絵夢羅デビュー25周年インタビュー|「悩んで当たり前」「誰かがいる」ということを伝え続けたい

糸と真の「芸能界編」連載ができるチャンスをずっと待っていた

──「WジュリエットⅡ」は2004年に糸の兄である竜矢とクリスの結婚式が描かれた1話が掲載されたので、初期は不定期連載ながら足掛け17年近くも連載が続いています。3巻までは読み切りシリーズ、4巻以降は「芸能界編」として連載形式になりました。読み切りシリーズで思い出に残っているエピソードはありますか?

1~3巻までは糸の視点での「サブキャラのその後」がメインで、どれも印象的ですが挙げるとしたら2巻の真さんの両親の話とか、3巻のつぐみ先輩の話とかでしょうか。ストーリーの内容もですが、扉カラーが好きでよく覚えています。

──つぐみ先輩、最初はただの高飛車なちょっとヤバい先輩だと思っていたのですが、「WジュリⅡ」の3巻で仕事に誇りを持ってるしお嬢様としての品もあるし、ということがわかり、すごく株が上がりました。竜矢とクリスの子供のなつきもこの回で登場しましたね。

なつきちゃん誕生からお世話の流れは、当時の甥っ子を参考にしました。その甥っ子ももう11歳になってますよ!

ザ花とゆめ2007年9月25日号の表紙を飾った「WジュリエットⅡ」。

──時が経つのは早い……! 考えてみれば、絵夢羅さんはデビューして1年で「Wジュリエット」を描き始めたので、無印と「II」の間や不定期連載だった時期もありつつもう24年も糸と真を描いていることになるんですね。ここまでファンに愛され、続きを望まれた要因はどこだと思いますか?

主役の2人の強さかなと。外見も中身も突出していて。私もそうですが、好きな作品は「ストーリーが読みたい!」以上に「またあの人に会いたい!」という思いに駆られると思うんです。キャラの魅力というか、そういうところが糸と真はちゃんとできているからかな?と。これ、やろうと思ってもなかなか難しいんですよ……。

──確かにそうかもしれません。糸と真が芸能界の荒波を乗り越えていく「芸能界編」は、どのような経緯から描くことになったのでしょう?

3巻まででサブキャラのことはだいたい描いたので、残るは主役2人。「今日も明日も。」の未来につなげるためには不定期での読み切り形式だと進行がキツいので、水面下でお話を温めつつ、連載ができるチャンスをずっと待っていました。

別冊花とゆめ2014年6月号。「WジュリエットⅡ」の「芸能界編」がスタートした号だ。

──なるほど。「WジュリⅡ」の3巻が2011年、4巻が2015年と4年空いているのは、そういう経緯があったんですね。

2012年に別花に移籍して「イデアの花」を始めて。担当さんと相談してその次の連載を「芸能界編」にすることが決まったんです。これが叶ったのも、読者さんからの根強い要望があったからで、応えることができてホッとしてます。別花は休刊になってしまい、掲載場所はLINEマンガとなりましたが、今は自分のペースで描くことができてとても幸せです。

──紙ではなくWeb媒体での連載になり、何か心がけていることはありますか?

1話36ページを4分割して毎週9ページ更新というスケジュールなんですが、毎回何かしら見せ場を作るよう心がけてます。スマホで読まれることが多くなっているので、雑誌時代よりもコマ割り、セリフをやや大きめに、でも絵も話もスカスカにならないように、と。話の展開は少しゆっくり目になりましたが、1話の密度はすごく上がった気がします。分割される分、細かいギャグやキャラの掛け合いを前より入れるようになりました。

「ワンダーハニー」1巻

──確かに、毎回続きが気になるところでヒキなので「早く次が読みたい!」と思っていました(笑)。別花で最後の連載になったのは、2017年にスタートした「ワンダーハニー」でしたね。29歳の父親と4歳の超能力者の娘の子育てコメディと、これまでの絵夢羅さんの作品とは異なる意欲作で。

当時の担当さんと新作のネタ出し中に「子供はどうですか?」と言われ、そういえばメインで描いたことなかったなと思って。いかにも白泉社らしいトンデモ親子を作り上げました。アンケートがとてもよかったらしく、担当さんが喜んでコピーを見せてくれたのを覚えています。別花が休刊になってしまい、キリのいいところでストップしていますが、どこかで描ける機会があったら続きを描きたいと思ってます。

もう大変、大変、大変しかありません

──絵夢羅さんご自身についても教えてください。小学2年生のときにマンガ家になりたいと思い、高校1年生のときに投稿を始められたとのことですが、絵夢羅さんがマンガ家を志したきっかけは?

「WジュリエットⅡ」のカラーイラスト。

物心ついたときから妄想族で、絵を描くのが好きだったし漠然と「マンガ家になりたい」「なろう」と思っていました。紙の上で喜怒哀楽のすべてを表現できたらすごい、自分もそれをやってみたい……というのは後から気付いたことで、当時はただひたすら絵を描いていましたね。感情を乗せて描いた絵が気持ちよくて。いろいろなマンガ家の先生に憧れて、あんなふうに上手に自由に絵が描けるようになりたいとずっと思ってました。

──単行本の柱コメントでも「マンガ大好き」と書かれてました。「Wジュリ」の頃なのでかなり昔になりますが、「少年マンガ系では冨樫義博先生、高橋留美子先生、浦沢直樹先生、鳥山明先生、井上雄彦先生、北条司先生、高田裕三先生、三浦健太郎先生、尾田栄一郎先生、梅澤春人先生、少女マンガ系では清水玲子先生、ひかわきょうこ先生、日渡早紀先生、楠桂先生、いくえみ綾先生、高屋奈月先生、望月花梨先生、日高万里先生、山口美由紀先生、田村由美先生、尾崎かおり先生」をお好きな作家の一部として挙げていて。今でもマンガはよくお読みになりますか?

好きな先生方は相変わらずですが、最近は歴史や文化や史実をモデルにした作品をよく読むようになりました。もともとノンフィクションが好きだけど読むのも描くのもファンタジー寄りだったのが、ちょっと大人になって現実に寄ったんでしょうかね(笑)。ここ最近ハマっている作品は「ゴールデンカムイ」「アルテ」「傾国の仕立て屋ローズ・ベルタン」ですね!

──どれも面白いですよね。絵夢羅さんが絵柄に関して影響を受けた作家さんはいますか? とても独特で素敵な絵柄だと思っていまして。

一番影響を受けたのはやはり高橋留美子先生ですね。小学生の頃「らんま1/2」を読んで、すごい衝撃でした。中高生になってからは美麗なペンタッチや少女マンガ表現に憧れて、清水玲子先生やひかわきょうこ先生に影響を受けて。ほかにも影響を受けた作家さんはたくさんおりますが、今でもこのお三方は特別で憧れです。

──ご自身の絵で特徴的だなと思う部分はどこですか?

読者の方からよくカラーを褒めていただいたり、構図が少女マンガとしては独特だと言われます。私もそこにこだわりを持って描いているので、そこなのかな?と。昔から顔のドアップよりも全身を描くのが好きだったので、よくマネしづらい絵だと言われますが、そういうところを好きだと言ってもらえるとうれしいですね!

──アクション女優である糸、雑技を生業としていたアーク家、旅芸人のアズ、ボディガードのあさひなど、絵夢羅さんはアクションシーンを多く描いています。アクションシーンを描く楽しさや大変さを教えてください。

もう大変、大変、大変しかありません。

──そんなに(笑)。

「WジュリエットⅡ」のカラーイラスト。

それでも描いちゃうのは動きのある絵が好きだからでしょうね。私もまだまだなので、もっと映画や動画などを観察してもりもり練習したいけど、時間がなくてだいたいぶっつけ本番です。しかも、描くのにすごいエネルギーが必要でして。その分理想の絵に近付けたときの達成感は半端ないです。もっと描く機会を増やしたら上達も早いけど、まず死にますね(笑)。

──心身ともに削りながら描いていると。「極楽同盟」のあとがきに、絵夢羅さんの作品には「『家族』とか『仲間』が中心のテーマが多い」と書かれていました。なぜ「家族」や「仲間」をテーマにしているのでしょうか?

なんでしょうね……。たぶんどなたにも“わかる”“刺さる”話で、共感性が高いからだと思います。勝手な偏見ですが、問題のない家庭のほうが少数かと思いますし。これは描いても描いても終わりのないテーマ……。だけど「1人じゃない」「みんな悩んで当たり前」「どんな物語でも受け止めてくれる誰かがいる」「大丈夫」ということを伝え続けたいのかもしれません。

──前向きなキャラクターが多いので、読んでいて重くなりすぎずに気持ちが軽くなることが多かったです。それでは、今後作家としてやりたいことはありますでしょうか?

いろいろ描きたいことはあるけど、果たして需要はあるのかな?ということを考えてしまいますけど、まあ描いていそうですよねー。水彩が好きだしアナログカラーを描き続けていきたいので、いつか原画展などできたらいいなあと思います。

──絵夢羅さん独特の柔らかいカラーの原画、ぜひ実際に見てみたいです!

ありがとうございます。でもお仕事の幅を広げるためにデジタル塗りも挑戦したいですね。媒体に合わせて、最適な画材を使いこなせるようになりたい。

──最後に絵夢羅さんのファン、また連載中の「WジュリⅡ」の読者にメッセージをお願いします。

25年描いてこれたのは読者の方々の応援あってこそです。いつも本当にありがとうございます!! マンガでお返しすること……というかそれしかできない人間ですので、もっともっと楽しんでいただけるようこれからもがんばりたいと思います。