デジナタ連載 鈴木達央 × HD600N|10代のスピード感を“重さ”で表現した新曲 ワイヤレスヘッドフォンでの再現度は

声優として数多くの作品に出演しながら、Ta_2名義でバンド・OLDCODEXのボーカリストとして精力的な音楽活動を行っている鈴木達央。コミックナタリーでは「Panasonic presents デジナタ」連載の一環として、Panasonic初のノイズキャンセリング機能付きワイヤレスステレオヘッドフォン「HD600N」を鈴木に体験してもらった。リリースされたばかりのOLDCODEXの新曲「Heading to Over」をはじめとするさまざまな楽曲を聴いてもらいながら、その使用感について語っている。またインタビューの後半では、現在メインキャストとして出演中の「Free!-Dive to the Future-」「ISLAND」といったアニメを通し、自身の作品やキャラクターへの向き合い方について聞いた。

取材・文 / 熊瀬哲子 撮影 / 平岩享

Panasonic「HD600N」

ノイズキャンセリング機能付きワイヤレスステレオヘッドフォン。ワイヤレスでもハイレゾ相当の高解像サウンドで音楽を楽しむことができる。連続約20時間再生が可能なほか、周囲の環境にあわせてノイズキャンセリングモードを3バージョンから選ぶことが可能。ワンタッチ操作で周囲の音が聞こえるボイススルー機能も搭載されている。

HD600N

より楽しく音楽を聴くためのヘッドフォン

──普段はイヤフォンとヘッドフォン、どちらを使っているんですか?

普段はイヤフォンですね。いろんな楽曲を分解して研究するために使っているので、高音や低音に特化しているものではなく、なるべく全体域がきれいに、フラットに聴こえるものを選ぶようにしています。

──今回は鈴木さんにHD600Nを使って、Ta_2として音楽活動をされているOLDCODEXの新曲「Heading to Over」を聴いていただきましたが、いかがでしたか。

うちはもともとロー(低音域)が強い音作りをしているんですが、このHD600Nでもふくよかなローが再現されている印象でした。ミッド(中音域)が痛くない帯域で鳴ってくれるので、それが心地よいですね。これ、自分のiPhoneでもペアリングしてみていいですか?

鈴木達央

──ぜひ試してみてください。

実はiPhoneも機種によって音の分離が違うので、音質も変わって聴こえるんですよ。(自身のiPhoneでペアリングを体験しながら)……今、チャーリー・プース、タイガ、メーガン・トレイナーを聴いてみたんですけど、全体的な印象としては、やっぱりミッドがふくよかだなと。ああ、Boyz II Men、クレイグ・デイヴィッドも聴いてみたんですけど、音のヌケがいいから歌ものがとにかく気持ちいいですね。ボーカルが強い楽曲にはすごく合うんだろうなと感じました。EDMや打ち込み、シンセを活かした楽曲も映えそうです。あとは「Heading to Over」のハイレゾ用、96kHz/24bitのバージョンも聴いてみました。

──HD600Nは、有線接続時はハイレゾでの再生が可能で、ワイヤレスでの再生時もハイレゾ相当の高解像サウンドで楽曲が楽しめます。

ハイレゾは音数が増えるので、普通のワイヤレスヘッドフォンだとそこが再現できずに潰れた状態で再生されちゃうんですけど、これで聴くと音像にしっかりと伸びしろがあって、ハイレゾを聴いているときの楽しさがちゃんと感じられますね。

──騒音環境にあわせて3つのモードが選べるノイズキャンセリング機能も試していただきましたが、こちらはいかがでしたか。

3パターン使ってみて、「中」(モードB)が一番よかったです。「強」(モードA)にすると金物とかのハイ(高音域)の音が際立って聴こえる印象があったんですが、「中」だとそれが収まって、ちょうどいい具合にバランスが取れているなと。「強」だと少し耳が圧迫されるような音感があったので、そういった感覚が苦手な方にも「中」くらいがちょうどいいかもしれないですね。

──ワンタッチ操作で周囲の音が聴こえるようになる、ボイススルー機能はいかがでしょう。

面白いです! 右パッドにタッチすると一時的に周りの音が聴こえるようになるっていうのは、簡単だしすごく面白い機能だなと思いました。作業しながらちょっとした会話をしたいときとかにいいですよね。

──電車に乗っていて、車内アナウンスを聴きたいときにも便利な機能だと思います。

やっぱり電車の中で音楽を聴かれている方は多いですし、最近だとBluetoothのイヤフォンを首から下げている方も多くなりましたからね。そういった意味でも日常に溶け込みやすいヘッドフォンだなと思いました。

──日常使いというと、ヘッドフォンはファッションの一部としても重要な部分を担うと思いますが、こちらのデザインについての印象は?

HD600N

シンプルだしカッコいいと思います。そのうえで触れていて楽しい高級感みたいなものがちゃんとありますし、マットな手触りも気持ちいいですね。カラーは3色展開されているんですね。俺はこの中だとオリーブグリーンが好きかも。あと、着け心地もすごくよかったです。いつも使っているスタジオのヘッドフォンより全然いい!(笑)

──(笑)。快適な装着感を味わえるよう研究して作られているそうです。

ヘッドバンドの部分が当たっても気にならないですし、イヤーカフもすごく柔らかい。耳疲れしないように考えて作られているんだなというのは感じました。やっぱりヘッドフォンって長時間使っていると耳が痛くなるのが難点だなと思っているんですけど、その問題はすごく軽減されてるなって。こういう細かいところまで手が込んでるというか、心意気が感じられるのはうれしいですね。でもビックリしました。Bluetoothのヘッドフォンでここまで音がいいのは聴いたことがなかったので。価格はどれくらいなんですか?

──オープン価格になりますが、だいたい3万円台で購入できるかと思います。

そうなんですね。同じ価格帯の有線のヘッドフォンと遜色がないので、そこはすごいなと思いました。やっぱりワイヤレスって手軽なので使いやすいですし。そういう意味でも、日常使いすることが多い方々、ポップスや歌ものをよく聴く方々には、より楽しく音楽を聴くための1つの要素となれるヘッドフォンなんだろうなと思います。

自分の頭の中で鳴っている音にどこまで近づけていくかという作業

──新曲「Heading to Over」についてもお話を聞かせてください。今回はサウンド面ではどんな部分にこだわって制作されたのでしょうか。

鈴木達央

以前行った海外公演のときにいろんなバンドを観させていただいて、特にアメリカのメタルバンドの音作りについて研究させてもらったので、今作では自分たちの中にも取り入れられそうなものはより形にしていきたい、という話を最初にしていました。今までよりも重みのあるサウンドを目指そうと思って、まず始めに大事にしたのはドラムの太鼓類。響きのレンジを大切にしつつ、例えばバスドラムだと、バンッと踏み込んだときの音は細かく調整していきました。スピード感を優先するとどんどんシャープな音になっていって、それを緩めようとするとふくよかな音にはなるんですけど、その分飽和してしまうというか、ちょっと残響感が残るんですよね。そうならないように、スピード感を残したまま打点を太くするっていうのを、なんとかマイキング(音を拾うためのマイクの設置)で調節できないかと、エンジニアとも相談しながらいろいろ試させていただいて。

──バスドラムの音ひとつとっても、すごく綿密に作り込んでいるんですね。

自分で曲を作っているときは頭の中で鳴っているものがあるので、音作りではどうやってそこに近づけていくかという作業になりますね。ベースに関しても、ファズ(エフェクター)を使ってこれまでより歪みを派手めに作っていて。あえて派手に作ることによって、ドラムでは出せない帯域をベースで埋めていきながら、単品で聴いたときにもトゲのあるような、「こんなに歪んでたんだ」と感じられる音を出せるよう目指しました。

──ギターについても、同じように細かく調整されて?

ギターは単音で聴くとちょっと物足りないかもしれないけど、ミッドの歪みが跳ねているような音作りを意識して作っていきましたね。ローミッド(中低音域)をどういうふうに埋めていくかというのはこれまでも課題にしていたので、今回もスタッフとじっくり相談しながら進めていきました。そういう意味では、OLDCODEXの音は全体域が全部重いと思います。その中で、ボーカルは真ん中から抜けるような音にしていきたいという話もしていて。そこは今回の肝にもなりました。

──ちなみに、その細やかなこだわりはHD600Nではどれだけ再現されていたでしょうか。

出ていてほしいところは全部出てたと思います。我々が作っているものって、結局は最終的にどんな音質になっても楽しめるように、引き算方式で考えて作ってもいるので。特にうちはローが強いと思うんですけど、このヘッドフォンで聴いてみても低音域はボンボン出ていたので、改めてそういうバンドなんだなっていうのは感じました(笑)。地を這うようなベースラインと、バスドラ、タム、スネアの太鼓類の連続性は強く出るよう意識して作っているんですが、その辺りはよりクリアに耳に届いてきたので、聴いていて楽しかったです。