作と変えなきゃいけないところはあるとは思うんですけど、「ここを変えるなら、こうしなきゃ後でつじつまが合わない」ってことも出てくるじゃないですか。そういう話を直接話すことができたのでよかったです。

──原作者との意思疎通が密だったからこそ、あれだけ素晴らしいアニメになったと。

もちろんマンガの原稿もあるし、編集者的には僕の「シドニア」でのやり方はあまり薦めたくないでしょうけど、会わずに文句だけ言ってる感じになっちゃうのも嫌じゃないですか。直接会って話すと、そういうこともなくなるからいいと思うんです。マンガのセリフひとつとっても、いろいろ試行錯誤したうえで書いたセリフなんですけど、それをまたゼロからアニメスタッフが考え直していると俺が1回検討した結果やめたセリフを採用しようとしちゃうこともあるんです。直接やり取りができたことが、今回同じスタッフで作った「BLAME!」の映画化にもつながっていると思います。

「ゴースト・イン・ザ・シェル」特集
映画「ゴースト・イン・ザ・シェル」2017年4月7日全国公開
映画「ゴースト・イン・ザ・シェル」
ストーリー

電脳技術が発達し、人々が義体(サイボーグ)化を選ぶようになった近未来。脳以外は全身義体の“少佐”が率いるエリート捜査部隊は、ハンカ・ロボティックス社の推し進めるサイバーテクノロジーを狙うテロ組織と対峙する。上司の荒巻大輔や片腕的存在のバトーと協力し、捜査を進めていく少佐。やがて事件は少佐の脳にわずかに残された過去の記憶へとつながり、彼女の存在を揺るがす事態に発展していく。

スタッフ / キャスト

監督:ルパート・サンダース

原作:士郎正宗「攻殻機動隊」

出演:スカーレット・ヨハンソン、ビートたけし、ジュリエット・ビノシュ、マイケル・ピット、ピルウ・アスベック、桃井かおりほか

「人形の国」第1話掲載「月刊少年シリウス4月号」 / 発売中 / 講談社
「月刊少年シリウス4月号」
雑誌 750円
Kindle版 750円
弐瓶勉(ニヘイツトム)
弐瓶勉

1971年福島県生まれ。1995年に「BLAME」がアフタヌーン四季賞で谷口ジロー特別賞を受賞。高橋ツトムのアシスタントを務めた後、1997年より月刊アフタヌーン(講談社)で「BLAME!」の連載を開始。セリフが極端に少ない作風と、背景をこだわった硬派な画風が人気を博した。2009年から2016年まで月刊アフタヌーンで「シドニアの騎士」を連載。同作はテレビアニメ化も果たした。2017年より月刊少年シリウスにて「人形の国」の連載をスタート。また劇場アニメ「BLAME!」の公開も控えている。


2017年4月6日更新