「葬送のフリーレン」|冒険の終わりから始まる、人生の物語 有野晋哉(よゐこ)、浦井健治、江口雄也(BLUE ENCOUNT)、小出祐介(Base Ball Bear)、近藤くみこ(ニッチェ)、須賀健太、鈴木達央、豊崎愛生が読後の思い綴る

週刊少年サンデー(小学館)にて、2020年4月より連載されている「葬送のフリーレン」。魔王を倒した勇者一行の“その後”を描く同作は、山田鐘人、アベツカサという新鋭2人が原作と作画を務め、目利きの間では連載当初より注目を集めてきた。

コミックナタリーでは単行本2巻の発売に併せ、「葬送のフリーレン」の特集を展開。アーティスト、俳優、声優、芸人として各界で活躍するマンガ好きの著名人8人に「葬送のフリーレン」を読んで感じた思いを綴ってもらった。また第1・2話の試し読みも掲載しているので、少しでも作品が気になった人は、まずは“終わりから始まる”この物語の序盤に触れてほしい。なおコミックナタリーでは週刊少年サンデーの編集長・市原武法のインタビューも掲載。こちらでは編集長にも「葬送のフリーレン」について語ってもらっている(参照:週刊少年サンデー特集 編集長・市原武法インタビュー)。

「葬送のフリーレン」

「葬送のフリーレン」第1話扉イラスト

勇者のヒンメル、戦士のアイゼン、僧侶のハイター、魔法使いのフリーレンはともに世界を救ったパーティ。物語は魔王を倒した勇者一行が、王都へ帰還するところから始まる。勇者のヒンメルは「魔王を倒したからといって終わりじゃない。この先の人生のほうが長いんだ」と語る。そして「フリーレン。君のこの先の人生は僕達には想像もできないほど、長いものになるんだろうね」とも。

月日は流れ、ヒンメルは人生の幕を下ろす。エルフのため長寿のフリーレンは、ヒンメルの死になぜ自分が涙するのか、自身でもその意味がわからなかった。彼女は決意する。「人間をもっと知るための旅に出よう」。冒険の終わりから始まる、英雄たちの生き様を描いた後日譚ファンタジーだ。

第1・2話の試し読みはこちらから

「葬送のフリーレン」に寄せて、著名人8人のコメント

有野晋哉(よゐこ)

有野晋哉

冒険もの漫画って勇者が主人公なのが多いけど、これは魔法使い。
勇者のパーティーが世界を平和にした50年後が舞台で、その功労者を世界が忘れかけてるってことを長生きの魔法使いが知ってしまった入り口が好きです。
フリーレンが人間の寿命と儚さに気づく、感情の成長が何より良いですね。

ぜひ、ゲーム好きに読んで欲しいです。それもロープレのゲーム性より、物語部分のほうが好きな人は特にハマる。
「あーゲームでこんなシーンあるわ」って思いながら読み進められる。
ちなみに僕もロールプレイングゲームが好きでよくやりますが、一度全てのキャラクターをレベルマックスにして、さあラスボスだ!って時にふと思ったんです、「ココで僕がボスやっつけて、世界は平和になって、主人公は王女と結婚して、良かったってなるけど、僕の独身の生活は何も変わらへんやん!」って。なのでそのソフトをクリアしないで終わってやりました。

面白い漫画って1巻でハマるから、一回読んでみて決めたら良いと思います。
あと、電子書籍で見たら、景色の細かさが凄いのでギュウギュウって指でピンチアウトして見て欲しい。そんなのが好きな人もハマる!

プロフィール

2月25日生まれ、大阪府出身。1990年に同級生の濱口優とお笑いコンビよゐこを結成。自他ともに認めるゲーム・マンガ・アイドルオタクで、メイン番組や連載などを持ちサブカルチャーに精通している。現在、CSフジテレビONE「ゲームセンターCX」、フジテレビオンデマンド「世界をマンガでハッピーに!~セカハピ~」、YouTube「よゐこの○○で○○生活」などの番組で活躍している。

浦井健治

浦井健治

勇者ヒンメルたちと共に魔法使いとして旅をしていた主人公の少女・フリーレン。この漫画の第1話は彼らが魔王を倒して王都に凱旋し、冒険の旅は終わった、というところから始まります。

この導入部がまず面白い。

そしてわずか数ページでなんと50年という年月が経過し、王都に戻ったフリーレンは勇者ヒンメルと再会するけれど、人間より寿命が長いエルフであるフリーレンは自身の姿は変わっていないけれど、ヒンメルは人間なので年老いていて、やがて彼は亡くなってしまう。

人間の寿命は短いとわかっていたはずなのにヒンメルのことをもっと知ろうとしなかったことを悔やんだフリーレンが涙を流す場面は、とても印象的。

「私はもっと人間を知ろうと思う」と決意したフリーレンは新たな旅に出ますが、この漫画は緻密に描かれた背景の描写も素晴らしく、読んでいる自分もフリーレンと一緒に旅をしているような気分になれます。

旅の行く手に待っているであろう戦いと出会いを通して、フリーレンがどんな成長を遂げてゆくのか、続きを読むのがとても楽しみです。

プロフィール

8月6日生まれ、東京都出身。2000年に「仮面ライダークウガ」の敵の首領役で俳優デビュー。2004年ミュージカル「エリザベート」のルドルフ皇太子役に抜擢。以降、ミュージカル、ストレートプレイ、映像、ラジオパーソナリティーを務めるなど、幅広い活動を展開。2006年には、初主演となるミュージカル「アルジャーノンに花束を」ほかで第31回菊田一夫演劇賞を受賞する。その後も「ヘンリー六世」で第44回紀伊國屋演劇賞個人賞、第17回読売演劇大賞杉村春子賞、「星ノ数ホド」ほかで第22回読売演劇大賞最優秀男優賞、「ヘンリー四世」ほかで第67回芸術選奨文部科学大臣新人賞の演劇部門など数々の演劇賞に選ばれた。2016年にはソロアルバムを発売し、東京・東京国際フォーラム ホールAでのソロコンサートを行っている。2020年にはミュージカル「メイビー、ハッピーエンディング」のほか、12月に上演される「オトコ・フタリ」に出演予定。

江口雄也(BLUE ENCOUNT / G)

江口雄也

夢を叶えた瞬間というのは、人生における最大のハイライトに見られがちだ。

自分以外の誰かが見れば、夢を叶えた瞬間は盛り上がりのピークでまさに瞬間最大視聴率を叩き出すだろう。
一方、自分自身の人生軸で考えるならば、夢を叶えたその先からを人生のハイライトにしなければいけない。

いうまでもなく漫画というものは自分(作者)以外の誰かから評価を受けるものなので、夢を叶えるまでを描くことが多くなっている。
でも好きな漫画であればあるほど、最終巻のその先の「主人公たちの未来」を知りたくなることだろう。

この葬送のフリーレンという漫画は、「その先」にストーリーの機軸を置きながら読んでいく作品で、且つ夢を叶えるまでの描写を随所に交えているとても面白い形の漫画だと思う(発明と言ってよいレベル)。

悪魔を倒し終わった後で主人公フリーレンがこれからどうしていくのか、
そして一緒に悪魔を倒した当時の仲間ヒンメルに対してフリーレンの想いはどう変わっていくのか。

まだ序盤だけど、続きが気になりすぎる漫画として、今後愛読させていただきたいと思います。

プロフィール

11月7日生まれ、鹿児島県出身。BLUE ENCOUNTのギターとして活動。2010年に1stミニアルバム「the beginning of the beginning」をリリース。2014年2月に初のフルアルバム「BAND OF DESTINATION」を発売し、同年9月にキューンミュージックより4曲入りCD「TIMELESS ROOKIE」でメジャーデビュー。2016年10月には初の東京・日本武道館単独公演を行い成功を収める。2020年には8月公開の映画「青くて痛くて脆い」の主題歌として新曲「ユメミグサ」を提供。11月18日にはニューアルバム「Q.E.D」をリリースする。また熊本支援プロジェクト「STAY HOPE」を立ち上げ、10月18日には「熊本復興支援チャリティー特別番組『project STAY HOPE』」を配信予定。

小出祐介(Base Ball Bear)

小出祐介

自分のバンドの曲に『The End』という曲があります。長い旅を終えて故郷に戻ったRPGの主人公(勇者)が、平和になったあと、つまり、エンディング後の世界で余生を過ごすという内容です。

歳をとり、魔法を忘れていき、仲間とも別れ、戦うべきもの守るべきものも無くなったとき、彼には何が残るのか。僕はそこには「生活が残る」と想像して、曲を作りました。

『葬送のフリーレン』は、この曲の時点から更にその先の物語です。
すごく個人的な気持ちですが、きっと近い発想から生まれたのだろうこの作品に親近感を覚えました。

「人間は二度死ぬ」なんて言葉がありますが、その人のことを憶えている人が一人でもいる限り、まだ人生は終わっていないと言えるのではないかと思います。
その人生を誰かが想うとき、また別の物語が光り出すからです。

ヒンメルの生きた様を、フリーレンや仲間たちがたどっていった先で何を見つけるのか。これからも見守っていきたいです。

“緞帳の奥は暗闇じゃない”

プロフィール

12月9日生まれ、東京都出身。2001年にロックバンド・Base Ball Bearを結成し、ボーカル・ギターを担当。2006年4月にミニアルバム「GIRL FRIEND」でメジャーデビューを飾る。これまで2度にわたり、東京・日本武道館でのワンマン公演を成功させた。2019年にEP「ポラリス」「Grape」を発表し、2020年1月22日には3年ぶりのニューアルバム「C3」をリリース。11月11日のバンド結成19周年記念日には、有料配信ライブ「LIVE IN LIVE~(IN YOUR) HOME PARTY~」が開催される。

近藤くみこ(ニッチェ)

近藤くみこ

ハッピーエンドのその後が気になるのは
ナンセンスなのか!?

その考えを一蹴してくれるのが
「葬送のフリーレン」

ファンタジーは創造されたものなので
非日常を楽しむジャンルではあるが
この「葬送のフリーレン」は
自分の人生を落とし込むことができる。

エルフであるフリーレン。
魔王を共に倒した勇者が亡くなったことで
自分の無知に気づき
対人関係や自己理解が深まり成長していく。

このシーン最高。

人は人生のピークを評価しがちだが
その後の人生の歩み方こそ
とても意義がある様に思う。

他人の事も自分の事でさえも理解に乏しいフリーレン。
長寿のフリーレンには一瞬のことであったかもしれないが確かに時間を共にした仲間達がいる。

そしてその一瞬の中にも
仲間達が自分を理解してくれていたという甦る記憶。

はい、このシーンも最高です。

フリーレンの成長と共に
自分は今までの人生で
どれくらいのことに気づかず見過ごしているのだろうかと考えさせられる。

読み終わる頃には
今まで自分に関わってくれた全ての人に感謝せずにはいられない!

プロフィール

1月4日生まれ、三重県出身。同じ日本映画学校(現・日本映画大学)出身の江上敬子とともに、お笑いコンビ・ニッチェを結成。2018年には「iiwake / HONNE」でCDデビューを果たしている。現在は「ゴゴスマ~GOGO!Smile!~」「王様のブランチ」にレギュラー出演。マンガ好きなことから、「王様のブランチ」ではゲストとともにオススメのマンガを語り合うコーナー「語りたいほどマンガ好き」を担当している。

須賀健太

須賀健太

『葬送のフリーレン』…
なるほどこれは面白い!!!
1巻では魔王を倒した勇者一行の“その後”の物語が描かれていて、ありそうでなかった物語にすぐ引き込まれていきました!
種族の違うパーティーで旅をするのはよくある話ですが、この作品は“その後”を描いているので、種族ごとの余生を感じることができて新鮮でした。

中でも主人公のフリーレン!
エルフ族なのでだれよりも長生きで、周りがどんどん歳を取っていく中全く容姿も変わらない…
それ故に仲間たちを看取っていかなくてはならない切なさと、彼女の持つ秘めた優しさにグッとくること間違いなしです!

僕はフリーレンめっちゃ好きになりました!笑

クスッと笑える漫画であり、
死とは何なのか。看取ることの意味や意義、残された人の思い。そんな所まで考えさせられる漫画です。

プロフィール

10月19日生まれ、東京都出身。1998年に子役デビュー。2002年に放送されたTVドラマ「人にやさしく」で注目を浴びる。2006年に「花田少年史 幽霊と秘密のトンネル」で映画初主演を果たし、第30回日本アカデミー賞で新人俳優賞を受賞。2015・2016年の「ライブ・スペクタクル『NARUTO-ナルト-』」で我愛羅役を演じ、2015年から2018年まで「ハイパープロジェクション演劇『ハイキュー!!』」で日向翔陽役を務めた。同2018年には、2.5次元ミュージカルのプロモーション活動を行う2.5Dアンバサダーに就任。2020年にはWOWOWオリジナルドラマ「ワケあって火星に住みました~エラバレシ4ニン~」と、同作の舞台版に出演し、「『えんとつ町のプペル』THE STAGE」では萩谷慧悟とともにダブル主演を務めた。

鈴木達央

鈴木達央

亡くなった人の想いのバトンは見えないギフトに繋がっていく。

物語とはその一部分を切り取っただけで、本当はその後の方がずっと長かったりする。
俺にもそんな経験があって。
また一緒に作品やりましょうねと笑顔で別れて、そのまま会えなくなった友達や仲間や先輩たち。
そういった出来事は、言葉に出すことはそうそう無いし、それを日常の中でいちいち感じさせることは無いけれど、その人たちから頂いた「ギフト」は全部心の中にある。
フリーレンもそうだ。ぶっきらぼうのように見えて、情に熱く、義理堅く、信念が強い。でもきっとそれは素敵な、大切な仲間からもらった「ギフト」があるからこそだろう。
人に影響されて人に影響して生きていく。フリーレンを見ていると合わせ鏡のように自分の事も思い出す。

そして、繋がっていくバトンはフリーレンだけでなく、様々な場所でも感じることができる。
フリーレンは様々な場所を巡り、みんなの繋げた「何か」を目にする事になる。
俺の経験と照らし合わせるならば、一緒に作品作りをした、残ったフィルムがそれに当たるような気がする。
観なければ思い出すことも難しくなるし、それを覚えている人は年々少なくなっていく。
残酷だとしてもそれが大衆であり集団の真理でもある。
でも、本当に想っている人はずっと忘れないし、ずっと大切にその事柄や作品を覚えていてくれる。

読んでいて思ったのはそうやって覚えていてくれる事も「ギフト」なのだろうな、と感じた。

この作品は、読んでいると少しだけ心が締め付けられる感覚になるが、読後は何故か締め付けられた心の奥からほんの小さな暖かな気持ちが溢れる。

きっと彼らの行く先にはそんな、受け取った「ギフト」と共に、暖かな心のバトンが繋がっていくのだろう。
良き旅になる事を願っています。

プロフィール

11月11日生まれ、愛知県出身の声優。主な出演作に「魔王学院の不適合者」(アノス・ヴォルディゴード役)、「ケンガンアシュラ」(十鬼蛇王馬役)、「ポケットモンスター」(キバナ役)、「Free!」シリーズ(橘真琴役)、「七つの大罪」(バン役)など。2009年にTa_2名義でOLDCODEXを結成し、アーティストとしても活躍。国内外問わず精力的にツアーや単独ライブを開催し、多数の大型フェスティバルにも出演している。

豊崎愛生

豊崎愛生

ファンタジーの後日譚。その新しい切り口に惹かれ、読ませていただきました。静かで優しい空気感と、すこしの後悔や寂しさを纏って進んでいく世界観にぐんぐん引き込まれ、気づけば最新話まで一気に読み進めていました。エルフのフリーレンは、かつて魔王を討伐した勇者のパーティにいた魔法使い。その寿命は人間と比べて遥かに長く、ともに闘った仲間達の死後も、自分の時間を生きています。人との時間に対する価値観の違いの中で、大切なことをたくさん感じとっていくフリーレン。彼女の視点だけで物語を読んでいると忘れてしまいそうな時間の流れを、弟子であるフェルンの存在が思いださせてくれるのも、作品の魅力のひとつだと思います。ふたりのやりとりがコミカルで可愛らしく、作中のフェルンのツッコミに何度も癒されました。フリーレンがポーカーフェイスな分、まわりのキャラクターたちはみんな人間味あふれていて、躍動的。愛すべきキャラクター達が織りなす人間模様も、この作品の大切な要素だと思います。と、ここまで書いたところでふと足もとを見ると、お散歩をまちくたびれた愛犬がうらめしそうにこちらをみています。人と平均寿命が異なる彼らにとっては、もしかしたらわたしたち人間が長寿のフリーレンのように見えているのかも。ファンタジーのようで、実はとても身近なところに存在する、あたたかな作品だと思いました。

プロフィール

10月28日生まれ、徳島県出身の声優。主な出演作に「けいおん!」(平沢唯役)、「ゆるキャン△」シリーズ(犬山あおい役)、「ミュークルドリーミー」(みゅー役)、「メイドインアビス」(マルルク役)、「フルーツバスケット」(草摩依鈴役)など。2009年には同じミュージックレインに所属する寿美菜子、高垣彩陽、戸松遥とともにユニット・スフィアの活動を始める。また同年10月にはシングル「love your life」でソロアーティストとしてもデビューした。

「葬送のフリーレン」プレゼント企画

週刊少年サンデーの公式Twitter(@shonen_sunday)では、本特集と連動した単行本のプレゼント企画を展開中。単行本1・2巻に加え、今回の企画に参加した有野晋哉(よゐこ)、浦井健治、江口雄也(BLUE ENCOUNT)、小出祐介(Base Ball Bear)、近藤くみこ(ニッチェ)、須賀健太、鈴木達央、豊崎愛生のサイン色紙が抽選で各1人にプレゼントされる。さらにサイン色紙とともに、1巻には著名人本人がそれぞれお気に入りのシーンに貼った付箋も……? 応募方法などの詳細はサンデーの公式Twitterアカウントで確認を。