コミックナタリー PowerPush - 映画「ベルセルク 黄金時代篇II ドルドレイ攻略」
「青エク」の加藤和恵から熱いラブコール&イラスト到着 ガッツとグリフィスの絆を振り返る徹底ストーリーガイド
連載期間22年を超えた三浦建太郎の傑作ダークファンタジー「ベルセルク」。原作の世界観すべてをアニメ化する「ベルセルク・サーガプロジェクト」が始動し、その第1弾として「黄金時代篇」が3部作で公開されている。2月公開のパートIに続き、6月23日には「ベルセルク 黄金時代篇II ドルドレイ攻略」、そして今冬にはショッキングで壮大な「蝕」のシーンが描かれる「ベルセルク 黄金時代篇III 降臨」が公開を控えており、どのような映像化がなされるのか大きな注目を集めている。
コミックナタリーでは、最新作「ドルドレイ攻略」の公開に先駆けて特集記事を展開。「ベルセルク」の大ファンを公言する「青の祓魔師」の加藤和恵に、原作、映画の魅力を訊くインタビューを敢行した。また原作は既読だが「黄金時代篇」のエピソードがうろ覚えになっている読者諸兄も多かろうと思い、主人公ガッツとグリフィスの関係性に焦点をあてたストーリーガイドも用意した。この特集を鑑賞の足がかりにしてほしい。
取材・文/岸野恵加
加藤和恵、「ベルセルク」愛をとことん語る
登場人物がみんな違う視点、価値観を持っているのが気持ちいい
──加藤先生は大の「ベルセルク」好きだと伺ったのですが、作品と出会ったのはいつ頃ですか。
高校生の頃に深夜アニメを観て初めて知りました。アニメとマンガ全巻をすべて消化し終えるまで結局10年くらいかかったので、本当にずっとリアルタイムで追っかけてきたディープなファンの方を前にしたら、私の好き具合なんて申し訳ない程度なんですが……。
──「ベルセルク」のどのあたりに惹かれたんでしょうか。
もともと映画の「グラディエーター」に始まり、「ロード・オブ・ザ・リング」とか、合戦シーンが登場したりファンタジーの世界観を持つ映画やゲームが大好きだったんです。そういう映画が流行りだしたのは、CGで兵士を増殖できるようになったわりかし最近からな気がしますが……、「ベルセルク」はそんなCG技術がない時代から、合戦シーンやアクションシーンをあれだけの熱量で描いてきたというのがすごいなと。
──加藤さんは、そうした合戦シーンを描いてみようと思ったことは?
描けるものなら描いてみたいんですが、自分のちっぽけな画力、演出力では挫折してしまうモチーフです。合戦シーンのある作品は描くのにスタミナがいるというか、かなり大変だと思うので、三浦建太郎先生のセンス、タフさを尊敬しております! あと「ベルセルク」はスプラッタまがいの激しいアクションシーンや、美しいキャラクター造形、繊細な人間ドラマとエロという相反する性質がぶつかり合ってる作品バランスも大好きです。とにかくもう、逐一ツボであるということしか……うまく言えません!(笑)
──作品への愛情があふれんばかりに(笑)。加藤さんが創作するにあたって「ベルセルク」から影響を受けている部分ってありますか?
うーん、影響というとちょっと違うかもしれないのですが……、ガッツとグリフィス、キャスカの関係性は、王道のキャラクターバランスとして参考になる部分があります。私は正反対の性質を持つキャラの対比だったり、三角関係的な構図が好きなので。
──なるほど。「青の祓魔師」で言うと燐と雪男の対比は近いものがあるかもしれないですね。キャラクターと言えば、加藤さんは以前季刊エス(飛鳥新社)のインタビューで、「青エク」はキャラそれぞれの個性をしっかり作り分けることを前提に始まった作品とお話していました。「ベルセルク」のキャラ造形についてはどう思いますか。
出てくる登場人物がみんな違う視点、価値観を持っているのが気持ちいいです。「黄金時代篇」に出てくる鷹の団メンバーのキャラクターは本当によくできていて、どのキャラクターもメリハリがあって魅力的ですよね。
──特に好きなキャラクターと言うと…。
コルカスとジュドー! どこか浮世離れしたガッツやほかのメンバーにすごく人間くさい視点をくれるキャラクターたちで、こんなキャラ、いつか作ってみたいっていつも思います。「黄金時代篇」はどのキャラも大好きですね。それ以降だと、セルピコがめちゃめちゃ好きです。
──そういえばセルピコやファルネーゼ、シールケといった「黄金時代篇」以降のキャラクターも、パートI「覇王の卵」のオープニングにちらりと登場してましたね。
それ気になりました! 「ベルセルク」の映像展開、今後どこまで続くのかしら!?と……。ガッツとセルピコ、正反対の性質を持った剣のバトルはものすごくワクワクします! セルピコにはもっと登場してもらいたいなぁ。でも結局、キャラの中では主人公のガッツが一番好きかもしれません。好きな作品は、たいてい主人公が一番好きなんです。
本物の「ダークファンタジー」とは、こういう作品のことを言うんです
──パートIの「ベルセルク 黄金時代篇I 覇王の卵」は劇場に足を運んでご覧になったそうですが、いかがでした?
マンガともTVシリーズとも一味違う贅沢で精密な作りで、とても見応えがあって面白かったです。あとTVシリーズのサントラが大好きだったので、またオープニングで平沢進さんの音楽が聴けてうれしかったですね。
──お気に入りのシーンはありましたか?
キャスカが「お前はあの頃と何も変わっちゃいない!」って叱責すると、ガッツが「俺はもうあの頃の俺じゃねえ!」って感情的に切り返すシーンが好きです。脚本のまとめ方がうまいなっていうのと、あんまり喋んないガッツに感情移入できるいいシーンだなぁと。冒頭のバズーソやゾッド、ガッツが鷹の団と初めて一戦交えるあたりのアクションも、さまざまな動きがすごく丁寧に描写されててワクワクしました。あと、ガッツの視点でのトラウマ回想シーンも印象的でしたね。
──わ、たくさん挙げていただいて! 隅々まで凝視されてたんですね。今回公開されるパートIIではガッツとグリフィスの訣別、冬公開のパートIIIではショッキングな「蝕」のシーンがいよいよ登場します。どのようなアニメ化を期待しますか。
TV bros.(東京ニュース通信社)のインタビューかなにかで、(窪岡)監督が「逃げない!」ってことと、「パートIIIでは、お客さんには後味悪く帰っていただく」というようなことを仰っていたかと思うのですが、その覚悟が、熱いな!ロックだな!(笑)と思ったんです。どのくらいまで“攻めて”こられるのか、そこをものすごく楽しみにさせていただきます!
──この映画で初めて「ベルセルク」に触れる若い世代も多いと思います。最後に、まだこの作品を知らない人にも届くよう、「ベルセルク」への熱いラブコールをお願いします。
私が今描いているマンガは、たまに「ダークファンタジー」って形容していただくことがあったのですが、それがいっつも、違うよなー恥ずかしいなーと思ってました。なぜなら本当の「ダークファンタジー」マンガとは、「ベルセルク」を置いてほかにないから。「ダークファンタジー」とは、こういう作品のことを言うんです! 本物の「ダークファンタジー」とアクションが見たければ、「ベルセルク」を観て、読んでみてほしいですね。