□字ック「滅びの国」山田佳奈×吉本菜穂子×三津谷亮|祝・本多劇場初進出!□字ック、結成8年目の決意

旗揚げから8年。2018年1月、□字ックがついに本多劇場に初進出する。3年ぶりの新作「滅びの国」で主宰・山田佳奈が描くのは、出張型の女性用風俗を通じて出会った主婦と青年の物語。本作の主軸を担う主婦・透子役に吉本菜穂子、青年・祥示役には俳優集団D-BOYSの三津谷亮がキャスティングされた。

このたびステージナタリーでは、脚本・演出の山田と、□字ック作品に初めて参加する吉本、三津谷の鼎談を実施。顔合わせを控えた11月上旬、小劇場の聖地・下北沢に集った3人は、本公演にかける思いをじっくりと語った。

取材・文 / 興野汐里 撮影 / 玉井美世子

この2人となら“共犯者”の意識が持てる(山田)

──「滅びの国」には、吉本さん、三津谷さん、オクイシュージさん、黒沢あすかさん、そして数百人にのぼる応募の中から選出された方々と、実力派キャストがそろいました。山田さんが吉本さん、三津谷さんのお二人にオファーしようと思ったきっかけは何だったのでしょうか。

山田佳奈 仕事柄多くの作品を観るのですが、その中でもやっぱり吉本さんと三津谷さんのお芝居が心に残っていて、ずっとご一緒したいと思っていたんです。このお二人になら透子と祥示を安心してお任せできるし、なんというか、“共犯者”の意識を持って作品作りができるんじゃないかなと思ってお願いしました。……いやあ、恥ずかしいですね! 面と向かってこういうことを話すのは初めてなので(笑)。

左から三津谷亮、山田佳奈、吉本菜穂子。

──三津谷さんは、今回のオファーを受けていかがでしたか?

三津谷亮 来年2月に30歳を迎えるにあたって、20代最後にいろいろなものを得られる現場なんじゃないかなと思って、今回出演させていただくことを決めました。□字ックさんは、これまでに自分がチャレンジしたことがない色のカンパニーということもあって、少し不安もありますが、楽しみな気持ちが大きいです。

──三津谷さんは今回、女性用風俗で働く青年・祥示を演じます。初めて脚本を読んだとき、ご自身が演じる祥示からどのような印象を受けましたか?

三津谷 祥示くんはとにかく、「ああ」とか「うん」とか相づちが多いですよね。勝手なイメージなんですけど、相づちが多い人って孤独に慣れているようで実は慣れてないのかなと思っていて。1人でいるときの孤独は好きだけど、誰かといるときに間ができてしまうのが怖くて、ついつい相づちを打ってしまうというような。実は僕もそうなんです。祥示くんとは違う理由かもしれないけど、そこが自分と似ている部分なのかなと思いますね。(持参したメモを取り出し)……ちょっと待ってくださいね。僕、忘れん坊で(笑)。思ったことを書き留めてきたんですけど……。

一同 (笑)。

山田 嘘でしょ!?(笑) 真面目! いい人だなあ。

三津谷 (笑)。あとはタバコだったりスマホだったり、何かに頼ったり、依存していないと生きていけない人なのかなという印象を受けましたね。

──一方、吉本さんは、そんな祥示に溺れていく主婦・透子を演じます。

吉本菜穂子 専業主婦である透子にとって、社会との唯一の窓口である旦那さんが自分を見てくれないというのは、すごくつらい出来事だったと思うんです。というのも、私も3年前に結婚して、少しお芝居をお休みしていたときに、これまで身を置いていた世界と分断されてしまった感覚に陥ったことがあって。最初に脚本を拝見したとき、透子は弱さゆえに女性用風俗に頼ってしまったのかと思ったけど、脚本を読み進めていくうちに、実はそうではなくて、彼女は最後まで自分と向き合った強い女性なんじゃないかと思うようになりました。

左から吉本菜穂子、三津谷亮、山田佳奈。

──山田さん自身も、オクイさん演じる透子の夫・渉の不倫相手である高城役を演じます。本作に登場する人物の中で、最もご自身と近い考えを持っているキャラクターは誰でしょうか?

山田 登場人物全員が私の中から出てきた言葉を話しているので、みんなそれぞれ自分に近い存在ではあるんですが、やっぱり透子と祥示は近いかなって思います。そもそも今回恋愛の話を書こうと決めたのは、自分と恋愛の距離感がうまく取れるようになってきたからなのかなと思っていて。若い頃のように好意を持った相手に溺れることもなく、自分自身の弱みや欲求にも自然と向き合えるようになったというか、いい距離感で物事を受け止められるようになった今だからこそ、恋愛をテーマに書いてみたかった。30歳も超えてくると、これまでに出会ってきた人の中には、この人と家庭を築いていきたいなと思った人もいるし、きっとこの場限りの関係になるんだろうなっていう人もいたりして。そんな中で、人って自分の欲求を満たすためだけに、ちょうどいい相手を欲しているのかな、恋愛なんてそもそもそういうものかもしれないと、あるときふと思っちゃったんです。それってすごく切ないけど、人間の本能的な欲求でもありますよね。これは脚本に書けなかったことなんですけど、ある40代の女性が「恋愛ってドラッグだよね」「つらい恋愛こそ抜くときキツいのよ」って「トレインスポッティング」みたいなことを言っていて(笑)。まさにそうだなって納得したんです。

透子にとって女性用風俗は、社会とつながるための手段(吉本)

──そんな中、作品の舞台を女性用風俗にしようと思ったのはなぜでしょうか。

山田 □字ックの初期作品では、デリヘルの待合室だったり、ラブホテルだったり、女性の性の部分に焦点を当てている作品が多かったんです。その流れもあるかもしれないんですけど、女性用風俗を利用する人たちが自分の欲望を隠しながら、そういった場所で欲求を満たしているっていう現状に興味を持って。自分に欲があることを知られたくない、でも本当はこんなことがしたいっていう切実な思いを抱えながら生きてる女性が少なからずいるというのは、今の世相を表しているというか、すごく社会的な問題だと思ったんです。

──祥示が勤める女性用風俗を透子が利用することによって、透子と祥示の2人は出会います。今作の題材が女性用風俗だと知ったとき、どういった印象を受けましたか?

吉本菜穂子

吉本 社会とつながりたいという欲求を満たす手段として、透子がたまたま選んだのが女性用風俗だっただけで、例えばダンスサークルに入るとか、お友達を作るとか、ほかにもいろいろな選択肢があったんじゃないかなって。だから透子は決して突飛な女性ではなく、普遍的な悩みを抱えた人なのかなと感じました。

三津谷 僕は、「そんな世界あるんだ!」って衝撃を受けました。山田さんと初めてこのテーマについて話しているとき、僕のあまりの食い付きぶりにマネージャーが心配するくらいで(笑)。僕は行ったことないですけど、男性の場合、そういうところに行く理由は単純で。でも女性は求めているものが少し違うんだなと「滅びの国」の脚本を読んで思いました。身体だけの関係から始まったとしても、女性の場合は情が湧いてお金だけでは割り切れなくなってきて、会えば会うほど中毒になっていってしまう。実際、女性用風俗で働いてる人ってどんな方々なんでしょうね……? なんでこの職業を知ったのか、どういう心境で働いているのか聞いてみたいなあ。

□字ック「滅びの国」
2018年1月17日(水)~21日(日)
東京都 本多劇場
□字ック「滅びの国」

脚本・演出

山田佳奈

出演

吉本菜穂子、三津谷亮 / 小野寺ずる、日高ボブ美、山田佳奈、大竹ココ、Q本かよ、滑川喬樹 / 大鶴美仁音、小林竜樹、冨森ジャスティン、水野駿太朗、東谷英人、キムラサトル、ホリユウキ / オクイシュージ、黒沢あすか

柏崎絵美子、倉冨尚人、近藤洋扶、三丈ゆき、JUMPEI、照井健仁、難波なう、橋本つむぎ

山田佳奈(ヤマダカナ)
山田佳奈
1985年神奈川県生まれ。レコード会社のプロモーターを経て、2016年に□字ックを旗揚げ。本公演の傍ら、フェス企画「鬼(ハイパー)FES.」や、真心ブラザーズ、フラワーカンパニーズ、BOMI、THE BOHEMIANS、THEラブ人間とのコラボレーションを行うなど、バンド音楽と親和性の高い作品で注目を集めている。16年には初監督作、映画「夜、逃げる」が公開され、17年には「今夜新宿で、彼女は、」で再びメガホンをとった。また堤幸彦プロデュース「上野パンダ島ビキニーズ」の脚本や、パショナリーアパショナーリア「絢爛とか爛漫とかーモダンガール版ー」の演出を担当するなど、外部作品でも活躍中。
吉本菜穂子(ヨシモトナオコ)
吉本菜穂子
1977年埼玉県出身。1998年、劇団チャリT企画の旗揚げに参加し、2004年まで同劇団で活動。同年の「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」や、翌05年「乱暴と待機」をはじめ、劇団、本谷有希子作品への出演で知られるほか、近年ではケラリーノ・サンドロヴィッチ、福原充則、G2、河原雅彦、上村聡史作品などで幅広く活躍している。
三津谷亮(ミツヤリョウ)
三津谷亮
1988年青森県出身。2009年に俳優デビュー。その後、舞台を中心に活躍し、近年はテレビドラマや映画にも多数出演している。主な出演作にはDステ作品のほか、「學蘭歌劇『帝一の國』」シリーズ、「超歌劇『幕末Rock』」シリーズ、「SHOW BY ROCK!! MUSICAL~唱え家畜共ッ!深紅色の堕天革命黙示録ッ!!~」「ミュージカル『黒執事』~NOAH’S ARK CIRCUS~」や、NHK大河ドラマ「真田丸」、テレビドラマ「3人のパパ」(TBS)、映画「ひだまりが聴こえる」など。11月、12月には「超歌劇(ウルトラミュージカル)『幕末Rock』絶叫!熱狂!雷舞(クライマックスライブ)」の公演を控えている。