絵夢羅デビュー25周年インタビュー|「悩んで当たり前」「誰かがいる」ということを伝え続けたい

高身長かつ運動神経抜群の凛々しいイケメン女子・糸と、一見たおやかな美女だが実は男子である真琴の演劇ラブコメを描いた「Wジュリエット」でスマッシュヒットを放った絵夢羅。1996年にデビューした彼女が、今年で画業25周年を迎えた。

コミックナタリーでは、デビュー以降花とゆめ、別冊花とゆめ(ともに白泉社)、LINEマンガと媒体を変えながらひたむきに描き続けてきた絵夢羅の足跡を年表で追うとともに、その内面に迫るインタビューを実施。「家族」「仲間」をテーマに作品を描く理由や、2004年から続く「WジュリエットⅡ」への思いなどを語ってもらった。

取材・文 / 三木美波

絵夢羅25年の歩み

1994

「10日回廊」
白泉社文庫「七色の神話」収録
第222回HMC優秀賞を受賞した、絵夢羅が16歳のときの作品。
(掲載:花とゆめ1994年21号)

1996

「目撃者」
白泉社文庫「七色の神話」収録
「目撃者」
高校3年生のときに投稿し、第27回BC賞に入選した短編。「Wジュリエット」に登場する伸子が書いた小説という設定のサスペンス。美咲、与四郎、伸子が物語の中心人物となる。
(掲載:花とゆめプラネット増刊1996年3月15日号)
「リトルドリーマー」
白泉社文庫「七色の神話」収録
デビュー作。夢魔の一族を描いたファンタジー作品。
(掲載:花とゆめ1996年11号)
「リトルマーメイド」
白泉社文庫「七色の神話」収録
「リトルドリーマー」の続編。
(掲載:花とゆめプラネット増刊1996年10月15日号)

1997

「七色の神話」
白泉社文庫「七色の神話」収録
「七色の神話」
七不思議をテーマに、霊感の強い仲良し女子中学生2人の青春ホラーが描かれた。「Wジュリエット」の糸の弟である竜良が登場する。
(掲載:花とゆめステップ増刊1997年6月15日号、花とゆめステップ増刊1997年9月30日号、ザ花とゆめ2001年8月1日号)
「Wジュリエット」
全14巻
「Wジュリエット」
花とゆめステップ増刊に読み切りとして登場し、好評を博してシリーズ化され花とゆめで連載された。男勝りの少女・糸とずば抜けた美貌を持つ訳あり女装男子・真の演劇部ラブコメで、絵夢羅の初連載作にして代表作。
(掲載:花とゆめステップ増刊1997年11月15日号〜、花とゆめ1999年7号〜2002年24号)

2003

「道端の天使」
1〜4巻
花とゆめで連載されたチャイニーズファンタジー。不思議な本を持つ少女キャトルと従者カルア、そしてキャトルを助けた少年テキーラの冒険が描かれた。
(掲載:花とゆめ2003年8号〜2004年12号)

2004

「極楽同盟」
全4巻
温泉旅館を立て直そうとがんばる少女ほまれを中心に、個性豊かな住み込み従業員たちが織りなす同居コメディ。
(掲載:花とゆめ2004年21号〜2006年3号)
「WジュリエットⅡ」
連載中
「WジュリエットⅡ」
「Wジュリ」完結から2年後、ザ花とゆめでサブキャラたちを描く不定期シリーズとして始まった「WジュリエットⅡ」。4巻からは別冊花とゆめで、芸能人としてデビューした糸と真の新たな挑戦を描く「芸能界編」の連載がスタート。現在はLINEマンガで連載中だ。
(掲載:ザ花とゆめ2004年8月1日号〜、別冊花とゆめ2014年6月号〜、白泉社オリジナル×LINEマンガ2019年7月20日〜)

2006

「グランドサン」
全3巻
天才ボディガードのあさひと史上最年少ノーベル化学賞受賞者の朔夜が織りなすラブロマンス。
(掲載:花とゆめ2006年10号〜2007年18号)

2008

「今日も明日も。」
全11巻
「今日も明日も。」
実践的なマンガの知識も折り込みつつ、マンガ家になりたい少女ちかと、少女マンガ家でちかの幼なじみでもある青年・稜の成長と恋を描くマンガ家ラブコメ。
(掲載:花とゆめ2008年5号〜2011年20号)

2012

「緋色の明日」
「今日も明日も。」11巻収録
「イノセント モンスター」
「今日も明日も。」11巻収録
「緋色の明日」 「イノセント モンスター」
「今日も明日も。」のちかのデビュー作「緋色の明日」と、作中の新人賞である“GC賞”に準入選した作品「イノセント モンスター」を絵夢羅が執筆したという風変わりな短編。
(掲載:両作品とも花とゆめプラチナ)
「イデアの花」
全6巻
「イデアの花」
花とゆめから別冊花とゆめに移籍。「イデアの花」は不思議なものを視てしまう目に悩む旅芸人一座のアズライトが、同じ目を持つ美女ルビィと出会ったことから始まるファンタジーだ。
(掲載:別冊花とゆめ2012年8月号〜2015年6月号)

2015

「ゆめの痕」
(単行本未収録)
61ページのボリュームで、身分違いの恋の“その後”が描かれた。
(掲載:別冊花とゆめ2015年8月号)

2016

「ディスタンス」
「WジュリエットⅡ」7巻収録
「WジュリエットⅡ」の番外編「スターマイン」に登場したCM女王はやてと、彼女が保護した子猫を描いたスピンオフ。
(掲載:ザ花とゆめ2016年6月1日号)

2017

「ワンダーハニー」
1〜2巻
「ワンダーハニー」
超能力を持つ4歳児・あかりとその父・祐二の子育てコメディ。2018年の別冊花とゆめの休刊に伴い、休載中。
(掲載:別冊花とゆめ2017年4月号〜2018年7月号、マンガPark)

絵夢羅インタビュー

たまに恋愛くらいが私にはちょうどいい

──画業25周年、おめでとうございます! 今の率直な思いをお聞かせください。

ありがとうございます。本当にあっという間でした。特にこの10年が光の速さで(笑)。この25年で画力やマンガ力は上がった気がしますが、「短時間で理想の絵を描く」能力はまだまだこれからだなあと。しみじみ思います。

「WジュリエットⅡ」のカラーイラスト。

──その向上心、見習いたいです。このインタビューでは、絵夢羅さんが25年間で描いてきた作品をじっくりと順に振り返っていければと思っていまして。まずは1994年から1996年までのデビュー前後の時期。初期作品の中で、一番印象に残っているものはどれですか?

デビュー作の「リトルドリーマー」です。一番直しを食らったので(笑)。45ページあったんですけど、4~5回直した記憶があります。当時はまだ高校生で人生経験も足りないし、担当さんの言ってる専門用語もわからないのにうなずいちゃって。「勢いでなんとかなるだろ!」と。

──あはは(笑)。

なんともならないことを後に悟るわけですが。これ以降は大幅な直しはなくなりました。だいたい1~2回くらいかな。マンガの描き方・作り方はもはやデビュー後の実戦で鍛えられたんじゃないですかね?

──試行錯誤しながらマンガを描き続けてきたんですね。高校生で受賞を果たしましたが、白泉社を投稿先に選んだ理由は?

投稿前にいろんな雑誌や単行本を読んで、気が付いたら白泉社系ばっかりだったんです。ひと味違う面白い作品が多いし、何よりゴリゴリの恋愛マンガは描くのも読むのも苦手だったので「ここなら恋愛モノじゃなくても大丈夫そう!!」という勝手な希望と自由度の高さが決め手でした。

──白泉社の作家さんから「恋愛だけに縛られない、ジャンルの自由度の高さで選んだ」というお話はよく聞きます。

今はゴリゴリ恋愛マンガ描いてますけど(笑)。まあ、主人公のやることや目標が先にあって、たまに恋愛くらいが私にはちょうどいいんです。