原因は自分にある。が、10月15日にニューシングル「パラノイドランデブー」をリリースした。
ゲンジブにとって約2年4カ月ぶり、そしてユニバーサルミュージックとのパートナーシップを締結してから初のシングルとなる今作。表題曲「パラノイドランデブー」は、川谷絵音(indigo la End、ゲスの極み乙女、ジェニーハイ、ichikoro、礼賛)が楽曲を提供した。
川谷は2019年の8月にゲンジブが現グループ名に改名した際からSNS上で「気になる。笑」とゲンジブへの興味を示していた。6年の時を経てついに巡り合ったゲンジブと川谷が作り上げたのは、いったいどんな世界観を持つ楽曲なのか。リリースを記念して、音楽ナタリーではゲンジブのメンバー7名にインタビュー。「パラノイドランデブー」の話題はもちろん、笹川真生提供の「ビネットネット」、メンバーが観測者(原因は自分にある。ファンの呼称)の思いを歌った「希望的観測の定義」と、個性豊かな収録曲について話を聞いた。
取材・文 / 三橋あずみ撮影 / 曽我美芽
僕らの世界観はここまで広がってきた
──さっそくシングル表題曲の「パラノイドランデブー」について伺えればと思いますが、ついに川谷絵音さんとのコラボが実現して。
一同 (満足げな表情を浮かべながら拍手し合う)
──2019年8月、原因は自分にある。への改名発表時に音楽ナタリーが掲載したニュースのポストに川谷さんが「気になる。笑」と反応してから6年越しの出来事となりました。
長野凌大 ありがとうございます。
小泉光咲 楽曲提供いただけると知ったときは、単純にすごくうれしかったです。僕、特に最近、川谷さんが作る曲をよく聴いていて。「川谷さんの楽曲はゲンジブの世界観にマッチしそうだな」「いつか楽曲提供してもらえるようになりたいな」とずっと思っていたので、ついにご一緒させていただけて願いが叶った気持ちです。
長野 念願だったから、決まった当初は実感が湧かなかったです。けど、先日川谷さんにお会いする機会があって。対面したときに「曲を提供してもらったんだな」と実感が湧いてきて、なんだか……「がんばってきてよかったな」と思いました。
──今年7月に行われた初めての国立代々木競技場第一体育館でのワンマン(「ARENA LIVE 2025 序破急」)を拝見したとき、皆さんが「原因は自分にある。」としてこれまで作り上げてきた独自の世界観に、すごく誇りと自信を持ってステージ上で表現をしているように感じたんです。なので、このタイミングで川谷さんを迎え、新たな化学反応に挑戦することにとても納得したというか。きっと、今の7人ならばどんな表現もできるという自信があるんじゃないかな?と思ったのですが、いかがでしょう?(参照:原因は自分にある。過去最大ワンマン「序破急」で“堕天”「待ってろよ東京ドーム!」叫んだ夢と流した絆の涙)
杢代和人 それは本当に、僕らもそう思っていて。真ん中には変わらないものがありつつも、いろんなクリエイターの皆さんの力をお借りして、僕らの世界観はここまで広がってきたと思うんです。あらゆる方向性の楽曲を自分たちのものにしていくうちに「今後はどんな方とご一緒したらどんな化学反応が起きるんだろう?」と楽しみが広がったような感覚もあります。今後出す作品にもまた新しい風が吹くと思うし、それを表現するのも僕らが活動するうえでの楽しみの1つで。いろんな姿を観測者の皆様に見せたいからこそ、今後もどんどん幅を広げていきたいという思いが強いです。
自分への問いかけが生まれる曲
──「パラノイドランデブー」を実際に聴いたときの印象はいかがでしたか?
大倉空人 僕はゲスの極み乙女さんのようなピアノロックサウンドがゲンジブにマッチするんじゃないかなと思っていたんですけど、想像していた方向性と少し違う曲調が印象的でした。川谷さんが思う、“今のゲンジブ”の曲を提供してくださったのかなって。川谷さんご自身のモードみたいなものもあると思うし、今の川谷さんと今の僕たちのコラボなんだなと感じました。もし別の機会にお願いできたら、また違うサウンド感になるのかな?とか、そういうことも感じ取れてうれしかったです。
武藤潤 僕は第一に「おしゃれだな」と。始まり方もそうですし、最後は転調して「3、2、1」で終わる。ゆったりとしたリズムもすごく面白い表現だなと思いました。歌詞にはストーリー性があって、登場人物がいて、イメージが浮かびやすい。あと、水を連想させる表現がところどころに出てくるのもすごく素敵だなと思いました。
吉澤要人 僕は、今のこの時代にこの曲を出すことに意味があるんじゃないかなと思って。この曲が持つメッセージの1つには“自分が自分らしくいられる場所へのランデブー(逃避行)”というものがあると思うんですけど……今の時代、常に何者かに監視されているというか、いろんな目があるじゃないですか。そういう、あらゆる形で存在している“監視”がすごく大胆に表現されている。僕らみたいな仕事をしている人たちにとってすごく共感できる部分がありますし、そうでなくても今の世の中に生きている人、誰にでも共感できる楽曲なんじゃないかなと思います。
杢代 そうだよね。
吉澤 この曲が、自分自身に向き合うきっかけになったらいいなとも思います。自分はどんな存在で、どこに向かうのか。自分が何を見るのか、何を見られているのかっていう……他者への問いかけというよりは、自分への問いかけが生まれる曲だと思うので。皆さんも、そういう耳で聴いてくれたらうれしいです。
優しいよね。“優潤”て感じ
──皆さんそれぞれの歌声のニュアンスにも細やかなこだわりを感じられました。例えば、雅哉さんが歌っているサビの「聞こえないから意味がない」で語尾がふわっと飛躍する歌い方は川谷さんの楽曲らしいエッセンスを感じられて耳に残りましたし……。
武藤 ここの雅哉のカ行とナ行のリズムの取り方、いいんですよね。「雅哉すごいな」と思いました。
桜木雅哉 いやあ、ありがとうございます。indigo la Endさん、よく聴かせていただいているので。
武藤 あと僕は凌大の「Ah」の歌い始め、一瞬の「あ゛」っていう発声が好き。
大倉 わかる。エッジボイスね。
桜木 凌大さんは、1番Bメロの「悲しい顔なんて載せられないでしょ」の歌い方もいいです。ニュアンスのある「載せられないでしょ」で完璧に落として、サビにカーン!と行く。いやあ、あれ気持ちいですね。
長野 えっ。雅哉、プロデューサー?(笑)
──アクティングを入れたようなニュアンスが印象的ですよね。
長野 確かに。でも本当にそうで、ここは自分が歌った中で一番うまくいったなと思っているパートです。
大倉 語りかけるように歌詞を伝えてますよね。
長野 それで言うと、2番に出てくる潤くんの「開けようとして気取ってみたんだ」も推したいです。「開けようとして~」の語尾の処理がいいんですよ。
大倉 なんか優しいよね。“優潤”て感じ。
杢代 潤くん、いつもとちょっと歌い方違うよね?
長野 だよね。この曲では新・武藤潤を見れました。
吉澤 (満足げな武藤を見て)どんな顔してんの(笑)。
武藤 「Ah」から始まるパートは3回あって、2番は雅哉から僕という歌割りですけど、1番、3番とは別物にしたいなという思いがあって。差別化を意識するという点で、僕もニュアンス多めに歌ってみたのは覚えています。
長野 なるほどね。
武藤 僕が推したいのは2番Aメロの空人のラップです。全体的にゆったりと落ち着くような歌声で進む中で、急にラップパートに展開する瞬間の空人は、ザ・空人ワールド展開!って感じでいいなと思いました。
大倉 このラップパートには「嘲笑う」とか「メタにメタを重ねて」とか、ゲンジブを表すようなフレーズが出てくるのが特徴だなと思っていて。「ゲンジブって何?」と聞かれたとき、みんなそれぞれ捉え方が違うと思うんです。それは音楽性に対しても、コンセプトに対しても。それぞれの視点が重なって複雑になっていくよね。じゃあ結局ゲンジブって何?といったような。それを受け取る方々に解釈させる歌詞なんじゃないかなと僕は読み取ったので、そこを自分のラップで歌えたことがうれしかったです。
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はい、チーズ 笑顔で