音楽ナタリー PowerPush - 平井堅

“平井堅だからこそできること” 話題沸騰インドPVの真相

“平井堅がインド人にまぎれて踊る”──そんな衝撃の映像が、新曲「ソレデモシタイ」のPVとして公開されたのは約1カ月前。これは「他の人には出来ない、平井堅だからこそ出来る事って何だろう」と考えた本人の発案によるものだという。インドミュージカルさながらの超大作PVの完成度は大きな話題を巻き起こし、幅広い層から「最高」「違和感がない」「クソワロタ」「濃い」「攻めてる」と絶賛の嵐となった。

今回ナタリーでは、インドロケの着想や裏話、ニューシングル「ソレデモシタイ / おんなじさみしさ」の各曲、そして“平井堅だからこそ出来る事”を追い求める貪欲な姿勢について、平井に胸の内を聞いた。

取材・文 / 鳴田麻未

テーマは“アンチおしゃれ”

──インドで撮影された「ソレデモシタイ」のPV、YouTubeで公開されるなりものすごく話題になりましたね(参照:平井堅がインド人にまぎれて踊る!超大作PV)。この反響の大きさはご本人にも届いてますか?

まあネットをちょこちょこ見て、なんか面白がってくださってるなあっていうのは。もともと何しても友達にそんなに言われることはないので、実生活で実感することはあんまりないんですけど。いつも世間話をするスタッフ1人くらいに「インド人になったPV観ました」って言われたくらいで、街で声をかけられるとかっていうのはないですね。

──いやあ、今回はさすがに大爆発してるなと思いまして。

平井堅「ソレデモシタイ」PV撮影の様子。

ホントですか。だとありがたいです。

──平井さんが発表したコメントによると、「“インド人にまぎれて踊る”これはまさに僕にしか出来ない事なのでは!(笑)」と思ってインドロケを敢行したということですが。

発端はそれですね。「こういうPV作りたい。じゃあ曲を作ろう」って、普通の工程の逆をいくっていう。

──PVありきだったんですね。

そうです。インドミュージカルを観たときに、こういう……ギリギリダサい……っていうかダサいものをやると面白いんじゃないかって前々から思っていて。あと、インド人ネタっていうのは以前から、(「笑っていいとも!」の)「テレフォンショッキング」でお話したらタモリさんがやたら食いついたり、人に茶化されたりということで、自分が中近東の人に似ているっていう自覚はあったので、もう画として面白いだろうなと思って。

──そうですね(笑)。

それから、“アンチおしゃれ”というテーマもあったんです。ミュージックビデオっていうと、アーティストがおしゃれに歌うのをキレイに体よく撮るっていうのも多いですけど、そういうものへのアンチテーゼにしたいなと思って。昨今ミュージックビデオも、YouTube等々で無料で見られるようになって、個人個人が自分の意志でパッと見やすい時代になったと思うので、インパクトを出すっていうのが大事なのかなと思って。

──ええ。

そこで、まるで演歌歌手のプロモーションビデオみたいな、ああいうおしゃれの対極にあるものを作ったら面白いんじゃないかなと。おバカなビデオなんですけど、面白いとかダサいってなんだろうってすごい真剣に考えて、スタイリストさんとも監督とも議論しましたね。別に笑かすためのものじゃないし、これから面白いPVばっかり作るっていう方向にいくのは危険だし、そうは思ってないけど、今回に関してはとても意義のある満足のいくものになりました。

現地の人にはコメディアンだと思われてた

──インドにはどのくらい行ってたんですか?

超弾丸で、3泊ですね。

──撮影現場はどうでしたか?

みんなインドロケの経験なんてないので探り探りで必死でしたね。編集後どうなるかわからないから、とにかく撮りまくっていくっていう。僕もただただ無我夢中で踊り狂う2日間っていう感じでした。でも街の雰囲気はずっと明るくて、彼らもずっと笑ってて。シュートしてないときもキャッキャ騒いで、終わったらみんなでプールに飛び込んだりして……やっぱ助かりますよね、ムードがいいと。だから楽しかったですね。まずインドに行けたっていうのがうれしかったし。

平井堅「ソレデモシタイ」PV撮影の様子。

──平井さんが1人で街を闊歩するシーンでは独創的なダンスも披露していましたが、あれは振り付けではなく自己流?

そうですね。フリーダンスです。もうずっとノリノリですよ。ムカつくくらい、ずっとあのテンションです。現地の人にはコメディアンだと思われてたから。

──無理もないかも(笑)。急に来てあのコスチュームであの曲で踊り狂ってたら。

ホント許可やらなんやらすぐ「金よこせ」って言ってくるし、とんでもない戦場っていうかカオスな状況だったので(笑)……もう照れてる場合じゃないし。あんなへんてこりんなダンス、したことないし引き出しもないし、後半は荻野目ちゃんネタを入れたり、自分が知ってるアイドルの振りを一生懸命思い出してがんばりました。

──完成したPVを観た人からは、平井さんと本場のインド人が同じ画面に収まって「違和感ない」という感想も上がっていましたが。

でもね、映像で観るとあまりわからないですけど、ビックリするくらい眉毛も太くして、チョビひげも付けて、色もすごく黒くしてるんですよ。髪も、インド人の毛量を僕の地毛だと出せないってことでヅラを作ったんです。すっごくダサいヅラにして笑ってもらおうと思ったんですけど、PVを観たら、「あれ……全然面白くない」って。

──むしろ……。

普通だなっていう。「ちょっと髪伸ばしたんだな」くらいに思われかねないと思ってたら、ホントにツッコまれなくて。まあそういう想定外なこと、計画通りじゃないハプニングも多々ありましたが、よかったと思います。

ニューシングル「ソレデモシタイ / おんなじさみしさ」 / 2014年12月10日 / アリオラジャパン
初回限定盤 [CD+DVD] 1620円 / BVCL-619~20
通常盤 [CD] 1490円 / BVCL-621
「ソレデモシタイ」12月3日から先行配信スタート!
レコチョク
mora
初回限定盤CD収録曲
  1. ソレデモシタイ
  2. おんなじさみしさ
初回限定盤DVD収録内容
  • ソレデモシタイ MUSIC VIDEO+MAKING SCENE
通常盤CD収録曲
  1. ソレデモシタイ
  2. おんなじさみしさ
  3. 残響
  4. Tomorrow
  5. ソレデモシタイ(less vocal)
  6. おんなじさみしさ(less vocal)
平井堅(ヒライケン)
平井堅

1972年大阪生まれのシンガーソングライター。大学在学中にソニーミュージックのオーディションに入選したのをきっかけに、1995年にシングル「Precious Junk」でデビュー。2000年にリリースしたシングル「楽園」がヒットを記録し、その卓越した歌唱力と完成度の高い楽曲で一躍トップシンガーの仲間入りを果たす。2002年には童謡「大きな古時計」のカバーで世代を超えた人気を獲得。その後も「瞳をとじて」「POP STAR」など多くの楽曲をヒットチャートに送り込んでいる。また「Ken's Bar」と題したアコースティックライブシリーズを自身のライフワークとして定期的に開催しており、同タイトルのカバーアルバムも3作発表。フェイバリットアーティストはダニー・ハサウェイ。