礼賛「SOME BUDDY」インタビュー|“個性派バディ”迎えた2ndアルバム

作詞作曲とボーカルを務めるCLR=サーヤ、晩餐=川谷絵音(G)、簸=木下哲(G)、春日山=休日課長(B)、foot vinegar=GOTO(Dr)の5人からなるヒップホップバンド・礼賛。2021年末に初音源「愚弄(DEMO ver.)」を発表してお笑いと音楽双方のファンを驚かせると、2023年には1stアルバム「WHOOPEE」のリリースや「SUMMER SONIC」といった大型フェスへの出演を通してメンバーの経歴に関係なく、いちバンドとして評価を獲得した。

そんな礼賛が2月26日に2ndフルアルバム「SOME BUDDY」をリリースした。本作にはAmazon Prime Videoのお笑いバトル番組「最強新コンビ決定戦 THEゴールデンコンビ」のテーマソングで、髙比良くるま(令和ロマン)をフィーチャリングゲストに迎えた「GOLDEN BUDDY feat. くるま」や、既発曲「TRUMAN」にRIP SLYMEが参加した「TRUMAN feat. RYO-Z, ILMARI, FUMIYA(RIP SLYME)」、PARKGOLFによる「スケベなだけで金がない」のリミックスバージョンなど全11曲が収められている。

音楽ナタリーではメンバー5人へのインタビューを実施。「SOME BUDDY」の話題を軸に、前作から約2年間で感じたバンドとしての手応えや今のモード、2025年の展望を語ってもらった。

取材・本文 / 金子厚武撮影 / Goku Noguchi

バンドの軸にある遊び心

──礼賛は音楽ナタリーのインタビュー初登場になります。1stアルバム「WHOOPEE」収録の「Mine」には「変な見出しつくお笑いナタリー」というリリックがありましたが、音楽ナタリーに対してはどんな印象がありますか?

CLR(サーヤ / Vo) 音楽ナタリーは……理路整然、簡潔。メディアとして本当に素晴らしいなと思っております。格式があるなと(笑)。

礼賛

礼賛

──ありがとうございます(笑)。2年ぶりとなるオリジナルアルバム「SOME BUDDY」が完成したわけですが、この2年間の活動でバンドに対する手応えや変化をどう感じていますか?

晩餐(川谷絵音 / G) ライブの本数がすごく増えたので、ライブをやりまくって成長していった2年間でした。でも、やれることが多いからこそ、逆に何をやればいいのか、まだまだ試行錯誤中でもありますね。あとはやっぱりサーヤちゃんの進化がすごいから、その後ろで僕らが真面目にやりつつ、遊び心も出しつつ、もっといろいろやれたらなと。

春日山(休日課長 / B) 礼賛は本当に遊び心があって、自分が日々吸収した要素をライブでも出せるし、音源でも出せるし、本当に素敵な場所だなと思います。「自分がこう演奏したら、ドラムがこう応えてくれる」という演奏上でのコミュニケーションも多いので、単純にこういうバンドで音楽ができてうれしいなって……。

foot vinegar(GOTO / Dr) 課長、酒飲んでる?

CLR(サーヤ) 酒飲んだときにいつも言うやつ(笑)。

簸(木下哲 / G) 聞き飽きてる。

春日山(休日課長) 聞き飽きてるって言うなよ!

晩餐(川谷) でも読者は新鮮だから。

春日山(休日課長) そう、読者とはいつも飲んでないから(笑)。

春日山(休日課長 / B)

春日山(休日課長 / B)

──リズム隊の話が出ましたが、GOTOさんはどうですか?

foot vinegar(GOTO) ある意味最初と変わってない部分も多くて、それがまたいいですね。遊び心があるのもそうですし、曲を作ってるときも楽しいし、みんなでごはんに行ったりするのも楽しい。その変わらない感じがめっちゃいいから、これからも変わらないでいたいですね。

簸(木下) 変化で言うと、やっぱり大きいステージでやらせてもらえるようになったのは大きいと思います。「スケベなだけで金がない」でのコール&レスポンスがお決まりになったり、「TRUMAN」のときにジャムセッションをしたり、そういうことが自然発生的にできてるのが、すごくバンドしてる感じがして楽しい。でもGOTOくんが言ったように、「楽しそうだからやろうよ」という感覚がブレずに残っているのがバンドにとって一番いいことだと思いますね。

CLR(サーヤ) 礼賛を始めた頃、私は音楽の畑では赤ちゃんの状態で、今もまだ3、4歳の感じ。だから見るものすべてがまだまだ新鮮だし、ライブ会場も知らないところを回ってるような状態だから、面白いし勉強になります。あとは単純にどんどんメンバー同士が仲よくなっていて。できることなら毎日会いたいですけど、みんな忙しいので、ライブがあるとうれしいですね。癒しです。

──楽器隊の4人はもともと川谷さんの楽曲提供時のバンドメンバーでもあって、昨年も土岐麻子さんや原田知世さんの楽曲に参加したことで、よりケミストリーが強まったようにも感じます。

晩餐(川谷) 楽曲提供のときはちゃんと仕事としてやってるので、礼賛とはまた少し違うんですけど、一緒にいる時間が長いからこそ空気感がわかるし、よりやりやすい感覚はあります。サーヤちゃんともバンド関係なく飲んだりするから、なんとなくずっと間を空けずに一緒にいるんですよね。

晩餐(川谷絵音 / G)

晩餐(川谷絵音 / G)

とにかく続けるしかない

──サーヤさんの客演の機会も増えていて、昨年は今回のアルバムに参加してるRIP SLYMEとコラボしたり、SKRYUさんの楽曲に参加したりしていましたよね。礼賛を始めて、サーヤさんが歌えてラップもできるということがより広まり、客演の話も増えた?

CLR(サーヤ) 確かに、そうかもしれない。SKRYUくんからのオファーはXのDMで、「『スケベ』をめっちゃ聴いてます」という形で来ました。今はSNSで切り抜きの動画がすごい回るんですよね。芸人の先輩やタレントの方と共演したときに「あれ見たよ」と言ってもらえることが増えていて。だから礼賛と客演の2軸でちょっとずつ広がりができているのかな。でも音楽に関しては圧倒的に場数が足りてないと思うので、バンドでも個人でも修行のつもりでもっといろんなライブに出たいなと思ってます。

──最初はどうしても「芸人さんがやってるバンド」という色眼鏡で見る人もいたかもしれないけど、周りからの見られ方に関してはどう変化してきたと思いますか?

晩餐(川谷) 実際にライブを観た人は、礼賛に対するイメージが変わってるでしょうね。だから、まだライブを観ていない人の前でパフォーマンスする機会を増やしたいと思います。活動を初めて3年ぐらいしか経ってないし、ライブが増え始めたのは最近だからフェスもそんなにいっぱいは出てないし、バンドをちゃんとやってるんだという姿をこれから見せていかなきゃいけない。一過性の企画みたいに思っている人もいるかもしれないけど、そうじゃないっていうことを伝えるためには、とにかく続けるしかないと思ってます。

CLR(サーヤ) 最初の頃は「なんかやってんな」という声が多かったけど、本気でやっているのがバレ始めてる(笑)。だから、これからはよりいろんな人に、新しい人の目に触れる機会が増えるといいですよね。

礼賛

礼賛

フラストレーションを余すことなく使い切る

──今回のアルバム、1曲目の「SLUMP」から、前作以上にバンドとしてパワーアップしているように感じました。

CLR(サーヤ) 「SLUMP」はガチスランプのときにできました(笑)。最後まで苦戦して、ギリギリでしたもんね。レコーディングの当日まで曲を作ってました。

──サーヤさんがスランプだった? それともバンドとしてスランプだった?

CLR(サーヤ) 私個人がスランプでした。トラックはできてるのに、ずっと「どうしよう?」と言っていて。

CLR(サーヤ / Vo)

CLR(サーヤ / Vo)

晩餐(川谷) インフルエンザにもなったしね。これ仮タイトルはなんだったっけ?

簸(木下) 「BAD」。

春日山(休日課長) 方向性は一緒ですね(笑)。

──でも結果的にできあがった楽曲はすごくカッコよくて、特にリズムチェンジするサビのサーヤさんのフロウは抜群ですよね。何かインスピレーション源はあったんですか?

CLR(サーヤ) この2年間は炎上したりとか、全体的に面倒くさいことが多かったので(笑)、それを乗り越えた感がデカかったんです。「ウラメシヤ」は週刊誌に直撃されたときに書いて、「SPICY」はXでめっちゃ叩かれたときに書いて、そういう経験を経て「SLUMP」では吹っ切れた。誰しも同じような状況になるときがあると思うので、聴いてスッキリするような曲がいいなとは考えていました。

──以前、別の取材でも、音楽以外の活動で溜まったフラストレーションを礼賛で歌詞にして、音楽にすることで消化している部分があるという話をされていましたよね。その効果は今も変わらずあるわけですね。

CLR(サーヤ) そうですね。フードロス削減というか、もう余すことなく全部使い切る(笑)。オチがついたらラランドのコントになりますし、オチがつかずにモヤモヤしてるものとか、あまりにきれいすぎる出来事は礼賛の曲になる。だから礼賛の活動があることで救われてますね。

──確かに、音楽はオチがなくても形になりますもんね。

CLR(サーヤ) それが音楽のよさですね。

晩餐(川谷) 曲はオチがなくても終わるからね。

──「いつかのスランプから今グランドスラム!」という歌詞はパンチラインですよね。バッドなところから始まっても、それを反転させる強さがある。

CLR(サーヤ) 最初にこのフレーズを思いついて。結果的にサビは別の歌詞になりましたけど、これが言いたくて作った曲ですね。今スランプ中の人がこの曲を聴いて「いつか抜けれるっしょ」という気持ちになるといいなって。