コミックナタリー Power Push -「青の祓魔師 京都不浄王篇」
加藤和恵が推す、新シリーズに内在する“重さ”
加藤和恵インタビュー
「京都不浄王篇」の持つ「重さ」にフォーカス
──「青の祓魔師」の新作アニメが放送されるのは約5年ぶりということで、待ちわびていたファンも多いと思うのですが、制作はいつ頃スタートしたのでしょう。
担当の林さんから「アニメの新シリーズをやれそうだよ」ってふわっとした感じで話を聞いたのが、2年くらい前ですね。もともとそのときに「2年後くらいになりそう」と言われていたんですが、最初の話から1年近くは何の音沙汰もなくて。ふと「そういえば新シリーズやるって言ってたよな?」と思いだした頃に初見監督や、脚本家の方を交えての打ち合わせがあったんです。そのあとも打ち合わせを続けていたんですが、最初の打ち合わせから半年もかからずに脚本のチェックまで終わりましたね。
──本格的に動き出してからは、かなりのスピード感で制作が進んでいたんですね。
そうですね。打ち合わせのあとは「今頃アニメのスタッフさんはがんばってくれているんだろうなあ」と思いながら仕事をしていて。今年の7月にロサンゼルスで開催された「Anime Expo」でアニメの新シリーズ制作決定を発表させていただいたんですが、そこで初めてアニメの映像を拝見して。「おお! 本当にアニメになるんだな」と、じわじわとやってきたものが、爆発する感じがして高まりました(参照:「青の祓魔師」京都・不浄王編がアニメ化!2017年に放送決定、PVも公開)。
──アニメ制作中、脚本のチェックをなさっていたということですが、「京都不浄王篇」には先生はどのように関わっていらっしゃるのでしょうか?
まずストーリーの方向性や脚本について確認させていただいて、設定画があがってきたら「ここの色はこんな感じですかね」「ここの形がちょっと違います」というやり取りをしていました。絵コンテの段階からは、ほぼ「お任せします!」という形です。
──本編の部分以外ですと、今回加藤先生はキービジュアル第1弾をご自身で執筆なさっていますし、第2弾でもレイアウトを担当されていますよね。
「ビジュアルを描いていただけないですか?」という依頼があったので、1枚描かせていただいて、第2弾についても「ラフ画を描きますよ!」と私の方から提案させてもらったんです。キャラクターデザインの佐々木(啓悟)さんと、色を着けてくださるスタッフの方がすごくカッコよく仕上げてくださって。
──加藤先生が描かれたビジュアルでは、どのキャラクターも悲痛な表情を浮かべていますよね。これにはどんな理由があるんでしょう。
今回の「京都不浄王篇」がそんなに明るい話ではないので、前シリーズの少年マンガのバトルものという雰囲気のビジュアルにするよりは、「暗さ」「つらさ」推しで描きたいと最初の段階で提案させていただいて。7月に公開されたティザービジュアルについてはアニメ化発表に合わせて公開するものということもあり、明るめの仕上がりになっているんですが、キービジュアルについては「もうちょっと暗い雰囲気にしたほうがいいんじゃないかな?」と思ったんです。初めて作品に触れる方が、「ビジュアルを見て明るい話だと思っていたら、重い話だった」と観るのをやめてしまうんじゃないかと(笑)。
──(笑)。看板に偽りのないものを見せたいと。
そうですね。あと劇中ではそれぞれのキャラクターが悩んでいるシーンも結構描いているので、観てもらう前にそこにフォーカスしてもらえるといいなというのもあって。ほかにもアイデアはあって、方向性についてアニメの制作スタッフの方と相談していたんですが、京都編のエピソードに含まれている「重さ」の部分を推すのがいいんじゃないかということで、このイラストがビジュアルになりました。
京都編を描いているときは「しまったー!」と言いたくなることばかり
──原作の京都編は「青の祓魔師」初の長編シリーズでしたが、そもそもどういった経緯でスタートしたのでしょう。
「そろそろ長編をやろうかな」という漠然とした考えだけで始めたので、描いているときは本当に「しまったー!」と言いたくなることばかりでしたね。もともと京都を舞台にしたエピソードを描こうと思っていたので、連載初期の段階から京都編のキャラクターをストーリーに登場させていましたし、漠然とやりたいことも決まっていたんですが、始めてみたら「ざっくりとした主軸しか決まっていない、どうしよう」みたいな感じで(笑)。経験を積んだ今ならもうちょっとやりようがあったなあと思うんですけど、当時はとにかく日々技術不足を痛感する気持ちでやっていました。
──京都を舞台にしたのにはどういった理由が?
妖魔退治ものだと、京都はいろいろな作品で舞台になっていますし、やっぱりこのマンガでも設定的にやるべきだとずっと思っていたんです。「正十字学園の中だけでお話が完結するよりも、外に出たほうがいいよね」って林さんと話していたというのもありました。
──ちょうど原作の京都編がジャンプSQ.で連載されていた時期に、前シリーズのアニメが放送されましたよね。
そうなんです! 京都編で苦労していた時期に、アニメの仕事が重なってすごく追い詰められていた記憶があります(笑)。アニメの佐々木さんの絵がすごく上手くて、「もっとがんばらなきゃ」ってプレッシャーも感じましたし。あと澤野弘之さんの音楽がすごく壮大だったので、「それに合うような」というわけではないんですけど、壮大なエピソードにしてみたいっていうのもあったり。いろいろ大変でしたけどアニメには刺激を受けましたね。
──京都編の途中から、現在ジャンプSQ.で「サラリーマン祓魔師 奥村雪男の哀愁」を連載なさっている佐々木ミノル先生が構成協力として作品に参加なさっていますが、京都編以降、お話はどのように作っているんでしょう。
数カ月に1回、佐々木さんと林さんとでレンタル会議室などを借りたり、1年に1回、泊まり込みでの合宿をしながら先の話を考えています。佐々木さんは私が手塚賞を受賞した時の同期なんですが、ドラマづくりがすごく上手な作家さんで、作品の事情も把握してくれているので、構成協力という形で参加してもらうことになったんです。ギャグセンスもすごくあるし、キャラクターについても正確に把握してくれている方なので、そのまま「奥村雪男の哀愁」を描いていただくことになって。
──合宿ではどういったことをお話になるんですか?
朝から晩までマンガの話です(笑)。私が今後描きたいエピソードをテキストで書いた紙を壁に貼っていって、「ここは順番入れ替えたほうがいいんじゃないかな?」ってうんうんと悩んだり。最近は連載で物語の核心を突くようなエピソードが増えてきたので、約週1回、佐々木さんと会って「このエピソードはもっと早めにやるべきだったな!」とか「もう、1人の頭じゃ収集がつかないわ」って愚痴ったりしながらやっています。佐々木さんには本当にお世話になってます……!!
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- テレビアニメ「青の祓魔師 京都不浄王篇」
放送情報
- MBS:毎週金曜26:10~
- TBS:毎週金曜25:55~
- CBC:毎週金曜26:50~
※特別編成のため第2話は13分押し、第3話は2分前倒し - BS-TBS:毎週金曜24:00~
- amazonプライム:毎週金曜配信
人間の住む「物質界(アッシャー)」と悪魔が住む「虚無界(ゲヘナ)」。本来は干渉することすらない二つの次元だが、悪魔はあらゆる物質に憑依し、物質界に干渉していた。しかし人間の中には、そんな悪魔を祓う「祓魔師」が存在した──。
魔神(サタン)の落胤として生まれた奥村燐は、己の出自を隠し祓魔師になることを決意。正十字学園内部に存在する祓魔師養成機関・祓魔塾に通っていたが、地の王・アマイモン襲撃の際、魔神の落胤であることが露見してしまう。魔神の「青い炎」を恐れ、燐と距離を置く仲間たち……。
そんな最中、学園最深部に封印されていた「不浄王の左目」が何者かに盗まれてしまい、燐たちは予期せぬ事態に巻き込まれていく──。
スタッフ
原作:加藤和恵(集英社「ジャンプスクエア」連載)
監督:初見浩一
シリーズ構成:大野敏哉
キャラクターデザイン:佐々木啓悟
音楽:澤野弘之、KOHTA YAMAMOTO
制作:A-1 Pictures
キャスト
- 奥村燐:岡本信彦
- 奥村雪男:福山潤
- 杜山しえみ:花澤香菜
- 勝呂竜士:中井和哉
- 志摩廉造:遊佐浩二
- 三輪子猫丸:梶裕貴
- 神木出雲:喜多村英梨
- クロ:高垣彩陽
- 霧隠シュラ:佐藤利奈
- 勝呂達磨:浦山迅
- 志摩柔造:小西克幸
- 志摩金造:谷山紀章
- 宝生蝮:M・A・O
- 藤堂三郎太:山路和弘
- メフィスト・フェレス:神谷浩史
- 藤本獅郎:平田広明
加藤和恵(カトウカズエ)
7月20日生まれ、東京都出身。赤マルジャンプ2000年SUMMER(集英社)に掲載された「僕と兎」でデビュー。2005年、月刊シリウス創刊号(講談社)より「ロボとうさ吉」を連載する。その後、ジャンプスクエア(集英社)へと活動の場を移し、同誌2009年5月号より「青の祓魔師」を連載開始。同作は2011年にテレビアニメ化、2012年に劇場映画化を果たす。2017年1月よりアニメの新シリーズ「青の祓魔師 京都不浄王篇」の放送がスタートした。
©加藤和恵/集英社・「青の祓魔師」製作委員会・MBS