音楽ナタリー Power Push - 手嶌葵

デビュー10周年、“素の手嶌葵”がつづられた9曲

今年6月にデビュー10周年を迎えた手嶌葵が、9月21日にニューアルバム「青い図書室」をリリースした。

今作には手嶌が作詞した「海を見つめる日」「ワインとアンティパスト」の2曲が収められるほか、前作「Ren'dez-vous」に続きいしわたり淳治が作詞家として参加。さらにアルバムのオープニングとエンディングには彼女が幼い頃から敬愛している加藤登紀子による書き下ろし曲が収録される。“素の手嶌葵”がストレートに反映されているという本作や10周年を迎えた現在の思いについて、本人に話を聞いた。

取材・文 / 大谷隆之 撮影 / 豊島望 ヘアメイク / 吉田友美(Ant)

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本は今の私を培ってくれたもの

──前作「Ren'dez-vous」から約2年ぶりのアルバムですね。今回は「青い図書室」というタイトル通り、9つの物語が収められた短編集のような趣きを感じました。

ありがとうございます。前のアルバムでは“シネマティック”というテーマで、小さい頃から好きだった映画への思いを歌わせていただきました。デビュー10周年の節目に次のアルバムを作ろうと決めたとき、自分にとってもう1つ大切なものである“本”をモチーフにするのはどうかなと思って。本は少女時代から大好きで、今の私を培ってくれたものなので。そこから“秘密の図書室”というイメージが浮かびました。

手嶌葵

──物心付いた頃から、本は身近な存在でした?

はい。母がいつも寝る前に読み聞かせをしてくれていて、その影響が大きかったんじゃないかな。友達との友情物語や、あとは愛についてのお話がお気に入りで(笑)。

──そういえば今回のアルバム収録曲にも、いろいろな形の愛が歌い込まれてますね。特に好きだった本はなんですか?

子供向けの文学全集に入っていた、フランシス・バーネットの「秘密の花園」。最初は母に読んでもらってたんですが、頭の中にワーッと風景が広がる感じがしました。例えばイギリスの田園地方の暗くて霧深い荒地とか。古い屋敷と、壁で囲われた庭園。そこに子供だけで入っていくワクワク感とか……今でもはっきりと覚えています。そこからは同じ作者の本を探し、自分でいろいろ読むようになって。私にとっては大事な原点っていうのかな。

──成長していく上で影響も受けました?

うん。受けた気がします。「秘密の花園」の主人公は、メアリーというつむじ曲がりの女の子なんですね。最初はすごくワガママで孤独なんですけど、やがて友達ができ、自分なりの居場所を見つけることで、少しずつ成長していく。私も小さい頃は、あんまり素直で可愛らしい子供ではなかったので。

──そうだったんですか。

でした(笑)。なので変な言い方ですが、「秘密の花園」を読んで開き直れた感はあったのかもしれません。世界は広く、世の中にはいろんな人たちがいて、ちょっぴりひねくれた子を受け入れてくれる場所もあるんだなって。

──それって、児童文学の大事な役割ですよね。

だと思います。

皆さんもぜひ、歌詞カードを見ながら一緒に歌ってくださいね

──今作のジャケットのイラストも、どこか「秘密の花園」のイメージとつながっているような……。

手嶌葵

そうなんです。「Ren'dez-vous」と同じく初見寧さんにお願いしたんですが、2人で「ここに門があって、こっちに花園の入り口があって」とキャッキャと笑いながらアイデアを出し合って。ジャケット制作はとにかく楽しかったです。

──収録曲を聴くと、歌詞の中に青、白、黒などの色が散りばめられています。アルバムタイトルは「青い図書室」ですが、アルバムのテーマカラーを青にしたのには、何か特別な理由があったんですか?

いえ、シンプルに青が好きなのと、自分の名前が葵なので(笑)。ダジャレじゃないですけど、“アオイ図書室”がいいかなと。

──そうだったんですね。前作と同じく、今回も手嶌さんのセルフプロデュース作品です。歌詞だけでなく旋律やサウンドにも、イラストに似てメランコリックで翳りのある雰囲気を感じました。これは作っていく過程で自然に?

そうですね。ただ作詞家、作曲家の方々にお願いした際、私がお伝えしたイメージがそもそも暗めだったのかもしれません。なんだろうな……今の自分のモードとして、わりと落ち着いた雰囲気のものを歌いたいという気持ちが強くて。きっと作り手の方々は、そういう私の気分も汲み取った上で曲を作ってくださったんだと思います。

──作詞面では、前のアルバムに続きいしわたり淳治さんが「白薔薇のララバイ」「ナルキスと人魚」「ミス・ライムの推理」「Handsome Blue」の4曲を手がけています。どれもストーリー性が強く、童話やおとぎ話を思わせる世界観で。

淳治さんの書かれる詞って、言葉そのものはシンプルなのに、実際に歌ってみると想像がフワーッと広がる感覚があるんです。「皆さんもぜひ、歌詞カードを見ながら一緒に歌ってくださいね」とお願いしたくなるくらい(笑)、情景が目の前に広がっていく。なので書物がテーマのアルバムを作ろうと決めたときから、絶対にお願いしようと決めていました。

ニューアルバム「青い図書室」 / 2016年9月21日発売 / Victor Entertainment
「青い図書室」
初回限定盤 [2CD] 3780円 / VIZL-1016
通常盤 [CD] 3240円 / VICL-64584
CD収録曲
  1. 想秋ノート
  2. 白薔薇のララバイ
  3. ナルキスと人魚
  4. 海を見つめる日
  5. 蒼と白~水辺、君への愛の詩~
  6. ワインとアンティパスト
  7. ミス・ライムの推理
  8. Handsome Blue
  9. 白い街と青いコート
初回限定盤付属CD収録曲

[Aoi Teshima 10th Anniversary Concert]
Live at KATSUSHIKA SYMPHONY HILLS on May 28, 2016

  1. 岸を離れる日
  2. 朝ごはんの歌
  3. 1000の国を旅した少年
  4. ちょっとしたもの
  5. 瑠璃色の地球
  6. 風の谷のナウシカ
  7. 明日への手紙
手嶌葵 10th Anniversary Concert(※終了分は割愛)
  • 2016年10月2日(日)
    大阪府 NHK大阪ホール
  • 2016年11月20日(日)
    愛媛県 土居文化会館(ユーホール)
  • 2016年11月23日(水・祝)
    兵庫県 ライフピアいちじま大ホール
  • 2016年12月10日(土)
    埼玉県 大宮ソニックシティ 小ホール
  • 2016年12月18日(日)
    東京都 中野サンプラザホール
  • 2016年12月24日(土)
    神奈川県 相模女子大学グリーンホール
手嶌葵(テシマアオイ)
手嶌葵

1987年、福岡県生まれの女性ボーカリスト。2003年と2004年に出身地の福岡県で行われた「TEENS' MUSIC FESTIVAL」協賛のイベント「DIVA」に出場し、その個性的な声で観客を魅了した。その頃に彼女が歌ったベット・ミドラーのカバー「The Rose」のデモを耳にした宮崎吾朗とスタジオジブリのプロデューサー鈴木敏夫が、2006年公開の映画「ゲド戦記」の主題歌の歌唱を依頼。さらに手嶌は劇中ヒロイン・テルーの声優も担当し華々しいデビューを飾った。2011年6月にスタジオジブリとの2度目のタッグとなる映画「コクリコ坂から」の主題歌を表題曲としたシングル「さよならの夏~コクリコ坂から~」を、映画公開直前の7月にスタジオジブリがプロデュースしたアルバム「コクリコ坂から歌集」をリリース。2012年にはカバーアルバム「Miss AOI - Bonjour,Paris!」を、2014年7月に10thアルバム「Ren'dez-vous」を発表した。2016年1月に「Ren'dez-vous」収録曲の「明日への手紙」のリアレンジバージョンがフジテレビ系月9ドラマ「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」の主題歌に使用され、2月に同曲をシングルリリース。4月にはタイアップ曲やトリビュート参加曲を集めたアルバム「Aoi Works ~best collection 2011-2016~」を発売した。6月にデビュー10周年を迎え、9月にニューアルバム「青い図書室」を発表。10月公開の映画「永い言い訳」では挿入歌として、ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル作曲のオペラに登場する楽曲「Ombra mai fù」を歌唱している。