indigo la End|1年ぶりの新作で迎えた分岐点

このアルバムを一番楽しく聴けるのは自分たち

──確かに今回のアルバムにも、さまざまな音楽の要素が含まれてますからね。ジャズ、フュージョン的なアプローチもあるし、ポストロック的な曲もあるし、海外のインディロックとリンクした曲もあって。今まで以上に新しいことができたという手応えもあるのでは?

長田カーティス(G)

長田 今回のアルバムには、いろんな時期に作った曲が入ってるんですよ。1年半前くらいに作った曲もあるし、新しい曲は3、4カ月前にレコーディングしていて。それが共存しているのが面白いなって思いますね。当然表立った活動をしていなかった期間に自分たちのプレイも変わってるし。そういう意味ではこのアルバムを一番楽しく聴けるのは自分たちかもしれないですね。

──それくらいプレイの質が変化していると。

長田 そうですね。この中だと「プレイバック」が一番古い曲なんですけど、今同じアレンジで録り直しても、また違う感じになると思うし。

後鳥 前々作(2015年2月発売のメジャー1stフルアルバム「幸せが溢れたら」)はベーシストとしていろんなことを試して、前作(2016年6月発売のメジャー2ndフルアルバム「藍色ミュージック」)のときはドラムが(佐藤に)変わったばかりで、それに慣れるのに精一杯で。今回は前作に引き続きこの4人でレコーディングできたこともあって、落ち着いて取り組めたし、曲に対する向き合い方が変わってきたんですよね。indigo la Endらしさをしっかり考えて、このバンドのメンバーとしてベースを弾くということが少しずつわかってきたというか。

佐藤栄太郎(Dr)

佐藤 僕はバンドに加入してから2作目のアルバムになるんですけど、前回よりもクールにやれた感じがします。前回はもっと熱い部分があったし、ドラム的にも間口を広げようとしていたんですよ。今回は前作より落ち着いて制作に取り組むことができて、なんて言うか……「付いて来いよ」みたいな感じなんですよね。前作が新婚夫婦だったとしたら、今回のアルバムは亭主関白さが出てきた感じで。

川谷長田後鳥 ははははは(笑)。

佐藤 一緒にドライブしてるときはずっと黙ってるけど、きれいな夜景はちゃんと見せるよ?

長田 例えがわかりづらいよ(笑)。

自分たちのセンスを信じて“聴きたい”音楽を作りたい

──川谷さんは「新しい変化が感じられるアルバムにしよう」と思って曲作りをしていったんですか?

川谷 そういうことは考えてないんですよ。「藍色ミュージック」もいいアルバムだったけど、今作でより音楽的にやりたかったことを突き詰められたなと思います。でもこれが最高と言うわけではなくて、「いいアルバムなので聴いてください」っていう感じです。ただこのアルバムを聴いて一番楽しいのは自分たちだと思いますけどね。

長田 それさっき俺が言ったやつじゃん。泥棒だ(笑)。

──ははは(笑)。実際、普段から自分たちのアルバムを聴くことは多いんですか?

indigo la End

川谷 聴きますね。自分が聴きたい音楽を作ってるので。人に聴かせるよりも前にまずは自分が聴きたい音楽を作りたいっていうのはずっと変わってないです。もちろん「長く愛される作品になったらいいな」と思いますけど、それも「自分たちがいいと思う音楽だったら、長く愛されるはずだ」ということなので。自分たちのセンスを信じてカッコいいと思うものを作るだけですね。

──なるほど。アルバムを最初から最後まで聴くと、1つのストーリーが流れているようにも感じますが、それも意識してない?

川谷 してないですね。「いい曲ができたから、まとめようか」っていうだけだし、自分的にはミックスCDみたいな感じなので。ストーリー性を感じるかどうかはリスナーの自由ですし。こっちが思ってもみないような解釈をされることも少なくないんですよ。「プレイバック」のMVの最後は「私が何人目なの?」というセリフで終わるんですけど、それは「想いきり」の最初の歌詞に繋げるための伏線なんです。でもあのMVが公開された時点では「想いきり」の歌詞のことは誰も知らないわけじゃないですか。そのタイミングで反応を調べてたら「MVに出てくる彼女は何度も“プレイバック”されて、実は同じ人ではない。だから“私が何人目なの?”って言ってるんじゃないか」とツイートしてる人がいて。

長田 よく考えるよね、そんなこと。

川谷 ね。僕は人の曲を聴いてそこまで考えたことがない。だからindigo la Endの曲も深読みしても何もないです(笑)。

「天使にキスを」はマジですごい

──アルバムの中で特に思い入れのある曲、印象に残ってる曲は?

川谷 全部なんですけど強いて言うなら「鐘泣く命」かな。アレンジが気に入ってるんですよ。2番のサビからだんだん盛り上がっていく感じも好きだし、よくできてるなって自分で思います。最初から頭の中で全部構築しているわけではなくて、実際に4人で音を出しながら作ってるんですけどね。「最後は絶対にカッコいいものになる」と思っているから、何をやっても大丈夫なので。

──すごい信頼感ですね。

川谷 はい。と言うか、それがないんだったらバンドはやっちゃいけないと思うんで。「絶対よくなる」と思えないんだったら、音楽をやる資格がないですよ。

長田 個人的には「見せかけのラブソング」が気に入ってますね。ギターのフレーズの話になっちゃうんですけど、この曲を作っていた頃、4度のハモりにハマっていて。同じ時期に作っていた「猫にも愛を」にもけっこう使ってますね。

──4度のハモリって、すごく特徴的な響きですよね。

長田 そうなんですよね。普通は3度、5度のハモリが多いので。4度って使いづらいのかな?

川谷 そうかもね。まあ、僕はカッコよければそれでいいので。判断基準がそれだけだから、ちょっとヤバいんですよ(笑)。

後鳥亮介(B)

後鳥 僕は「天使にキスを」ですかね。けっこう弾いてるんですけど、全体的にはシンプルにまとまっていて。ベース的にも曲を立たせることができたし、しっかり屋台骨を支えられたかなって。コードのルート感を大事にしてるんですよね、演奏としては。

佐藤 これは声を大にして言いたいんですけど、「天使にキスを」はマジですごいです。時間がない人は、この曲だけでもいいから聴いてほしい。

川谷 どんだけ忙しいんだよ、そいつは(笑)。

佐藤 MVも作ってないし、今のメディアの状況だと「天使にキスを」に注目が集まりにくいと思うんですよ。だから、なおさら聴いてほしいなと。聴けば絶対よさがわかると思うので。ミックスの確認のために聴くだけで「ヤバい!」って思うくらいなので。

川谷 確かに「天使にキスを」はいいよね。レコーディングも楽しかったし。ドラムを録ってるとき、シンバルの倍音がギターを歪ませたときの音みたいだったから、「こういう音をギターで出して」ってムチャぶりして。うまく歪ませるためにタッピングしてたよね?

長田 うん。この曲が一番大変だったかも。

川谷 ベースとギターがユニゾンするところもいいし、サビもパキーンと広がって。楽曲、アレンジも含めて、今のindigo感がすごく出てるなって思います。あと「エーテル」の最後で「眩しい」って言ってるんですけど、それはゆらゆら帝国の「美しい」のオマージュなんですよ。そういうことをやったのはこれが初めて。ゆら帝の「美しい」を知らない人はぜひそちらも聴いてほしいですね。

indigo la End

佐藤 ゲスの極み乙女。のライブのMCで(川谷が)ゆら帝とBOOM BOOM SATELITESの野音(2008年7月に東京・日比谷野外大音楽堂で行われた、ゆらゆら帝国とBOOM BOOM SATELLITESのツーマンライブ「US AND THEM」)の話をしていたと思うんですけど、そのライブ、僕も行ってたんですよ(参照:ゆらゆらブンブン、真夏の野音で独自のロックを表現)。

川谷 そう言ってたよね。僕はゆら帝のライブをけっこう観てますよ。Yo La Tengoとのツーマンライブ(2009年12月に東京・Shibuya O-EAST(現:TSUTAYA O-EAST)で開催)も行ったし。あのときのYo La Tengo、有名な曲を一切やらなかったんですよ。ドープな即興みたいな曲ばかりでした。

──indigo la Endはそういうことはやらないですよね。曲自体もポップだし、ライブでも人気のある曲をしっかり演奏するので。

川谷 そうですね。自分たちだけで入り込んじゃってる感じが好きじゃないので。今回のアルバムはちょっとポップなところが薄れた気もするけど、サビはキャッチーですからね。……次は全然キャッチーじゃない曲もやろうかな。

──そこでヒネらなくても(笑)。

川谷 キャッチーな曲ばかりでなくてもいいですからね。それは自分の課題……というわけでもないけど、いろいろやってみたいので。

indigo la End「Crying End Roll」
2017年7月12日発売 / unBORDE
indigo la End「Crying End Roll」初回限定盤

初回限定盤 [CD+DVD]
3780円 / WPZL-31341~2

Amazon.co.jp

indigo la End「Crying End Roll」通常盤

通常盤 [CD]
3240円 / WPCL-12676

Amazon.co.jp

CD収録曲
  1. 想いきり
  2. 見せかけのラブソング
  3. 猫にも愛を
  4. End Roll I
  5. 鐘泣く命
  6. 知らない血
  7. ココロネ(Remix by Qrion)
  8. End Roll II
  9. プレイバック
  10. 天使にキスを
  11. エーテル
  12. 夏夜のマジック(Remix by ちゃんMARI)
初回限定盤DVD収録内容
  • 楽園
  • 秘密の金魚
  • 実験前
  • 緑の少女
  • 夏夜のマジック
  • 幸せな街路樹
  • 瞳に映らない
  • 渚にて幻(long ver.)
  • 名もなきハッピーエンド

公演情報

indigo la End「始藍」
  • 2017年9月15日(金)大阪府 なんばHatch
  • 2017年9月17日(日)岡山県 CRAZYMAMA KINGDOM
  • 2017年9月20日(水)愛知県 DIAMOND HALL
  • 2017年9月22日(金)東京都 Zepp Tokyo
  • 2017年9月25日(月)群馬県 高崎club FLEEZ
    ※スペシャルゲスト:秀吉
  • 2017年9月26日(火)宮城県 Rensa
  • 2017年9月28日(木)北海道 札幌PENNY LANE24
indigo la End(インディゴラエンド)
indigo la End
川谷絵音(Vo, G)、長田カーティス(G)、後鳥亮介(B)、佐藤栄太郎(Dr)からなるロックバンド。2010年2月より活動を開始。2012年4月に、スペースシャワーミュージックが設立した新レーベル・eninalの第1弾アーティストとして1stミニアルバム「さようなら、素晴らしい世界」でデビュー。2013年5月には初のワンマンツアーを東名阪で開催する。2014年4月、約1年2カ月ぶりの新作「あの街レコード」でunBORDEよりメジャーデビューを果たし、同年8月に出演したロックフェス「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2014」のステージでこれまでサポートメンバーとしてバンドに参加していた後鳥が正式加入。9月に新体制となってから初めての作品となるメジャー1stシングル「瞳に映らない」をリリースした。2014年12月の「COUNTDOWN JAPAN14/15」のステージをもって、約5年間バンドに在籍していたオオタユウスケ(Dr)が脱退。2015年に2月にメジャー1stフルアルバム「幸せが溢れたら」を発表し、同作のリリースツアーのファイナル公演で佐藤栄太郎(Dr)が正式加入した。2016年6月に現体制となって初めてのアルバムにあたる「藍色ミュージック」を発表。2017年7月にメジャー3rdアルバム「Crying End Roll」をリリースし、9月よりツアー「始藍」を開催する。