音楽ナタリー Power Push - SHE'S

3部作の締めくくりで見せた4人の自信

広義の愛を表現した「Un-science」

──サビで「Love lives in wonder」(愛は奇跡の中に生きている)と歌うリード曲「Un-science」ですが、こちらは井上さんがこれまで書いてきた歌詞とは異なるテーマで書かれていると思いました。「愛」という言葉を使っていてもこれまでのラブソング的なものではなくて、もっとスケールの大きな、人生讃歌のような内容で。

井上 はい。いわゆる恋愛よりも広義の愛ですね。

──このテーマにたどり着いたきっかけはなんだったんでしょうか?

井上 去年の秋に「インターステラー」って映画を観まして。時空を越えて愛を届けようとするっていう作品のテーマに「ああ、その通りや」って共感したんです。自分にとってはライブハウスにいるお客さんに対しての愛と同じやなって。だからそれを歌で伝えたくて歌詞を書き始めました。映画の内容を咀嚼したものを全部言葉にしていったというか。

木村雅人(Dr)

──この曲は歌詞だけでなく躍動感のあるリズムもすごく印象的です。このドラムのパターンは木村さんが?

木村 いえ。フィルインは自分で考えたんですけど、(井上)竜馬が「リズムはこうしてほしい」って言って曲を持ってきて。

井上 最初から「このリズムで曲を作りたい」と思って。SHE'Sの曲はまずリズムありきで作ることが多いですね。

──なるほど。ちなみにSHE'Sはどんな流れで曲を完成させているんでしょうか。さきほどのドラムの話のように、井上さんが作った原型をメンバーで共有して、各自アレンジを加えていく?

井上 大まかにはそんな感じですね。

服部 例えば竜馬がイントロとかサビだけの音を持ってきて、「このフレーズどう?」ってピアノを弾いて。それが「いいね」ってなると、竜馬が持ち帰って作り込んだり、スタジオで一緒にどんな展開にするか言い合ったりして。最終的にはみんな竜馬のイメージをもとに個々のアレンジで音を作っていきます。

広瀬 ギターとベースのアレンジに関しては任されてて、竜馬から具体的に指定されることはほぼないですね。イメージの伝え方もざっくりしてる。

井上 指定しすぎたら楽しくないって思っていて。2枚目のミニアルバムを作ったときに、4人の個性が全部バラバラやからこそSHE'Sっぽさが出るんやって実感したから、今作は特にそうですね。

木村 「Un-science」以外はみんなで音合せしながら作っていったな。

井上 「Save Me」とか、スタジオでの勢いだけで生まれたもんな。しかもシンゴが休みのとき。

服部 そうそう(笑)。

アグレッシブだけどSHE'Sならではの曲

──「Save Me」は今作、というかSHE'Sの楽曲レパートリーの中でも1、2を争うアグレッシブなロックナンバーです。曲の勢いはその場のノリから生まれたものなんですね。

井上 はい。あるとき(広瀬)シンゴが体調を崩して、3人だけでスタジオに入って「何する?」ってなったときに俺がギター持って、そのまま音を合わせたらできてしまった曲です。

広瀬臣吾(B)

服部 その次にスタジオ入ったときはシンゴが「何これ……」って言ってたよな(笑)。

広瀬 「なんや、せわしない曲やなあ」って思った(笑)。

──いわゆるSHE'Sの美メロで優しい雰囲気の楽曲イメージとは完全に趣の異なるナンバーですよね。でもそのサウンドの中にはきちんとピアノの音色も入っています。

井上 最初はギターの音をメインにして合わせていたんですけど、そのまま仕上げたら普通のギターロックの曲になってしまうので。そこにピアノが入るからこそSHE'Sの曲になるんですよね。「WHO IS SHE?」に入っていた「Just Find What You'd Carry Out」って曲に近いかもしれません。

ミニアルバム「She'll be fine」2016年2月3日発売 / 1728円 / Spmdisc / POCS-30004
「She'll be fine」
収録曲
  1. Un-science
  2. 信じた光
  3. Save Me
  4. 2人
  5. ワンシーン
  6. 遠くまで
  7. Curtain Call
SHE'S(シーズ)
SHE'S

井上竜馬(Vo, Key, G)、服部栞汰(G)、広瀬臣吾(B)、木村雅人(Dr)からなる4人組ピアノロックバンド。2011年に結成して地元大阪を中心に活動を続け、2012年に行われた「閃光ライオット2012」ではファイナリストに選出された。2014年7月に初の全国流通盤となるミニアルバム「WHO IS SHE?」を発表し、2015年5月には2ndミニアルバム「WHERE IS SHE?」をリリース。2016年2月に3枚目のミニアルバム「She'll be fine」を発売し、3月に全国5都市のワンマンツアー「She'll be fine -chapter.0-」を行う。