「みんなが選ぶ!!電子コミック大賞2026」大賞受賞作「継母の心得」ほおのきソラ×藤丸豆ノ介が制作裏語る、原作・トールの感謝あふれるQ&Aも (2/2)

ノアの号泣シーンをピークに持っていきたかった(藤丸)

──おふたりのお気に入りのキャラクターを教えてください。

藤丸 私は皇后マルグレーテがすごく好きなんです。強い女性が大好きで、覚悟が決まっている感がいいんですよね。ネームを描いていても、ふと気がつくと彼女にページを割いてしまっていることがあったりするぐらい(笑)。もちろん、すべてのキャラに公平でいなければいけない立場であることは自覚していますが、愛が抑えきれない瞬間はありますね(笑)。

ほおのき 私は原稿を描いていると愛情が増すタイプでして、話数ごとに推しがコロコロ変わるんです(笑)。でも全般的に考えると、ひそかに活躍している使用人たちへの愛情がけっこう強いかもしれないですね。

藤丸 確かに、ディバイン家の使用人たちは優秀ですよね。今ほおのき先生に言われて思い出したんですが、原作にない使用人たちの動きをマンガで追加した部分も割とあるんですよ。「この人たちを動かすの、楽しいわ」と思って。私も意外と最初から彼らが好きだったんだなー、と今気がつきました。

ほおのき (笑)。

「継母の心得」第13話より、皇后マルグレーテ。

「継母の心得」第13話より、皇后マルグレーテ。

「継母の心得」第1話より、使用人の1人であり、ノアの付き人カミラ。

「継母の心得」第1話より、使用人の1人であり、ノアの付き人カミラ。

藤丸 やっぱり、キャラクターに愛があると筆も乗るんですよ。イザベルの前向きで楽観的なところも私はすごく好きなので、彼女のシーンをネームに起こすときは心地よさを感じることが多いですし。

ほおのき 描くときは主人公に感情移入することが多いので、その目線になるとやっぱり子供たちを描くときが一番楽しかったりしますね。ノアのいろんな表情を描けるのがうれしくて……とくにノアの場合、序盤はあまり感情を表に出さない子だったじゃないですか。人形を描いているような感覚に近かったので、少しもどかしく感じていました。それが徐々に感情を出せるようになっていったので、描き手としてもすごく感慨深いですね。

藤丸 ノアが感情を出せなかったといっても、ふさぎ込んでいたというほどではないんですよね。それは、ノアが屋敷で虐げられていたわけではないからであって。やっぱりあの使用人たちは優秀ですよ。

ほおのき そうですね(笑)。

藤丸 私の中では、「ノアを泣かせるまでがひと区切り」という思いがありました。第9話で、しばらく会えなかったイザベルと久々に再会したノアが大泣きするシーンがあるんですが……。

──ノアがようやく子供らしい素直な感情を出せるようになる、象徴的なシーンですよね。

藤丸 やはり子供にはすくすく元気に育ってほしいので、その瞬間を盛りあげることが1つの目標でした。……ごめんなさい、今ちょっと思い出して泣きそうになってます(笑)。

ほおのき わあー(笑)。素敵です……!

「継母の心得」第9話より。皇宮パーティで毒を口にし、しばらく寝込んでいたイザベル。帰宅早々、ノアはイザベルに抱きつき大号泣する。

「継母の心得」第9話より。皇宮パーティで毒を口にし、しばらく寝込んでいたイザベル。帰宅早々、ノアはイザベルに抱きつき大号泣する。

「継母の心得」第10話より。イザベルは大号泣するノアを抱きしめ、「あなたが一番大事で大好き」だと伝える。

「継母の心得」第10話より。イザベルは大号泣するノアを抱きしめ、「あなたが一番大事で大好き」だと伝える。

藤丸 あのシーンをほおのき先生の絵で見られて、感無量でしたね。そこにピークを持っていくために、あえて描かずに隠してきた部分もあったりするんです。基本的にはイザベルとノアの日常を楽しげに描きつつも、外から急にやって来たお母さんではあるわけなので、そういうちょっとした違和感をちりばめることなんかも意識していて。うまくできていたかはわかりませんが……。

ほおのき その9話のネームを確認したとき、私はカフェにいたんです。思わず泣きそうになってしまって、そっと閉じたのを覚えていますね(笑)。

藤丸 そんな反応をいただけると、構成担当としては冥利に尽きます。

キャラも間違えることがある、反省を活かせる人々のお話

──今後、描いてみたいシーンなどはありますか?

藤丸 いっぱいあるんですけど、何を言ってもネタバレになりそうで……妄想レベルの話でもよければ、マルグレーテが赤面するシーンを入れられたらうれしいです。彼女の乙女な一面を出せたらキャラクターの幅が出て面白いと思いますし、ぜひほおのき先生の絵でそれを見たい(笑)。

ほおのき 私はやっぱり物語の核になるであろう、テオとイザベルのラブコメ展開を描くことが楽しみで仕方ないです。実は、少女マンガを長年描いてきているわりには、私はラブコメがあまり得意ではなくて。

藤丸 え、そうなんですか?

ほおのき 昔から、自分の中にあまりラブコメ像みたいなものがなくて。でも、「継母の心得」の原作を読み進めるうちに「こういう世界もすごくいいな」と思い始めたので、この作品に関われたことで自分の苦手を克服できるのではないかと思っております。

藤丸 そのお話はすごく意外です。ここまでの展開を見る限りでは、とてもラブコメが苦手な作家さんとは思えないですから。

ほおのき オタクとしての、キャラへの愛情だけでなんとか乗り切っている感じです(笑)。

「継母の心得」第9話より。皇宮パーティでテオバルトに代わり毒を口にしたイザベルは寝込んでしまう。そんな彼女を不器用ながら心配するテオバルト。

「継母の心得」第9話より。皇宮パーティでテオバルトに代わり毒を口にしたイザベルは寝込んでしまう。そんな彼女を不器用ながら心配するテオバルト。

──それでこれだけのものが描けてしまうという時点で、ものすごい才能だと思います。

藤丸 おっしゃるとおりですね。

ほおのき ありがとうございます(笑)。

──今回の大賞受賞をきっかけに「継母の心得」を知る方もいると思います。これから読んでみようと思っている読者へ向けて、何か伝えたいことはありますか?

藤丸 まずはやはり、癒されてくれたらうれしいなと思います。それと、少し立ち止まって考えるきっかけになるのでは?とも思っているんですよね。キャラも間違えるんですよ。主人公だからって正しいことだけをするわけじゃないし、純真な子供であってもすべてを肯定できるとは限らない。人間は完璧ではないという前提のうえで、ちゃんと反省して次の行動に生かせる人たちのお話なので、そういう部分も汲んでいただけたらうれしいですね。

ほおのき 藤丸先生が全部言ってくださいました(笑)。私からは、そうですね……ぜひ「継母の心得」を読んで、子供たちの成長を一緒に見守っていただけるとうれしいです。

──ありがとうございます。では最後に、残念ながら取材に参加できなかったトール先生にもひと言お願いします。

ほおのき トール先生の作り出される、とても繊細な物語の作画を担当させていただいているにもかかわらず、私はよくキャラクターのアクセサリーなどを描き忘れてしまう大雑把な人間でして(笑)。今後そのあたりは重々気をつけつつ、この素晴らしい世界観を持つ作品をより読者の目を引くものにできるよう、作画担当としてがんばっていきたい所存です。

藤丸 まずはこの愛おしいキャラと物語を生み出してくださり、ありがとうございました。偉大なトール先生には感謝しかありません。構成に関して、割と大胆な調整を相談させていただくことも多いんですが、いつも寛容に接してくださり、設定の深掘りにもきっちり応えてくださって本当にありがたい限りです。今後とも、何とぞよろしくお願いします。

プロフィール

ほおのきソラ

東京都在住、マンガ家。2011年にARIA(講談社)の「ワンニン!」でデビュー。2015年から2017年までARIAで「戦国ヴァンプ」を連載。同作は全5巻が刊行されている。現在、アルファポリスで連載中のコミカライズ「最後にひとつだけお願いしてもよろしいでしょうか」「継母の心得」で作画を担当。「継母の心得」は「Renta! マンガ大賞2025」の総合大賞、「みんなが選ぶ!!電子コミック大賞2026」の大賞を受賞した。

藤丸豆ノ介(フジマルマメノスケ)

マンガ家。「咎人の刻印」「東京ファントムペイン」「浅草鬼嫁日記」シリーズ、「今度こそ幸せになります!」などさまざまなコミカライズを担当。2023年より「傷モノの花嫁 ~虐げられた私が、皇國の鬼神に見初められた理由~」を連載。単行本10巻まで刊行されており、発行部数550万部を突破している。同作は「みんなが選ぶ!!電子コミック大賞2025」で異世界部門賞を受賞した。現在、構成を担当する「継母の心得」がアルファポリスで連載中。同作は「Renta! マンガ大賞2025」の総合大賞、「みんなが選ぶ!!電子コミック大賞2026」の大賞を受賞した。そのほか、ゲーム「白と黒のアリス」の一部キャラクターデザインへの協力や、「ハートの国のアリス」シリーズ、「里見八犬伝」シリーズの原画などにも参加している。

「継母の心得」原作者・トール 感謝あふれる受賞記念Q&A
トールのプロフィール画像

トールのプロフィール画像

──まずは「みんなが選ぶ‼電子コミック大賞 2026」の大賞に輝きましたこと、誠におめでとうございます。受賞しての率直な感想はいかがでしょうか。

ありがとうございます。
率直に驚きとうれしさ、そして感謝の気持ちでいっぱいです。
読者の皆様、ほおのき先生、藤丸先生、担当編集者様、アルファポリスの皆様、この作品に携わってくださった皆様のご協力のおかげでいただけた、大切な賞だと思っております。

──小説「継母の心得」についてもお話を伺わせてください。物語の着想のきっかけはなんだったのでしょうか。

虐待や、子供の声をうるさく感じる方がいる、というニュースがテレビや新聞で取り上げられ、目にする機会が増えたことがきっかけでした。
子供はかわいい、世界の宝なのだと伝わるような物語を書けば、少しでも世の中から悲しい事件が減るかもしれない。そう考え、育児をメインにした話を書き始めました。

──コミカライズが決定したとき、また作画のほおのきソラさん、構成の藤丸豆ノ介さんによるマンガを見て、どのような感想を抱かれましたか。

コミカライズが決定したときは、これは夢かと思わず頬をつねりました(笑)。コミカライズの発表後、読者の皆様が一緒に喜んでくださったことが、何よりうれしくていい意味での動悸、息切れがすごかったです。
しかも担当してくださるマンガ家さんが、ほおのき先生と藤丸先生とお聞きし、踊りだしたくなるほど大喜びしました。いえ、実際踊ったかもしれません(笑)。
実はおふたりのマンガは以前から拝読しており、大好きで、できあがった「継母の心得」のマンガを見て、「天才か!」と構成力とノアくん、イザベル様のかわいさに感動、脱帽して、思わず拝みました。

「継母の心得」第2話より、ノアとイザベル。

「継母の心得」第2話より、ノアとイザベル。

──アルファポリス、コミックシーモアともにコメント欄がありますが、それら読者の反応で印象に残っているものはありますか? アルファポリスの作者返信欄でトール先生が読者の方々との交流をされているのも拝見しており、温かいコミュニティだなと感じておりました。

印象深いコメントということですが、読者の皆様が一喜一憂してくださり、どれもがすべてうれしくて印象深いです。その中でも特に感動したのは、「作品を見て、子供を連れたお母さんに親切にしてあげられた」というコメントです。もううれしくて、うれしくて、書いてよかったーと涙が溢れました。コメント欄って、傷つくことが書いてあったりするものだと最初はビクビクしながら見ていたのですが、蓋を開けてみれば「継母の心得」へコメントをくださる皆様、全員あたたかい言葉に溢れているんですよね。それがありがたくて、コメント欄を見るたび元気が湧いてきます!
本当に温かいコミュニティなんです。

──コミカライズで一番お気に入りのキャラクター、お気に入りのシーンを教えてください。

コミカライズで一番お気に入りのキャラクターは、大工のイフさんです。
びっくりするほどのイケメンで、想像をはるかに超えたビジュアルに心を奪われました。イケオジが好きなんです(笑)。
同じくらい、スライムがかわいすぎて、大好きです!
天使のノアくんは殿堂入りです。

お気に入りのシーンは、かめは◯波を出すイザベル様と、鳥◯先生風のノアくんとカミラさん、からの、その後のコマで、密かに出てくる、なんだ、なんだ?という顔のリスまで(笑)。
かわいくてコミカルで、ほっこりします。

「継母の心得」第2話より、イザベルがおもちゃの制作を依頼する大工・イフ。

「継母の心得」第2話より、イザベルがおもちゃの制作を依頼する大工・イフ。

「継母の心得」第3話より、波動を飛ばすイザベル。

「継母の心得」第3話より、波動を飛ばすイザベル。

──読者の皆様、そしてほおのきさん、藤丸さんにメッセージをお願いします。

読者の皆様、いつも応援していただきありがとうございます。皆様のおかげで「継母の心得」を書き続けることができています。この作品は、皆様とともに作り上げたものだと、しみじみと感じております。
心温まるコメントや、お手紙、そして電子コミック大賞での「継母の心得」への1票、心より感謝申し上げます。
今後も皆様に楽しんでいただけるよう、精進してまいります。「継母の心得」を愛していただき、本当にありがとうございます!

ほおのき先生、いつも衝撃的にかわいいノアくんやイザベル様、アス殿下を描いてくださり、ありがとうございます!
幼児の絵は特にバランスも難しいそうですが、ぷにぷにほっぺも、小さな手足も、感情豊かな表情も、泣き顔まで繊細で、天使に仕上げてくださって頭が下がる思いです。皇后様にいたっては厚化粧で、という私の無茶振りにも、美しさを残しながらも厚化粧とわかる秀逸さで表現していただき、丁寧な絵に優しさと気配り、お人柄のよさを感じています。「継母の心得」を魅力的にしてくださったこと、心より感謝申し上げます。

藤丸先生、「継母の心得」の構成を担当していただき、感謝の念に堪えません。
以前より藤丸先生の作品を拝読しており、大ファンなのですが、「継母の心得」に携わっていただけて夢のようです。
ノベルからマンガにするのは、本当に大変なことだと思いますが、それを上手に昇華してくださり、より読みやすく、面白くしてくださって、感心するばかりです。
いつもネームを拝見させていただくのですが、構成が上手すぎて毎回惹き込まれてしまい、イチ読者として楽しんでいたりします(笑)。
素晴らしい先生方に恵まれ、魅力的なマンガにしていただきましたこと、深く感謝申し上げます。

プロフィール

トール

小説家。2018年よりweb小説を投稿。代表作となる「継母の心得」は、「Renta! マンガ大賞2025」の総合大賞、「みんなが選ぶ!!電子コミック大賞2026」の大賞を受賞。小説は7巻まで刊行されている。