「シドニアの騎士」にもいまだにバレてないネタがいっぱい(瀬下)
──劇場体験の楽しさが伝わってきました(笑)。「BLAME!」はNetflixでも配信されていますが、Blu-rayを買う魅力はどこにあると思いますか?
吉平 買えなかったパンフレットが読めます!
瀬下 弐瓶先生の描き下ろしマンガが読めます! あと劇場で配っていたフィギュアの完全彩色版が付いてきます!
吉平 僕ら、いきなりセールスマンみたいになりましたね(笑)。
──実は私、「BLAME!」のパンフレットが売り切れで買えなかったので、すごく楽しみなんです。
瀬下 申し訳ありません!
吉平 うちのスタッフも買えなくて。さんざん文句を言われました……。
岩浪 Netflixと劇場で同時公開だったでしょう。こんなに劇場に観に来てくれる人がいて、パンフが売れるとは思わなかったんだろうね。あとまだ僕も観てないんですけど、メイキングが収録されてるよね? 何分くらい?
──30分くらいです。
岩浪 僕、異常なまでにメイキングが好きなんですよ。
一同 ははは(笑)。
岩浪 僕がこの映画や音の世界に来たのって、作品を観て、その舞台裏を知りたいという思いから始まってるんですよね。だからメイキングは、僕自身もこれから観るのがすごく楽しみです。あとはやっぱり、Blu-rayだとコマ送りでしっかり、しかも好きなときにいつでも観られるから、何度でもどっぷり浸れる。何度も観るうちにいろんな見方ができると思いますよ。例えばカメラワークに注力して観るとか、ライティングに意識を向けて観るとか。毎度いろんな発見がある、情報量の詰まった作品なので。
吉平 「シドニアの騎士」のときから、Blu-rayを買った人だけが気付けるような細かい仕掛けがたくさんありますからね。もちろん今回の「BLAME!」でも、シボが人工知能を接続して何をしているかとか、霧亥の残弾がどういうふうにチャージされていっただとか、グラフィックスをコマ送りして細かく観ていただけるといろんな秘密が全部わかります。
瀬下 「シドニアの騎士」もいまだにバレてないネタがいっぱいありますからね! まあバレなきゃ意味ないかもしれないんですけど(笑)。でも「BLAME!」のBlu-rayを買ってくれた人が、10年後くらいに気付く……とかでもいいのかなって。観れば観るほど味が滲み出てくるアニメになってほしいです。
吉平 岩浪さんは自らは言わないですけど、音にも相当仕掛けがありますから。例えばシボが腕だけの形態になったとき、シボの音声がちょっとだけよくないんですよ。
岩浪 音作るとき、考えちゃったから。シボの声帯はどこにあるんだろう、腕だけになったときも喋れるなら腕のどっかにも声帯が付いてるんだろうけどって。
瀬下 シボは喉に声帯があって、手首にも声帯があるんでしょうね。
吉平 でも手首のスピーカーは、喉のスピーカーより小さいだろうから音が悪くなるんです。
岩浪 そういう味付けは多少してますね。
アトモスで作らないと、日本の映画音響はどんどん遅れていってしまう(岩浪)
──すごいこだわりですね。音響面で言うと、今回は日本のアニメとして初めてドルビーアトモスを採用しています。従来の音響は前後左右に音が広がっていましたが、ドルビーアトモスでは立体的な音も表現できる。つまり360°で音を体感できる音響システムだとか。
吉平 本当にすごいんですよ! 僕らは2次元の“面”ではなく、3次元の3Dで映像を作っているんです。つまり360°の空間モデルを用意して、そこにキャラクターたちを配置して動かして、それをカメラで撮影して皆さんにお届けしているわけですけども、岩浪さん率いる音響チームが非常に正しい理解と適切な配置で音を作ってくださっている。例えばづるが話している画面のとき、セーフガードは左上の空間で歩いている……みたいな音を僕らが意図した通りに配置してくださって、「BLAME!」の世界に没入できるように仕上がっている。「前」とか「後ろ」とか雑な配置じゃなくて、左斜め上にいるキャラクターはその方向から音が聞こえて、しかもそのキャラクターが歩けば音も一緒に移動してくる。画面内にいなくても音でその空間にいる存在を感じる。素晴らしいミックスなんです。
瀬下 僕はあまりに音が面白くて劇場で目をつぶっていました。
吉平 ちゃんと映像のチェックしてくださいよ(笑)。
──岩浪さんにとって、ドルビーアトモスでの映画作りは念願だったとうかがっています。
岩浪 2013年に公開された「ゼロ・グラビティ」をアトモスで観てからずっと、「この音声の仕様はすごい。これで作らないと、日本の映画音響はどんどん遅れていってしまう」という思いがあって、劇場作品を手がけるたびに「アトモスでやらせてくれ」って言い続けてきたんです。それが「BLAME!」で叶って、これはなんとしても成功させなくてはならないと思いました。
家庭でもドルビーアトモスにチャレンジしてほしい(岩浪)
──ドルビーアトモスで映画を上映できる劇場はまだ数が多くなく、「BLAME!」だと名古屋のミッドランドスクエアシネマ、イオンシネマ幕張新都心、それからアースシネマズ姫路の3館。それから重低音が得意な、いわゆる“爆音系”の劇場7館は、岩浪さんが直々に音響の調整をされたとか。
岩浪 ええ、以前から僕が懇意にさせていただいている劇場が全国に何館もありまして、「BLAME!」の上映が始まるだいぶ前から映画館の支配人さんたちに「今度こういう映画をやるんです」と伝えていて。お声がけしたすべての映画館の方たちが、本作の上映を決めてくださったんです。なのでその劇場でしか聴けない特別な仕様を、調整できる範囲で設定しました。
瀬下 言うなれば、岩浪音響監督が直々にチェックしたお墨付き。ちゃんとそれらの劇場には「東亜重音」の認定証書が展示してあるんですよ。
岩浪 ダビングと言って、音の仕上げをやってるときに弐瓶さんが立ち会われてて。そのときに「特別に調整した劇場の音響を、(弐瓶作品に共通して登場する企業である)東亜重工のパロディで東亜重音って呼びたいんですけど」って言ったら「いいっすね!」となって、その場でロゴも考えてくれて。「ちゃんと清書にして送りますんで」と、後日本当にカッコいいロゴを送ってくれました。そしたらそれをポリゴンさんがさらにカッコいいポスターに仕上げて、東亜重音の劇場に送って飾っていただいたんです。ポスターだけだとなんのことだかわからないかもしれないから、東亜重音について書いた認定証書も一緒にお送りしました。
──Blu-rayの音声仕様には「東亜重音仕様のドルビーアトモス」と記載してありますが、家でもドルビーアトモスで再生できるんですか?
岩浪 環境次第なんですけどね。ドルビーアトモスホームという家庭向けのドルビーアトモスがあって、今は3万円代からAVアンプが出てるんですよ。
──思ったより手軽ですね。
岩浪 そうなんです。それに5.1.2chのスピーカーを天井に2つ……必ずしも天井じゃなくても大丈夫です。本棚の上とかちょっと高いところに置いていただければ、それだけですごく臨場感が変わるので割と気軽に、そんなに構えなくても再生できます。もちろんオーディオビジュアルが好きな方や、ハイスペックなホームシアターをお持ちの方にもご覧になっていただきたいんですが、これを機会に揃えてみようかなという方にもぜひチャレンジしてほしいですね。なかなかそういうシステムが組めないという方も、今回Blu-rayにステレオの音声が入っていますけど、それも非常に立体的な仕上がりなんです。例えば大きな音を出せないという方も、ちょっといいヘッドホンで聴いていただくだけで、自分の周りに音像が広がるような音響設計になってますよ。
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「BLAME!」は登場人物がボケ倒してる作品です(瀬下)
- 劇場版「BLAME!」Blu-ray
- 2017年11月1日発売 / キングレコード
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初回限定版 [Blu-ray2枚組]
10584円 / KIXA-90762 -
通常版 [Blu-ray]
6264円 / KIXA-762
世界が震撼したハイスペックなフルデジタル映像はそのままに、初回限定版では、音響は5.1chサラウンドに加え、日本アニメのブルーレイディスクとしては初となる“ドルビーアトモス”を採用。音響監督自らが調音した超高音質“東亜重音”仕様のドルビーアトモスとなり、環境次第で極上の音響体験が可能だ。また、監督&プロデューサー陣による本編オーディオコメンタリーも収録。映画の裏話や制作秘話についてじっくりと語る。
- 音声仕様
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- ①日本語(本編)ドルビーTrueHD ドルビーアトモス
- ②日本語(本編)リニアPCM(ステレオ)
- ③日本語(コメンタリー)リニアPCM(ステレオ)
- ④英語(本編)ドルビーTrueHD(5.1chサラウンド)
※ドルビーアトモスは現行のBDプレーヤーと対応のサラウンドシステムで再生可能。ドルビーアトモス対応のサラウンドシステムを使っていない場合は、自動的に最適な方法で再生される。
- 本編DISC収録内容
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- 「BLAME!」映画本編
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- 音声特典
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- 本編オーディオコメンタリー「裏ブラム!」 出演:瀬下寛之(監督)、吉平"Tady"直弘(副監督)、守屋秀樹(エグゼクティブプロデューサー)
- 本編英語吹替え音声
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- 映像特典
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- 本編英語字幕
- 各種予告編&SPOT映像集
- 初回限定版特典DISC収録内容
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- 映像特典
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- MAKING OF BLAME! 監督ほか主要スタッフへのインタビューを含む、「BLAME!」本編制作の舞台裏に迫る特別映像。
- GALLERY OF BLAME! ラフスケッチ、コンセプトアート、カラースクリプト、キャラクター設定画などの貴重な資料の静止画ギャラリー、台本データほか収録。
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- 初回限定版封入特典
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- 弐瓶勉描き下ろしコミックス 原作・総監修の弐瓶勉による、新作描き下ろし短編マンガ。映画のその後を描く、ここでしか読めないレア内容。
- 1/35スケールフィギュア全5種【彩色仕様完全版】<霧亥、シボ、サナカン、セーフガード(駆除系TYPE-01&02)> 映画前売り特典&入場者プレゼントで好評を博したフィギュアが全種類彩色仕様となった豪華コンプリート版。
- 縮刷パンフレット 各地で売切れ続出となった映画パンフレットが、縮刷版として復活。
- 劇場版「BLAME!」
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- スタッフ
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- 原作:弐瓶勉『BLAME!』(講談社「アフタヌーン」所載)
- 総監修:弐瓶勉
- 監督:瀬下寛之
- 副監督/CGスーパーバイザー:吉平"Tady"直弘
- 脚本:村井さだゆき
- プロダクションデザイナー:田中直哉
- キャラクターデザイナー:森山佑樹
- ディレクター・オブ・フォトグラフィー:片塰満則
- 美術監督:滝口比呂志
- 色彩設計:野地弘納
- 音響監督:岩浪美和
- 音楽:菅野祐悟
- 主題歌:angela「Calling you」
- 音楽制作:キングレコード
- アニメーション制作:ポリゴン・ピクチュアズ
- 製作:東亜重工動画制作局
- キャスト
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- 霧亥:櫻井孝宏
- シボ:花澤香菜
- づる:雨宮天
- おやっさん:山路和弘
- 捨造:宮野真守
- タエ:洲崎綾
- フサタ:島﨑信長
- アツジ:梶裕貴
- 統治局:豊崎愛生
- サナカン:早見沙織
©弐瓶勉・講談社/東亜重工動画制作局
- 瀬下寛之(セシタヒロユキ)
- 1967年生まれ。1989年リンクス入社。映画「河童」、「パラサイトイブ」やTVCM、ゲーム映像など、さまざまな分野のCG/VFX制作でCGディレクター/デザイナーとして従事。1997年に渡米し、スクウェアUSA製作の映画「ファイナル・ファンタジー」(2001)にてアートディレクターを担当。2000年に帰国し、スクウェア(現スクウェア・エニックス)にて「ファイナルファンタジーX」(2001)、「ファイナルファンタジーXI」(2002)、「キングダムハーツ」(2002)、「ファイナルファンタジーX-2」(2003)などゲームムービー制作のデザイナー/VFXスーパーバイザーを手がける。2004年、カシオエンターテイメント株式会社設立に参画し、エグゼクティブ・ディレクターを務める。松本人志監督作品「大日本人」(2007)、「しんぼる」(2009)にてVFX監督を担当。2010年、ポリゴン・ピクチュアズに入社。「シドニアの騎士」(2014)副監督、「シドニアの騎士 第九惑星戦役」(2015)監督、「亜人」(2015~2016)総監督、「BLAME!」(2017)監督、「GODZILLA」(2017公開予定)監督。
- 吉平"Tady"直弘(ヨシヒラタダヒロ)
- 1999年、ポリゴン・ピクチュアズに入社。CGアニメーションの編集、合成、フィニッシングを専門分野として数多くの作品に関わり高い評価を得る。また映像設計の視覚的検証と編集・仕上げ(フィニッシング)の責任者として、海外テレビシリーズのワークフロー設計や編集システムの構築にもリーダーシップを発揮し、付加価値の高い編集業務の実現に貢献してきた。 2015年以降は編集の枠を超えて、テレビシリーズ「シドニアの騎士 第九惑星戦役」では、副監督/演出として従事。2017年には、副監督を務める「BLAME!」が公開された。
- 岩浪美和(イワナミヨシカズ)
- 1980年代より音響監督としてのキャリアを開始。「ビーストウォーズ」シリーズ、「ガールズ&パンツァー」、「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズなど数多くのアニメの音響監督を務めるほか、監督や脚本を手がけるなど幅広く活躍している。