ナタリー PowerPush - 手嶌葵
映画「コクリコ坂から」の世界をより身近に シングル&アルバム連続リリース
切ないものはとことん切なく歌っていいし、はっちゃけたものははっちゃけちゃっていい
──そして、主題歌シングルに続き、映画「コクリコ坂から」の世界観を描いた歌集「コクリコ坂から歌集」が7月6日に発売されます。歌集という作品は、手嶌さんの通常のオリジナルアルバムと違いはあるのですか?
デビュー時に「ゲド戦記歌集」を作らせていただいた経験があるので、あまり違いは感じませんでした。歌集の場合は、1本筋の通った物語がきちんとあるんです。でも、ほかのアルバムでもキーワードがあることが多いので、気持ちの上では私のオリジナル作品と変わらないですね。
──そうなんですね。今回、宮崎吾朗監督とシンガーソングライターの谷山浩子さんが歌詞を手掛けられてますが、吾朗監督からは歌についてのアドバイスはありましたか?
明確なアドバイスはありませんでした。私も、歌詞をいただいてからじっくりと読みこんで「こうかな?」と、想像することから始めますから。でも、吾朗さんにお会いする機会は多かったので、レコーディングのときに「この曲を明日録音します」などと伝えたりはしました。その際に、ひとこと「葵ちゃんね、切ないものはとことん切なく歌っていいし、はっちゃけたものははっちゃけちゃっていいんだからね」と、声をかけていただいたことはあります。
──レコーディングでものすごく大変だった曲はありますか?
うーん、やっぱり「朝ごはんの歌」かな。とっても好きな曲なんですよ。
──あの楽しげなノリを出すのは大変かもしれませんね。
そうなんです。レコーディングは、サウンドプロデューサーの武部(聡志)さんと、いつも「せーの!」で録音するんです。それで「朝ごはんの歌」のレコーディングでは、自分が気付かないうちにかなり横に揺れながら楽しく歌っていたようで(笑)。武部さんからは「観ててすごく楽しかった」って言われました(笑)。映画の世界に入り込んでいたのかもしれません。
──「朝ごはんの歌」は、子供たちの間で盛り上がりそうな歌ですね。幼稚園とかで流行ったら素敵ですよね。
「グラグラ」とか「ネバネバ」とか、擬音をたくさん使った歌詞も面白いので、料理のお手伝いの歌として楽しんでもらえればうれしいですね。
2度目でもあるので、緊張ばっかりしてないで自分なりに楽しんでいきたい
──そもそも手嶌さんは、デビュー時からスタジオジブリと深い縁をお持ちですが、手嶌さんにとってスタジオジブリってどんな存在ですか?
ジブリ映画は、皆さんと同じく小さい頃から大好きなんです。何百回と繰り返し観てるくらい。そういう面でも、本当に幸せなデビューをさせていただいたことに感謝してます。そして、2度目のチャンスまでいただけたのは、本当に幸せなことだと思ってます。「ゲド戦記」から5年経ったので、今回は成長した姿を見せたいですね。そして2度目でもあるので、緊張ばっかりしてないで、自分なりに楽しんでいきたいです。
──本作でも、手嶌さんとスタジオジブリによる相性は絶妙だと思いますよ。ちなみに、主題歌のお話はいつ頃聞いたんですか?
忘れもしない去年の私の誕生日でした。その日に「誕生日おめでとう」ってマネージャーさんから電話がありまして。「(事務所の)社長とお食事行きませんか?」って誘ってくださって。「ぜひ!」と足を運んだら、その食事の席で誕生日プレゼントとして、このお仕事の話をしてくださいまして(笑)。
──なんて素敵なサプライズプレゼント! それはうれしいですね。
はい、うれしかったです。今回、主題歌の「さよならの夏 ~コクリコ坂から~」はもちろんですけど、アルバム収録曲の「エスケープ」とか「愛をこめて。海」とか「初恋の頃」とか、ライブでも歌いたい大好きな曲がいっぱいあるんです。やっぱり……なんだろうな、情景をより想像できる曲ばかりで。「初恋の頃」はすごく綺麗な歌だし、「エスケープ」は、本当に難しい曲なんですけど、自分の応援歌だと思っているんです。聴いていただく皆さんにも、この曲で元気になってもらえたらうれしいなと。
CD収録曲
- さよならの夏~コクリコ坂から~
- エスケープ
- 朝ごはんの歌
- 旗
- 春の風
- 懐かしい街
- 並木道 帰り道
- 雨
- 初恋の頃(ALBUMバージョン)
- 赤い水底
- 紺色のうねりが
- 愛をこめて。海
- さよならの夏~コクリコ坂から~(主題歌 別バージョン)
手嶌葵
1987年、福岡県生まれの女性シンガー。2003年と2004年に出身地の福岡県で行われた「TEENS' MUSIC FESTIVAL」協賛のイベント「DIVA」に出場し、そのたぐいまれな歌声で観客を魅了した。その頃彼女が歌ったベット・ミドラーのカバー「The Rose」のデモを耳にした宮崎吾朗監督と鈴木敏夫・スタジオジブリプロデューサーが、2006年公開の映画「ゲド戦記」の主題歌への起用を決定。さらに劇中ヒロイン・テルーの声優も担当し、華々しいデビューを飾った。
2007年2月には2ndアルバム「春の歌集」をリリースし、ライブ活動を開始。並行して精力的な制作活動も続け、オリジナル曲のみならず洋楽カバーアルバムなども発表している。透明感あふれる歌声と豊かな表現力で、多くのファンを獲得。2011年6月には、スタジオジブリとの2度目のタッグとなる映画「コクリコ坂から」の主題歌「さよならの夏~コクリコ坂から~」を、映画公開直前の7月にはスタジオジブリ・プロデュースのアルバム「コクリコ坂から歌集」を発表する。