□字ック「滅びの国」山田佳奈×吉本菜穂子×三津谷亮|祝・本多劇場初進出!□字ック、結成8年目の決意

アイドルだって思われてもいい(三津谷)

──近年山田さんは「夜、逃げる」や「今夜新宿で、彼女は、」といった映像作品で監督を務めるなど、活動の幅を広げていらっしゃいます。例えば音楽の使い方や場面の切り取り方など、外部での創作が今回の劇作や演出に影響を与えた部分はありますか?

山田 自分の創作のプラスになるだろうという単純な動機で映画を撮り始めたんですけど、今、映像をやることがすごく楽しくなっているんです。お世話になっている俳優の先輩に、舞台は一度も褒めてもらったことがなかったのに、映像は出来がいいと褒めてもらって……「なんでだよ先輩! こっちは8年演劇やってきてるんだぞ!」って思いましたけどね(笑)。演劇では引きの全体画を想像しながら作ってきましたが、映画を撮ったことによって、1つの箇所にフィーチャーして作り込める楽しさに気が付きました。でも演出の方法自体は変わってなくて、自分の興味が湧く部分だけが変わった気がします。もちろんこれからも映像はやっていきたいと思ってるんですけど、やっぱり自分のルーツになっているのは演劇だし、自分のホームは劇団だから、一切妥協しない作品を劇団で作り続けていこうと決意できたきっかけにもなりました。正直な話、劇団はもういいんじゃないかなと思っていた時期もあったんです。外部で作品を作れる機会も増えているから、劇団をそんなにがんばらなくてもいいんじゃないかと悩んだこともあったんですけど、そういうのを経てきたからこそ、今は劇団を続けていきたいし、演劇が好きだっていう気持ちを大切にしていきたいですね。

──吉本さん、三津谷さんのお二人も、演劇を主戦場としながら映像作品にも多く出演されています。その経験を踏まえて、改めて思う演劇の魅力とは何ですか?

吉本 役を演じるっていうのは変わらないけど、映像は監督のものっていう意識があるんです。映像の現場では、俳優はスタッフのうちの1人として参加して、撮った素材を監督に料理してもらうというようなイメージですね。対して演劇は、同じように脚本もあって演出も受けるけど、一度幕が開いてしまえば舞台は“俳優のものになる”というか。映像ではある部分に寄ってしまったらほかのところの様子はわからないけれど、舞台だったらそこにいる人の感情をずっと演じ続けることができるし、あとはやっぱり、舞台の幕が開いたときの高揚感がたまらないですね。

三津谷亮

三津谷 高揚感、まさにそうなんですよね。僕は去年くらいから「なんでお芝居してるの?」「あまり演劇が好きそうに見えない」と周りから言われることが多かったんですが、映像作品の撮影でカメラに向かってセリフを言っているときに、「ああ、僕はいつもお客さんのエネルギーを借りて芝居してたんだな」っていうことに気付いたんです。これは俳優をやっていくうえでダメなことなんだろうなと思いつつ、僕は、お客さんが観に来てくださるからこそ芝居を続けられているんだなって。そう考えると、大切な時間を使って劇場に足を運んで来てくれたお客さんとライブ感を共有できるのが、やっぱり舞台のだいご味なのかなって思いますね。

──三津谷さんのブログやTwitterを拝見していると、ファンの皆さんへの細やかな気遣いが伝わってきます。

三津谷 これは素直な気持ちなんですけど、同じ世代の人ですでに我が道を行ってる人たちもいて、そう決めた人たちはブログもSNSも更新しないし、ファンサービスもしない。そんな人にあこがれる一方で、僕は俳優としてのスタートラインも含めて、応援してくれる人がいなかったら今の自分はいないと思っているので、「いつまで媚びを売ってるんだ」って言われても、そこをないがしろにしたくないんです。別にアイドルだって思われてもいいし、媚びを売ってる俳優だって思われてもいい。表現する場所がいただけているから、僕はそれでいいって思うんです。

左から三津谷亮、山田佳奈、吉本菜穂子。

──透子と祥示、物語の主軸を担う2人に、それぞれ芯の強いお二方がそろいましたね。

山田 もうねー、本当によかった(笑)。言葉悪いですけど、今回のキャストは1人残らず、「いい奴だな」って思う人たちばかりなんです。委ねられる人しか集まってない。体育祭みたいなこと言いますけど(笑)、皆さんとなら一丸となって作品を作っていけるんじゃないかなって思います。今から楽しみで仕方ないですね。

□字ック「滅びの国」
2018年1月17日(水)~21日(日)
東京都 本多劇場
□字ック「滅びの国」

脚本・演出

山田佳奈

出演

吉本菜穂子、三津谷亮 / 小野寺ずる、日高ボブ美、山田佳奈、大竹ココ、Q本かよ、滑川喬樹 / 大鶴美仁音、小林竜樹、冨森ジャスティン、水野駿太朗、東谷英人、キムラサトル、ホリユウキ / オクイシュージ、黒沢あすか

柏崎絵美子、倉冨尚人、近藤洋扶、三丈ゆき、JUMPEI、照井健仁、難波なう、橋本つむぎ

山田佳奈(ヤマダカナ)
山田佳奈
1985年神奈川県生まれ。レコード会社のプロモーターを経て、2016年に□字ックを旗揚げ。本公演の傍ら、フェス企画「鬼(ハイパー)FES.」や、真心ブラザーズ、フラワーカンパニーズ、BOMI、THE BOHEMIANS、THEラブ人間とのコラボレーションを行うなど、バンド音楽と親和性の高い作品で注目を集めている。16年には初監督作、映画「夜、逃げる」が公開され、17年には「今夜新宿で、彼女は、」で再びメガホンをとった。また堤幸彦プロデュース「上野パンダ島ビキニーズ」の脚本や、パショナリーアパショナーリア「絢爛とか爛漫とかーモダンガール版ー」の演出を担当するなど、外部作品でも活躍中。
吉本菜穂子(ヨシモトナオコ)
吉本菜穂子
1977年埼玉県出身。1998年、劇団チャリT企画の旗揚げに参加し、2004年まで同劇団で活動。同年の「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」や、翌05年「乱暴と待機」をはじめ、劇団、本谷有希子作品への出演で知られるほか、近年ではケラリーノ・サンドロヴィッチ、福原充則、G2、河原雅彦、上村聡史作品などで幅広く活躍している。
三津谷亮(ミツヤリョウ)
三津谷亮
1988年青森県出身。2009年に俳優デビュー。その後、舞台を中心に活躍し、近年はテレビドラマや映画にも多数出演している。主な出演作にはDステ作品のほか、「學蘭歌劇『帝一の國』」シリーズ、「超歌劇『幕末Rock』」シリーズ、「SHOW BY ROCK!! MUSICAL~唱え家畜共ッ!深紅色の堕天革命黙示録ッ!!~」「ミュージカル『黒執事』~NOAH’S ARK CIRCUS~」や、NHK大河ドラマ「真田丸」、テレビドラマ「3人のパパ」(TBS)、映画「ひだまりが聴こえる」など。11月、12月には「超歌劇(ウルトラミュージカル)『幕末Rock』絶叫!熱狂!雷舞(クライマックスライブ)」の公演を控えている。