“ライブのSHE'S”が示した方向性

──ほかにもアルバムには「遠くまで」や再録の「ワンシーン」など勢いのあるナンバーがいくつかあり、全体的にライブで盛り上がりそうな力強さを持った1枚だなという印象を受けました。この方向性はライブの経験を経て見出したものなんですか？

井上　まさにそうです。ライブの回数を重ねながら「自分たちのスタイルはこれだ」って思ったんですよね。1枚目のときみたいに静かな感じもいいんですけど「ライブで自分たちがガッと楽しめる曲を作ろうよ」ってことになって、盛り上がれるシンプルな曲を制作しました。

木村　どっちかと言うとやっぱり激しいライブをしたいので。ピアノが入ってるバンドだからキレイめで優しい雰囲気の音を想像されがちなんですけど、自分としてはロックを全面に出したいというか、「まずロックがあり、ピアノもある」みたいな感じにしたいんです。

服部　僕らはライブバンドでありたいんですよね。ライブをしてるSHE'Sのことを知らない人はまだ多いと思うけど、観に来てくれたらガラッとイメージが変わると思う。再録の「ワンシーン」「信じた光」は、作った当時に1周して戻ってきたようなテンションでレコーディングしました。

──その頃は、「Simple Planの楽曲のようなポップでキャッチーなバンドサウンドを目指している」とおっしゃっていました。

井上　はい。新曲の作り方もそんな感じに戻ってきて。「遠くまで」の勢いのある感じとかシンプルさも昔っぽいなって思いますね。

見えてきた自分たちの音作り

──これまでのミニアルバムを愛聴している人やライブに足を運んだことがない人からすると、そういう今のバンドのモードに驚くかもしれませんね。

広瀬　今までは、今回自分たちがやったようなシンプルさが逆に怖かったんです。「これシンプルすぎるけど……大丈夫？」みたいな気持ちでいて。

井上　だからこれまでの作品では小手先をこねくり回して（笑）。

広瀬　けっこう考えすぎてた部分があって。それが3枚目になって、シンプルでもいいじゃんって思えるようになってきた。

井上　結局いいメロディを生かすにはシンプルなアレンジが一番引き立つとか、そういうことにみんな気付き始めたんですよね。「これいらんな」「これ抜こう」という話が僕らの中で自ずと出てくるようになって。

──まもなくSHE'S結成から5年が経ちます。皆さんの中でSHE'Sとしてのサウンド面の心得がより明確になってきた？

服部　はい。暗黙の了解みたいになってきたかなと。ピアノを前に出すところは前に出す、逆に僕らが出るところは出るっていう兼ね合いが昔に比べてうまくなってきたかなって思いますね。

木村　僕はSHE'Sを始めた頃、ピアノが入ってる中でどんなドラムを叩けばいいかわかってなかったんですけど、最近は「こういうフレーズでいきたいね」って言われたらスッと自分の中でリズムを出せるようになりましたね。