今年結成10周年を迎えたOLDCODEXが11月20日に17thシングル「Take On Fever」をリリースする。
この作品の表題曲はテレビアニメ「警視庁 特務部 特殊凶悪犯対策室 第七課 -トクナナ-」のオープニング主題歌で、ヘビーで勢いのある、OLDCODEXの真髄と言えるような1曲となっている。音楽ナタリーではTa_2とYORKE.にインタビューし、10年間の歩みや信念に迫った。
取材・文 / 高橋美穂
周りを変えるために、俺のやることは変えない
──「Take On Fever」は、これまでアニメタイアップを重ねてきたOLDCODEXが自信と周りの信頼を確立したからこそ作れる、ヘビーなアニメ主題歌だと思いました。まず、「Take On Fever」の成り立ちから作曲を手がけているTa_2さんにお伺いしましょうか。
Ta_2(Vo) 裏側を話すと、「警視庁 特務部 特殊凶悪犯対策室 第七課 -トクナナ-」のプロデューサーチームとは、以前に「SERVAMP-サーヴァンプ-」という作品でご一緒させていただいたことがあって、当時、俺らはオープニング主題歌として「Deal with」(2016年7月発売の13thシングル表題曲)を提供させていただいて。そのあと、アニメの劇場版にも主題歌「One Side」(2018年4月配信)を提供させてもらって、今回「トクナナ」でもそういう力強い曲が欲しいというオーダーを受けました。じゃあどういうふうに作っていこうかなと考えたんですけど、ちょうどアルバム「LADDERLESS」(2019年7月発売の6thアルバム)の制作とも被っている時期だったので、アルバムのことを考えながら、さらに先のことも考えなければならなくて。
──なるほど。
Ta_2 「LADDERLESS」は新しい自分たちのスタンダードを作り上げたくて、今まで表立っては出していないけれども、ずっと持っていたものに日の目を浴びさせた作品だったんです。でも、新しいスタンダードを作りつつ、「まだトゲは抜けていないよ」というところを「Take On Fever」で出したかった。あとは最近、世の中の傾向としてアニメーションで流れる90秒版のトラックが注目されているので、自分たちなりに“90秒版の答え”を出したいと思って作りました。具体的には、オケは大暴れしているけど、メロは抜けがいいものを作りたいと。一方フルバージョンは、自分たちのメッセージ100%で全然違うセクションを入れても面白いよなということで、キャッチーさと暴力性を混在させて作りました。
──ご自身の楽曲を、とても客観的に分析されていますね。
Ta_2 そうですね。曲に入り込んで作りはするんですけど、それを俯瞰して見られるようにやっていきたいというのが、最近のテーマです。あと、「自分が活動しているうえでの利点ってなんだろうな?」と思うと、仕事を2つ持っていることなので、声優として活動している自分をOLDCODEXにも影響させながらやれたらいいなと思うようになりました。
──YORKE.さんもペインターという特殊な立ち位置ですけれども、ご自身の武器というところを考えたりはしますか?
YORKE.(Painter) そこはあんまり気にしてないですね。Ta_2はどんどんプロデューサー的な視点を持つようになって、映像やジャケットについてもイメージを広げるようになってきたから、僕はより本能的になって動物的に作ることに集中してます。10年やってきて、ペインターという特殊な立ち位置をネガティブに捉えられることもあるし、理解しようとしない人もたくさん見てきた。そして、それがポジティブな見方に変わる瞬間もたくさん見てきた。ただ、そういうふうに周りに変化はあっても、僕自身はOLDCODEXで表現することにフォーカスしているだけで、考え方は最初からそんなに変わらないんです。
──ネガティブな見方をポジティブな見方に変えるために、YORKE.さんご自身が周りに訴えかけてきたところはありますか?
YORKE. いっぱいあるよ。ただ、それは周りを変えるために、僕のやることは変えないってこと。例えば、ライブハウスでペイントしますって言ったら、だいたい嫌がられたり、入念に養生されたり、面倒くさいなっていう雰囲気を出されていた。でも今は、スタッフのほうが前向きで、僕よりも僕のパフォーマンスをわかってて、より「YORKE.に自由にやらせたい」と思ってくれていると感じますね。それで、自分自身もより輝けるし、よりパフォーマンスに集中できるようになっています。
──シンプルな言い方になりますが、積み重ねてきたからこその今があるんですね。
YORKE. うん。ほかにこういうことをやっている人もいないしね。道は自分で作るしかないっていう、フロンティアな感じはする。
自己表現のための武器
──歌詞の書き方に関して、YORKE.さんの中で変化を感じているところはありますか?
YORKE. ああ、そこはだいぶ変わってきたよ。以前は、「メッセンジャーはTa_2だけど、僕が歌うとしたらこういう言葉を使うだろうな」というところが混在していて。でも最近はOLDCODEXのメッセージとして磨いた言葉を出すようにしている。あと、前は文章のようにワーって英語で書いてから、日本語にするとハマらなくて、言いたいことを変えざるをえないみたいなこともあったんだけど、最近はテーマを決めたらそこからブレないようにできるようになってきたかな。
──「Take On Fever」はどのように書いていきましたか?
YORKE. 「トクナナ」の台本のラフを読ませていただいて、アーバンなイメージを感じたんです。だから、サウンドが激しくても、ちょっとクールな感じを演出できたらアニメとリンクするんじゃないかなって。あと警察の話だから、パトランプがグルグル回っているイメージとか、首都高をパトカーが駆け抜けていくイメージとか、そういうことを想像しながら書きました。
──作詞とペイント、手がけるうえで同じところと違うところ、どちらもあると思うのですが、いかがでしょうか?
YORKE. 言葉はやっぱり直接的。絵は自由だよね。同じ赤でも、トマトもあれば血もあるし、ラブもあるかもしれない。そういう面白さはあるけど、言葉は“好き”って言ったら“好き”だし。だから、言葉も余白を感じるようなものを選ぶようにしていると思う。
──それぞれに面白味があるということですよね。
YORKE. でも、絵を描くことは面白いとは思ってないよ。気付いたら描いていることが多くて、続けてきただけ。僕の中の表現として絵を描くことは大事だけど、全然好きとは違う表現。手が汚れるのも嫌いだし。でも、何かを表現すること以外できないんだと思う。あきらめているわけじゃないけど、なんか信じているから。やめられたらラクだよ。でも、救われるときもたくさんあるし。
──そうなんですね。では、Ta_2さんにとって歌とはどういうものでしょうか?
Ta_2 「俺の歌ってなんだろうな?」と思うと、結局のところ、自己表現のための武器なんですよ。でも、この10年間で変わってきた部分もあって。OLDCODEXを始めた当初は、YORKE.と同じように厳しい言葉をもらったり、受け入れてもらえないこともたくさんあって、ずっと、「説得力さえあればいいんじゃん」「勝てば官軍」ということばかり考えてきたんです。「歌と声優、どっちが本職なの?」ってよく聞かれたりもして。でも、今はそれに対して怒るでもなく、気を遣うでもなく、「どっちもですよ」と気楽に答えられるようにはなりました。あと、歌は自分にとって武器ですけど、切りつけたり、刺したりしても、そこに温かい感情が残ればいいなって。歌は俺といろんなものをつなげてくれたから。YORKE.、ほかの仲間、作品を聴いてくれる人、こういう記事を読んでくれる人……歌が伝播して、縁になっていったんですよね。
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