ナタリー PowerPush - 手嶌葵

映画「コクリコ坂から」の世界をより身近に シングル&アルバム連続リリース

手嶌葵が、ニューシングル「さよならの夏 ~コクリコ坂から~」をリリース。また続けてニューアルバム「コクリコ坂から歌集」を発表する。シングルは、7月16日に全国公開されるスタジオジブリの最新アニメ映画「コクリコ坂から」の主題歌に起用。2006年公開の映画「ゲド戦記」挿入歌「テルーの唄」でデビューを飾った手嶌にとって、宮崎吾朗監督との2度目のコラボレーションとなる楽曲だ。そしてアルバムには、吾朗監督が歌詞を手がけ、映画「コクリコ坂から」の世界観を描いた全13曲を収録。ノスタルジックな雰囲気の中、普遍的な愛のかたちを描く音絵巻に仕上がっている。手嶌葵によるピュアな歌声と、映画の世界観が美しく重なるハーモニーを堪能できる作品だ。

今回ナタリーでは作品リリースを記念し、手嶌にインタビューを実施。スタジオジブリ新作映画「コクリコ坂から」にまつわるエピソードや、アルバム制作秘話を存分に語ってもらった。

取材・文/ふくりゅう(音楽コンシェルジュ)

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何かひとつ手間をかけることが、少しうらやましいなって

私、実家が宮崎で、このあいだ帰ってたんです。それでこれ、ちょっとしたお土産なんですけど、どうぞ。

──えっ、アーティストさんにお土産をいただくなんて! ありがとうございます。暑かったですか?

暑かったですね。台風が近づいてるので風が強くって。でも、こっち(東京)のほうが暑いかもしれませんよ。

──そうなんですねー。ところで、スタジオジブリの新作映画「コクリコ坂」の主題歌「さよならの夏 ~コクリコ坂から~」がとっても素晴らしかったです。まだ完成前らしいですけど、映画はもうご覧になられたんですか?

映画本編で声優として小さな役をいただいているので、脚本を読ませていただきつつ、少しだけですが観させていただきました。

──物語は、手嶌さんが生まれる前の1963年、東京オリンピック開催を目前に控えた時期の横浜の学校を舞台としてるんですよね?

はい。映画を観て思ったのは、当時と比べて、今の世の中は便利な時代になったんだなということで。冷蔵庫やテレビなどは普通に家にある時代なんですけど、食事を作ったり学校に通ったりするのに、ちょっとした不便があるんですね。でも、その少しの努力を楽しんでるように見えたんです。昔の方は、ご飯をより美味しく炊きたいとか、より楽しく遊びたいとか、生活を楽しむために何かひとつ手間をかけてるなと。そんなところが、少しうらやましいなって思いました。

切なさや優しさを大切にしながら表現したい

──心のつながりが大切といわれる今の時代、とても参考になりそうなストーリーですよね。そして、主題歌となる「さよならの夏 ~コクリコ坂から~」は、森山良子さんが昭和51年にリリースされた名曲で、宮崎駿さんが愛聴されていた楽曲だそうですね。

はい、そうなんです。原曲での森山さんの歌い方はとてもストレートで力強く、でも優しくて。それでいて歌詞の内容はとても切ないっていう……。恋のうれしさや切なさをストレートに歌われているなぁって感じて。で、私は今の時代にこの歌を歌わせていただく20代として、どういうふうに歌うべきか考えてみたんです。そこで、私なりの恋愛表現ではないですけど、この曲で歌われている切なさや優しさを大切にしながら表現したいなって思ったんですね。

──確かに、すーっと心に入ってくる優しさを感じられる歌だと思いました。宮崎駿さんとは、この曲についてお話はされました?

レコーディング前に、一度スタジオジブリさんにお邪魔したんです。その際に「前を向いてしっかりと歩いている女の子をイメージしてほしい」とアドバイスをいただきました。この曲は、(宮崎)駿さんと(宮崎)吾朗さん、鈴木(敏夫 / プロデューサー)さんがいらっしゃる前でデモを録ったんですよ。

ニューシングル「さよならの夏 ~コクリコ坂から~」 / 2011年6月1日発売 / 1000円(税込) / ヤマハミュージックコミュニケーションズ / YCCW-30026

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CD収録曲
  1. さよならの夏~コクリコ坂から~
  2. 朝ごはんの歌
  3. 初恋の頃
  4. さよならの夏~コクリコ坂から~ (オリジナル・カラオケ)

ニューアルバム スタジオジブリ・プロデュース「コクリコ坂から歌集」 / 2011年7月6日発売 / 2400円(税込) / ヤマハミュージックコミュニケーションズ YCCW-10156

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CD収録曲
  1. さよならの夏~コクリコ坂から~
  2. エスケープ
  3. 朝ごはんの歌
  4. 春の風
  5. 懐かしい街
  6. 並木道 帰り道
  7. 初恋の頃(ALBUMバージョン)
  8. 赤い水底
  9. 紺色のうねりが
  10. 愛をこめて。海
  11. さよならの夏~コクリコ坂から~(主題歌 別バージョン)
手嶌葵

アーティスト写真

1987年、福岡県生まれの女性シンガー。2003年と2004年に出身地の福岡県で行われた「TEENS' MUSIC FESTIVAL」協賛のイベント「DIVA」に出場し、そのたぐいまれな歌声で観客を魅了した。その頃彼女が歌ったベット・ミドラーのカバー「The Rose」のデモを耳にした宮崎吾朗監督と鈴木敏夫・スタジオジブリプロデューサーが、2006年公開の映画「ゲド戦記」の主題歌への起用を決定。さらに劇中ヒロイン・テルーの声優も担当し、華々しいデビューを飾った。

2007年2月には2ndアルバム「春の歌集」をリリースし、ライブ活動を開始。並行して精力的な制作活動も続け、オリジナル曲のみならず洋楽カバーアルバムなども発表している。透明感あふれる歌声と豊かな表現力で、多くのファンを獲得。2011年6月には、スタジオジブリとの2度目のタッグとなる映画「コクリコ坂から」の主題歌「さよならの夏~コクリコ坂から~」を、映画公開直前の7月にはスタジオジブリ・プロデュースのアルバム「コクリコ坂から歌集」を発表する。