音楽ナタリー PowerPush - 平井堅

“平井堅だからこそできること” 話題沸騰インドPVの真相

手紙のような「残響」、壮大オーケストラで聴かせる「Tomorrow」

──通常盤にはカップリング曲が2曲入っていて、1つは平井さん作詞作曲の新曲「残響」です。

前作の「グロテスク」、今作の「ソレデモシタイ / おんなじさみしさ」が、詞だけ僕で、曲がほかの人で。2作連続ってあんまりなかった気がして、すごくコアなリスナーの方に「平井さんもう曲書くの嫌なのかな?」って思って落胆されてる方がもしいたら申し訳ないなと思って、急遽書きました(笑)。

──温めていた曲ではなく、今回のシングル用に書き下ろしたんですか?

平井堅「ソレデモシタイ」PV撮影の様子。

はい。曲調は、「パッケージとして」っていうとすごくシステマチックだけど、1曲目、2曲目とストーリー仕立てのものが続くから、自分自身の思いをつづる日記みたいな曲でもいいのかなと思って。僕はここ数年の人生の中でこういう気持ちになりました、それを曲にしてみましたっていう。

──詞もスッと入ってきますし、それを聴かせるメロディの運びもすごく美しいですね。

とてもシンプルな曲です。この曲が人気になったらそれはそれでもちろんうれしいですけど、そういうことではなく……モチベーションとしては通常盤を手にした方に読んでもらえれば、という手紙のような気持ちで入れました。

──もう1つのカップリング曲は、映画「ANNIE / アニー」の日本版主題歌「Tomorrow」(参照:平井堅が映画「アニー」主題歌を担当、NYワールドプレミアにも)。壮大なオーケストラアレンジが施されていて、アレンジャーは誰だろう?と気になりました。

鷺巣詩郎さんと13年ぶりにご一緒しました。こんなに大人数のフルオーケストレーションとやるのは初めてだったので、そういうものに長けた方をいろいろ考えてたんですけど、ひさびさに鷺巣さんとやってみるのが面白いかなって。ロンドン在住の方なので、ロンドンに何日か滞在してレコーディングしました。

──この曲はやっぱり少女がハツラツと情感豊かに歌ってるイメージが強いので、抑え目の男声ソロボーカルで聴くのは新鮮でした。

今、「アナ雪」を筆頭に、ちょっとしたミュージカルブームじゃないですか。で、今回思いっきり腹式(呼吸)で歌って、アレンジも壮大だし、平井堅が乗っかった感が出ちゃうとまずいなと思って。畏れ多いですけどナット・キング・コールとかフランク・シナトラのように、少しやさしく朗々と温度低めに歌うのをイメージして、いつもより音域を低めにキーを設定したんです。まあ、パッケージとしてはバランスのいいシングルになったかなと思います。

自分で自分を鼓舞していたい

──平井さんは「ソレデモシタイ」PV発表時のコメントで「『他の人には出来ない、平井堅だからこそ出来る事って何だろう』これは、音楽においても映像においても常に心がけている事です」とおっしゃっていて。素敵な言葉だし、こんなふうに言い切れるのはすごいことだと思いました。

まあ難しいことです。口で言うのは簡単で、特に音楽なんてなかなか見つけられるものではないけど、それに近付きたいなとは思っています。

平井堅「ソレデモシタイ」PV撮影の様子。

──でもいろいろな活動を傍から見ていると、平井堅というアーティストが今どう見られているのか、どういうふうに見せたらみんなが面白がるか、わかってるなあ……と思うことは多々あります。

そうですね……考えてはいますね、うん。考えすぎだって言われることもあって。この間、松尾(潔)さんに「あなたいったい何と戦ってるの?」「仮想敵でも作ってるの?」って叱られて、すごい落ち込んだんですけど。

──あ、その答えは少し気になります。何と戦ってるんだと思いますか?

「なんなんでしょう……」みたいな。でも自信がないんでしょうね。だから居場所を探してるんでしょう、自分をどこに置くべきなのかっていうのを。考えてるんだけどわからなくて、いまだに悩んでるんですよ。結局、平井堅がどう見られてるかだって、卑劣な2ちゃんねるとかを見ればすごく悲観的になれるし、ストイックにもなれるし、反対に優しい人たちのところに行けば「何をそんなにジタバタしてんの? もう悠々自適にやればいいじゃん」とか「もう40過ぎたんだからそんなに戦わなくていい」って言ってくださる人もいる。その間で僕自身も揺れるんですよね。でも……やっぱり根本的に僕はジタバタしたいんでしょうね。(デビューした)23のときは、42にもなってこんなにジタバタしてるなんて思ってもみなかったけど。

──いいことじゃないですか。

なんていうか……カンフル剤になりたいというか自分で自分を鼓舞してたいんです。「落ち着くのはいつでもできる」って自分に言い聞かせてるのかもしれないですね。

ニューシングル「ソレデモシタイ / おんなじさみしさ」 / 2014年12月10日 / アリオラジャパン
初回限定盤 [CD+DVD] 1620円 / BVCL-619~20
通常盤 [CD] 1490円 / BVCL-621
「ソレデモシタイ」12月3日から先行配信スタート!
レコチョク
mora
初回限定盤CD収録曲
  1. ソレデモシタイ
  2. おんなじさみしさ
初回限定盤DVD収録内容
  • ソレデモシタイ MUSIC VIDEO+MAKING SCENE
通常盤CD収録曲
  1. ソレデモシタイ
  2. おんなじさみしさ
  3. 残響
  4. Tomorrow
  5. ソレデモシタイ(less vocal)
  6. おんなじさみしさ(less vocal)
平井堅(ヒライケン)
平井堅

1972年大阪生まれのシンガーソングライター。大学在学中にソニーミュージックのオーディションに入選したのをきっかけに、1995年にシングル「Precious Junk」でデビュー。2000年にリリースしたシングル「楽園」がヒットを記録し、その卓越した歌唱力と完成度の高い楽曲で一躍トップシンガーの仲間入りを果たす。2002年には童謡「大きな古時計」のカバーで世代を超えた人気を獲得。その後も「瞳をとじて」「POP STAR」など多くの楽曲をヒットチャートに送り込んでいる。また「Ken's Bar」と題したアコースティックライブシリーズを自身のライフワークとして定期的に開催しており、同タイトルのカバーアルバムも3作発表。フェイバリットアーティストはダニー・ハサウェイ。